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オバマ対ボーナー、債務削減案を潰したのはどっち?

アメリカ政治関連の記事をUpします。

記事を書いたのはマット・ベイ(Matt Bai)さんです。元記事はここにあります。

去年夏、オバマ大統領とボーナー下院議長との間の政府債務削減案交渉の内幕話です。

~~ここから~~

オバマ対ボーナー、債務削減案を潰したのは誰だ?

昨年7月、オバマ大統領と共和党下院議長ボーナーとの間の、いわゆるグランド・バーゲン(広範囲な取引)が破談になるやいなや、両陣営はすぐさま諍いを始めた。閉ざされた扉の中で行われた話し合いについて、自分に都合の良い物語を主張しあったのだ。それに続く数ヶ月間、私は共和党、民主党の最も親しい人々との非公式の会話で、彼ら自身、どの物語が信用できるのか判らない、あるいは正確なところ、交渉中どんな議題が取り上げられていたのか知らないと言う話を聞かされた。その中の数人は、それぞれ別々に、この事件について黒澤明の映画「羅生門」を思い出したと言った。映画では4人の人間が同一の殺人事件について、それぞれ別の立場から全く異なる見解を述べる。時間と共にこの事件は、この街の現状を表す完璧なメタファーと成って行った。2つの陣営が、時間が経つにつれ益々離れてゆく街。単に相反する政治的立場を占めるだけでなく、全く異なる現実の中に住むようになったこの街のメタファーとして。

こうなったのには現実的な理由が存在する。両陣営共、自分達の審議内容の内、最も議論を尽くした重要な部分の詳細が公開されると、ワシントンにおける自分たちの最も重要な支持基盤との関係を複雑にしてしまう、あるいは悪化させてしまうと認識している。国家にとって必要となる困難な決断の為に両者が合意する事、すなわち民主党の大統領がメディケアや社会保障費の削減と言う痛みを受け入れる事、あるいは共和党の下院議長が増税を認める事は確かに重要だが、他方、イデオロギー上の同志の信頼を裏切り、彼らになんら見せるべき結果を残さずに終わる事もまた大きな問題なのだ。オバマとボーナーはそれぞれ異なる現実に固執した。それはお互いを罵倒する事が、機能不全に陥ったワシントンで有効であるからだけでは無い。お互いがどれだけ歩み寄れるのかを、両陣営とも明らかにしたく無かったからでもある。

この記事は以下のように進む。

・秘密会談の開始
・ボーナーの解り難いメッセージ
・ボーナー提案の解読
・「イエス」を得る困難さ
・ギャング・オブ・シックス(6人組)の登場
・高くついた計算違い
・達成しそうなグランド・バーゲン
・カンターと逆提案
・ボーナーは欺いたのか?

共和党バージョンの現実は大ざっぱに言って以下のように進む。ボーナーとオバマは、福祉予算を後退させ債務を削減させる税制の大幅な変更で合意する。しかしそこでオバマは下院民主党の圧力に直面してパニックに成り、最後の瞬間に突然、何千何百万ドルもの予算増額に共和党が同意する事を求める。失望したボーナーはもはや大統領の言葉は信じられないと思い、交渉から立ち去った。「オバマがゴールポストを動かした(Obama moved the goal posts)」と言うのが、共和党が繰り返すマントラだ。

ホワイトハウスが語る物語では、オバマとボーナーは実際にラフなフレームワークを設定した。しかし全ては、流動的な交渉の中での話だった。追加的予算は交渉の項目としてテーブルに載っていた。最後の数分間に出た話では無い。そして大統領が自分の党のプレッシャーに耐えていた間に、ボーナーは自分の会派の強硬派から攻撃をうけて崩れ去った。このバージョンの現実に従うとボーナーは、後出しで交渉を壊した要求と言う物語を、自分を救い出す為に作り出した事になる。何故なら、ボーナーは頑固な共和党員を従わせる事が出来ないと認識していたからだ。「ボーナーは届けられなかった(Boehner couldn’t deliver)」と言うのが、民主党が繰り返す話だ。

この数週間、私が交渉の最後の出来事について、より詳細な証言と多くのニュアンスを含んだ記事を書こうとしているのが明らかになるにつれ、両陣営、主に下院議長とその側近が表に出て、充分にリハーサルした物語を強化する為、他紙記者へ追加的証言を述べている。それでも私は現時点なら、この衝突する現実を乗り越える事が出来ると考えている。この数カ月間私は数ダースにおよぶ人々、交渉に加わった人々と、あの週に起きた出来事を逐一知らされていた人々にインタビューした。その中の数人は、当時の個人的な文書を見せてくれた。その中には数多くの提案や逆提案が含まれている。私はこれら多くのインタビューを、話した人間の名前を明かしたり、ほのめかしたりしないと言う約束の下に行った。皆が自由かつ率直に話してくれる事を期待しての措置だ。

こういった会話を通して出てきたのは、オバマとボーナーが歴史的な合意がまとまる正に寸前まで行っていたこと、その合意に正確に何が含まれていて、何故それが物別れに成ったのかと言う、より明確な驚くべき絵だ。そこには最後の数時間のボーナーの考えを映し出す告白が含まれていて、それは彼が話すバージョンの中心的な要素と直接矛盾している。彼自身の指導部の話とさえ矛盾している。

ここで明らかにした真実には歴史的な価値しかない。今年の暮れには、大統領選挙がどの様な結果に成ろうとも、両党は再度、債務と支出を巡るハルマゲドン的戦いにまみえる。もし両陣営が、約16兆ドルに及ぶ国家の債務を手なずける合意を作れなければ、一連の基本的予算削減、国防費やその他のプログラムに振り分けられた、10年に渡る1兆2千億ドルの削減が自動的に発効する事に成る。もし私達が去年7月に実際何が起きたのかを理解できれば、来る政治的災厄を避けるのが両党にとってどのぐらい難しい事なのか、より正しい感覚を持つ事が出来る。そして状況が、外目に見えるほど希望が無いわけでも無い事を理解できるだろう。

秘密会談の開始

読者はワシントンが去年の夏、冷戦に近似したヒステリー寸前だったのを覚えておられる事だろう。下院共和党は、国家の債務上限を2兆4千万ドルへ拡大する8月のデッドラインに合わせる事を、同額の予算削減の見返りが無い限り拒否した。これにより国債デフォルトの可能性が高まった。もし国債がデフォルトしたら金融市場は死のスパイラルへ陥ると思われていた。副大統領のジョー・バイデン(Joe Biden)と下院多数派のリーダーで共和党会派内でボーナーに次ぐナンバー2のエリック・カンター(Eric Cantor)は、災厄を避ける為に予備的合意を目指して交渉を重ねていた。しかしこの交渉は6月下旬、主に税金の問題で決裂した。2人の男とそのスタッフ達は、今後10年に渡る2兆ドルの削減を想定した。しかしホワイトハウスは何らかの増税が含まれなければ合意しなかった。そしてカンターは増税を、どんな増税であろうとも、交渉を破壊するものだとする態度を変えなかった。

しかしそれまでに、オバマとボーナーは独自に、ホワイトハウスで密かな会合を持ち始めた。いろいろと噂を呼んだ6月のゴルフから生み出された秘密交渉だった。アンドリュー空軍基地のクラブハウスで酒の助けも借りながらボーナーは、差し迫った債務危機が重要かつ大胆な成果へと結びつく可能性を示唆した。それはカンターやバイデンが話し合った単なる削減では無い。福祉プログラムや税法を含んだ基本的な改革。連邦予算の包括的近代化だ。大統領は、何か新たなものを始める事に合意した。しかし交渉を変貌させる可能性を持つブレイクスルーは6月中旬まで来なかった。そしれそれは解り難いe-mailでやって来た。

予算交渉は多くの場合、家屋の購入費を値切る交渉と同じような様相になる。一方が契約のたたき台を作って相手方の担当者へ送る。担当者は幾つかの数字や項目を消して新たな項目や数字を挿入する。両者は全ての相違を克服するまでそれを続ける。またはどちらかが最終案を出して立ち去る。このケースの場合、オバマ側の主要担当交渉者は予算ディレクター、ジャック・リュー(Jack Lew)、および法律関連の補佐官、ロブ・ネイバーズ(Rob Nabors)だ。2人はボーナー・チームへ提案を送った。その中には今後10年間の新規予算として1兆5千億ドルが含まれていた。ホワイトハウスの交渉担当者はこの提案が通る確率は、キャピトル・ヒルを隕石が直撃するくらいの確率しか無いと思っていた。しかし実際に問題なのは、はたしてボーナーが歳入に関して少しでも歩み寄る気持ちがあるかどうかだった。それとも増税に対するカンターの強硬路線を踏襲するのだろうか。

回答がネイバーズに帰って来た時、ボーナー側担当者は、予想通り1兆5千億ドルを消して来た。しかし彼らはそこに奇妙な記述を挿入して来たのだ。彼らは「現行の法律と比較した」連邦予算の削減を提案してきた。2兆8千億ドルの削減だ。表面的にはこれはホワイトハウス提案に対する強硬な拒否に見える。「より多くの税を求めてきたが、もっと少ないものしか上げられない。」と言うものだ。しかし実際にはボーナーは複雑な言い方をしてきていた。

ボーナーの解り難いメッセージ

政策立案者が将来予算の予測を立てる場合、通常2つの基本線、あるいは2組の予測を使用する。そしてこの交渉における幾つかの重要な瞬間を理解する為には、両者の解り難い相違を理解する必要がある。一つは「現行法」による予測、計画通りに一時的な減税/増税法案が満了した場合の予測だ。もう一方は「現行政策」による予測、今日のルールを凍結した場合にどうなるかと言う予測だ。この2つの予測の最も重要な相違はブッシュ減税法案をめぐるものだ。この法案についてオバマと下院共和党は、2010年終りの時点で一時的に延長する事に合意している。「現行法」の下ではこの法案は今年末に満了し、予測される総予算は、今後10年間で39兆ドル以上となる。しかし下院がブッシュ減税の条項の多くを、あるいは少しでも、近々に廃止する事を予測する人間はワシントンには殆どいない。そしてより現実的な「現行政策」の目を通して見た場合、全ての減税法案はそのまま継続され、同じ10年間の数字は35兆5千億ドルと成る。3兆5千億ドルの削減だ。

ボーナーは提案の中で蓋然性の低い高額の「現行法」基本線を使ってきた。そして彼は2兆8千億ドルの削減を言ってきた。それは10年間の数字では36兆3千億ドルを少し下回る数字だ。ホワイトハウスの見地からして重要なのはこの数字が、両党が「現行政策」の下に予測した予算より8千億ドルほど多いと言う事だ。

これは税金関連の質問に対する回答としては、非常に理解し難いやり方だ。ワシントンでも数少ない真正の予算エキスパート、ネイバーズでさえも、ボーナーの書いてきた文章を睨み付けながら、自分の解釈が本当にこの文章の意味するところなのか、確信が無かった。ウェストウィングの広い事務所に座ったネイバーズは、まるで1962年にフルシチョフから来た電文を繰り返し読んで、注意深く言葉を選んだメッセージの真意を探ろうとしているジョン・F・ケネディの補佐官のようだった。彼はその文章をリューに見せた。2人は即座に同じ結論に達した。ボーナーは税収の8千億ドル増額を受け入れようとしている。別の言い方をすれば、ボーナーは、富裕層に対するブッシュ減税を止めた場合に得られるのと同程度の政府予算増額を提案している。しかし彼はこの提案で、富裕層に対する増税以外の方法、給付割合の削減や、補助金の削除、税逃れの道を閉ざす事での増額を提案しているのだ。下院議長は今や、予算増額に対する自党の強硬路線を離れたと言う結論以外に、このメッセージを解釈しようがなかった。

突然、交渉が成立するかも知れない可能性を感じ始めたホワイトハウスの補佐官達は興奮した。しかし、より多くの予算がテーブルに載ったとしても、オバマとボーナーは包括的な交渉における、まるでルービックキューブのように入り組んだ構造をいじり回さねばならない。福祉削減は税制改革の前でなければならないのか。多くの削減を最初の10年間に行うのか、2番目の10年間か、等々。そうしている間にも、ボーナーの指導層サークルの中では政治的圧力が積みあがっていた。カンターは、バイデンにほのめかされて初めてオバマ=ボーナーの会談を知った。彼は、自分が排除されていた事、およびボーナーがより多くの予算を申し出ている事を知って狼狽えた。彼と同僚達は下院議長に迫り、グランド・バーゲンと言う考えを取り下げさせようとした。そして7月9日、ボーナーはキャンプ・デービッドに居るオバマに電話し、正にその通りの事をした。グランド・バーゲンは死んだと告げたのだ。直後に彼は声明を発表する。その声明で彼は、もはや両党は1カ月以内に迫った債務危機に対して、あまり欲張らない解決法を模索する時だと述べた。

しかしながら議長自身が、欲張らない解決法では満足できなかったようだ。5日後の7月14日、彼は再度、大統領に電話した。

ボーナー提案の解読

何故ボーナーはグランド・バーゲンを放って置けなかったのだろう?これは仲間の議会共和党リーダー達はおろか、最も近しい側近達が今でも困惑している疑問だ。オバマがグランド・バーゲンを求める理由は充分明確だ。彼は悲劇的債務危機を避けたいだけでは無く、自分を債務問題から救い出す必要があった。政府支出に対する一般の懸念が、右派によるレトリックに煽り立てられて、大統領選挙を失うほどに大きくなる前に、自分が債務削減に心を砕いている様子を見せつける必要があった。それに比べるとボーナーの動機は明らかでは無い。議長は恐らくワシントンでも最も困難な職に就いている。下院に対する支持率が10%台に下がる中、自会派内のニヒルな反乱を抑えなければならない。その間にも、彼のイデオロギー的決意を怪しんでいる若くて野心に溢れたリーダー達が周りを取り囲んでいるのだ。たぶん読者は考えるだろう。ボーナーに一番不要なのは、目をつぶって、自党の誰も支持しない大統領と共に、映画のテルマ&ルイーズみたいな無謀なジャンプをする事だと。

ボーナーの立場をこれ以上ないほど明確に物語っているのは、税金について彼が大統領へ送った、秘密の入り組んだ申し出だ。8千億ドルの予算増額と言う申し出は、7千億ドルとか9千億ドルと違って、気まぐれな数字では無い。1つには、ボーナー側の人間も、オバマは恐らくそれ以下では合意できないと判っていたはずだからだ。何故なら下院民主党はブッシュ減税の内、擁護し難いものについては、どんな形にしろ見返りを要求するはずだから。同時にボーナーの側近達は計算している。8千億ドルくらいなら実際の増税をせずに政府収入を上げられる事を自会派に主張できると。

そんなことがどうやったら出来るかって?ボーナーはこう主張するだろう。この金額の内の多くは(仮に全てでは無くても)経済成長によって達成できる。そして経済成長は、新たな低い税率と、より良い徴収率(何故なら新税法はより単純化されているから)によって加速される。このようにして、まるで保険会社的魔法によって、ボーナーは政府歳入増加は増税を必要としないと主張する。それどころか税率を下げられるのだ。こういった計算はもちろん議論の的となるだろう。しかしこれはボーナーの交渉における中心的教義だ。

しかしながら、ホワイトハウスに必須だとボーナーも理解している8千億ドルを捻出する理論的作業において、彼は金額を紙に留める事を嫌った。新たな税収と言う考えは彼の党にとってあまりにも異端であり、ボーナーは反動を恐れた。それで彼の側近は、ワシントンでも少数の人しか理解できない婉曲な言い回しを使う事に固執した。書類が悪い相手に渡る事、この場合彼自身の党の関係者に渡る事を恐れたのだ。ボーナーは自分の立ち位置が、交渉が成立してもしなくても、議長としての自分の立場を悪くするのを知っていた。それでも彼は何れにしろ、その立ち位置を選んだのだ。

後にボーナーは私に話してくれた。彼はもう飽き飽きしたのだと。ワシントンで20年間、どの下院も、どの大統領も、次から次へと福祉プログラムにお金をかけて債務を増やし、いずれ来る爆発を無視し続けるのを見てきた。彼は又、小さい合意よりグランド・バーゲンの方が通しやすいと言うオバマの見解に同意してもいた。もし議会が政治的爆弾となる削減を作り出すとしたら、選挙民に何かしら真に革新的な事をしたのだと言えるものの方が支持を受けやすいと。バイデンがいみじくも言ったように、「小さな大義に死ぬことには何の意味も無い。」

「イエス」を得る困難さ

しかし政治と言うものはしばしば、政策と同じくらいに自己認識も重要なのだ。そしてボーナーがグランド・バーゲンに固執した個人的な理由を理解する事は難しく無い。1991年最初に下院に当選して以来、改革者を自任してきたボーナーは現在61歳だ。そして下院が両党の間であっちこっちと揺れ動く中、彼が議長でいられるのは数年だろう。ボーナーが後世に残せる業績は何だ?あるいはそもそも業績を残せるのか?何人かの議長、例えばティップ・オニール(Tip O’Neill)やニュート・ギングリッチ(Newt Gingrich)は、重要法案作成の代えがたいパートナーとして歴史に自分の居場所を刻んだ。他の者達、例えばデニー・ハスタート(Denny Hastert)は時と共に忘れられて行くだろう。ボーナーを知る者達は言う。彼がグランド・バーゲンに見たもの、それは国の方向を変えるのを助けたステーツマンとして記憶されるチャンスだと。分裂を抱えた党を危うげにまとめていた単なる党職員では無い。

オバマとボーナーは、この交渉が始まる前、殆ど一緒に過ごした事が無く、お互いに対しておぼろげな印象しか持っていなかった。両者の側近達は2人の間に、取り繕った親密さを感じたと言う。2人はほんのわずかの無駄話をしただけで(「今週末にゴルフでもどうだい、ジョン?」)、予算政策の本題へ移っていった。ホワイトハウスの側近達には、ボーナーはまるで、自分の居るべき場所は此処では無いと思っているかのように見えたと言う。一方、ボーナーの側近達は、彼らの目に映る、オバマのレクチャースタイルの話し方に気分を害していた。それでも2人の男、共に中西部人で元州議会議員、本来内向的で喫煙習慣を持つ者どうしの2人は、お互いを信頼できると考えているように見えた。

実際のところ、14日の木曜日の午後、交渉再開の希望をもってオバマに電話を返した時、ボーナーが交渉の障害だと考えていたのは、オバマでは無くオバマの側近の1人だった。物別れに終わった数週間の話し合いの中で、ボーナーと彼の最高位の側近達、首席補佐官のバリー・ジャクソン(Barry Jackson)、および政策助手のブレット・ローパー(Brett Loper)は、ホワイトハウスで主にジャック・リューとロブ・ネイバーズと話していた。しかし彼らはリューに憤慨し始めた。彼らから見るとリューは多くを話すが殆ど譲歩をしない。予算に関する詳細な知識を持つリューは部屋の中の誰よりも素早く話を進める。ボーナーがどんな提案をしようとも、常にそれより良いアイデアを持っているかのようだった。そして彼のアイデアは、ボーナーから見ると既に拒絶した意見を複雑に言い換えているだけのように見えた。電話の中でボーナーは言った。リューの問題はどうしたら「イエス」が貰えるか知らない事だと。

ボーナーの考えでは、大統領首席補佐官のビル・デイリー(Bill Daley)と財務長官のティモシー・ガイトナー(Timothy Geithner)となら上手く行きそうだった。デイリーは政権入りして以来、ボーナーとの接触を絶やしていない。現実主義者であり、合意形成に長けているとして知られている人物だ。ガイトナーは明らかに、負債で財務省がデフォルトする可能性にイラついている。殆ど毎日、議会のリーダー達に、市場で膨らんでいる懸念について警告を発している。デイリーとガイトナーをよこしてくれ。ボーナーは大統領に言った。それで何が出来るか見てみようじゃないか。

翌日金曜日の午後、デイリーとガイトナーはボーナーとカンターに会いにキャピトル・ヒルへ行った。ボーナー・チームは交渉者の変更と共に、交渉の構成を単純にするための提案をしていた。以前の交渉で常に付きまとっていたタイミングの問題を消してしまう事を狙った提案だった。以前ボーナーは、年間支出と福祉の削減を先に可決し、税制改革はそれに続く数カ月間、下院委員会の討議にかける事を望んだ。オバマと側近達が懸念したやり方だ。しかし今回、議長のチームは、両陣営がそろって、広範囲な基本方針、および削減と増収の目標値を含むフレームワークを提案し、議会に全ての詳細を同時に議論させる考えを提案した。このテンプレートを使えば両者は、共有できる基盤の多くを直ぐにも見つける事ができるだろう。2日後の日曜日、ボーナーとカンターはホワイトハウスへ行き、話し合いを続けた。オバマは教会を訪れた後、会合に参加した。

その場の誰もが、合意が書きとめられ署名を待つばかりになる、などと言う幻想は抱かなかった。しかしその日の午後、オバマとボーナーが握手した時には、その場の殆どの者が、残りの詳細については比較的簡単にまとめられると感じていた。会合がお開きに成る前、オバマはその場の者に、合意を発表する時は注意深く考えなければならないと注意した。両陣営が同じ内容を公表する事を確実にしなければならないと。その夜、ジャクソンとローパーは、会議を元にした3ページの提案書を送付した。8千億ドルの追加予算と引き換えに、今後10年間でメディケア、メディケイドから合計4千5百億ドル以上の削減、そして社会保障に関わる一連の変更、その中には福祉額の計算方法変更と年金給付年齢の引き上げが含まれていた。

オバマ、デイリー、ガイトナーが交渉したこのフレームワーク、および共和党の提案シートに記載されたものが、ホワイトハウスの何人かの補佐官の気分を悪くさせる事は疑問の余地が無い。メディケア削減に同意するのを好む者は1人もいなかった。そしてほとんどの者は社会保障費が交渉に含まれるとは思ってもいなかった。(民主党正統派は社会保障費は、その為に源泉徴収した税金で全てまかなっているので、連邦政府債務と一切関係無いと言う立場を取っている。)しかし政策アドバイザーのデイビッド・プロウフェ(David Plouffe)を含むオバマの上級補佐官は、例え完璧で無くてもグランド・バーゲンは小さな取引より望ましいと考えるに至った。もちろんデフォルトするより遥かに望ましい。議論の内容は今や、いかにして票を得るかに移っていた。ネイバーズと彼の議会対策チームは、何であれボーナーが提案する事に下院民主党が従うかどうか、現実的な疑問を持っていた。そして同じように、ボーナーが自分の会派をまとめられるかどうかも疑っていた。ジャクソンやローパーがキャピトル・ヒルで不安を抱えながら返信を待っていた時、ホワイトハウス内部の議論は月曜の夜まで長引いていた。

ギャング・オブ・シックス(6人組)の登場

オバマの財政委員会チェアマンであるアラン・シンプソン(Alan Simpson)とエルスカイン・ボウルズ(Erskine Bowles)が2010年末に、予算再編を即す厳しい勧告を発してからの6ヶ月間、上院議員の一団、民主党のマーク・ワーナー(Mark Warner)、リチャード・ダービン(Richard Durbin)、ケント・コンラッド(Kent Conrad)、そして共和党のサクスビー・チャンブリス(Saxby Chambliss)、トム・コバーン(Tom Coburn)、マイク・クレイポ(Mike Crapo)は、何らかのコンセンサスを構築しようと努力してきた。彼らは何十回もの夕食会や交渉会議を繰り返す。その中にはヴァージニア州アレクサンドリアにあるワーナーの大邸宅で行われたものもあった。いわゆるギャング・オブ・シックスと呼ばれた彼らは、両党の指導者が注視する中、自分達の仲間に受け入れ可能な妥協案を作り出そうと努力を重ねた。

しかしながら合意は遥か彼方だった。その原因は主に、イデオロギー的に最も遠い位置に居る2人のメンバーの間に橋をかける事が不可能だった為だ。民主党指導層の1人で大統領の親しい友人であるダービンは、グループ内でリベラル派を公言する唯一の人間でもあったが、貧困層や労働者の税額減免措置を断固として守るつもりだった。オクラホマ選出の厳格な財政保守主義者(fiscal conservative)であるコバーンは、福祉予算からの1兆3千億ドル以上の削減を、グループ内の誰よりも強く要求した。5月にコバーンは自分自身の債務削減案を作る為に、一時検討会を欠席した。

6月中旬、ちょうどボーナーがデイリーとガイトナーをキャピトル・ヒルへ招く準備をしていた頃、グループの非公式チェアマン、ワーナーとチャンブリスは、もう待てないと考え、ギャング・オブ・シックスの未完成な成果を、残りの上院議員へ公開する事にした。彼らは上院議員のみを対象とした、スタッフ抜きのブリーフィングを火曜日の朝、キャピトル・ヒルで行うスケジュールを組んだ。

ホワイトハウスもこのブリーフィングを知っていた(ダービンはウェストウィングとの連絡を欠かさなかった)。しかしそれに対して補佐官達は特別の重要性を感じなかった。補佐官達は今や、自分達の秘密交渉に没頭していた。つまるところ、ギャング・オブ・シックスは、合意が近いと何回も表明していたが、今まで何も出して無い。メンバー自身が認めるように、今現在も計画の大まかなアウトラインでしか無い。そしてブリーフィングは8時30分に設定されていた。まだ殆どの上院議員がコーヒーを探している時間、あるいはランニングマシーンを使っている時間だ。ワーナー自身でさえもが、メインイベントではなくサイドショーに過ぎないと考えていた。

だから、ワーナーとチャンブリスが4千6百億ドルの支出削減を含む検討中の新たな予算案を報告している間、上院議員のほぼ半数、だいたい両党同数の議員が徐々に入場してきた時、一番驚いたのはギャング・オブ・シックスのメンバー自身だった。プレゼンテーションが終わったとき最初に立ち上がって発言したのはコバーンだった。この予測しがたい6番目のメンバーは熱のこもった支持を表明した。完璧では無いが達成しうる最善のものだと同僚達に対して言った。次にダービンが立ち上がり、同じような意見を表明した。1人また1人と両党の上院議員は立ち上がり支持を表明した。

今になってみれば議場で何が起きていたのか理解するのは難しく無い。下院共和党とホワイトハウスが債務について協議する間、殆どの上院議員が退けられ、無力感に苛まれていた。ギャング・オブ・シックスは何か行動できるものを約束してくれた。国家で展開されるドラマに重要なプレイヤーとして上院が再登場する方法だった。

高くついた計算違い

上院の話はペンシルベニア・アベニューからホワイトハウスへと渡ってきた。ホワイトハウスでは日曜の夜からずっとボーナーへの返答を推敲していたネイバーズが、下院議長オフィスのバリー・ジャクソンを呼び出して何が起きているのか聞いた。ジャクソンは知らなかった。しかしながら数時間の内にホワイトハウスは、何か重要なシフトが起きていると感じ始めていた。スタッフが数えたところでは、20人以上の共和党上院議員が立ち上がって予算を増額する計画に賛意を表明していた。そしてオバマは、共和党自身の分裂を強調する事で、下院共和党にさらなる圧力をかけられるチャンスだと考えた。正午過ぎ、オバマは彼にしては珍しい行動に出た。ブリーフィングルームへ入場し、ギャング・オブ・シックスへ支持を表明したのだ。参加者の少ない非公式なものと思われていたイベントは、即座にその日の全国ニュースが扱うイベントへと昇格した。後から見れば高くついた計算違いだった。

大統領が発言を終える前、ホワイトハウスの補佐官達はすでに、チャンスと見えたこのイベントが実際は深刻な問題であることを理解し始めた。ボーナーと同じようにオバマも、自分達の計画が明らかになった時、自党内で反乱に直面するリスクを負っていた。多くの民主党議員にとって、現在の政府債務が、維持不能な政府支出を証明するものだと言う共和党の主張に従う事は、それでだけで背信行為だった。彼らの見方では、共和党こそが無分別な減税と無謀な戦争で債務問題を作り出し、今はそれを貧困層や中流層向け社会福祉プログラムを切り詰める言い訳に使っている。そしてメディケアに関して言えば、共和党の下院予算委員会チェアマン、ポール・ライアン(Paul Ryan)がクーポン・システムに代える提案をしている中で、キャピトル・ヒルの民主党指導層はメディケアを2012年の上院・下院選挙の争点にしようと考えている。(ワシントンの民主党本部の窓には、「Vote Republican, End Medicare(共和党に投票すればメディケアは終わる)」と書かれている。)彼らはいぶかしむだろう。何故大統領はこれらのプログラムをカットする事に同意し、自分達の有利な点を台無しにするのだろうと。

ホワイトハウスにとって、グランド・バーゲンをキャピトル・ヒルの民主党へ売り込むのは容易なことでは無いが、ギャング・オブ・シックスが出したプランは、それを殆ど不可能にする。表面的にはギャング・オブ・シックスは、全体で1兆2千億ドルの予算増額を提案している。オバマとボーナーが議論してる8千億ドルの50%増しだ。民主党員は必ず問うだろう。何故大統領はギャング・オブ・シックスより少ない税収で合意したのだと。

オバマの側近が詳細に数字を検討したところ、ギャング・オブ・シックスの計画がもつ政治的問題は更に悪いことが判った。これは又、基本線としての「現行法」と「現行政策」が持つ相違点の話だ。ギャング案は基本線を「現行法」と「現行政策」の間に設定している。ブッシュ減税の内、多くのものは残るが、最も富裕な層に向けたものは満了する事を想定している。一方ホワイトハウス案は「現行政策」を元に建てられていて、多くの減税はそのまま残される。これが意味するところは、2つのプランを項目ごとに比較した場合、ギャング・オブ・シックスは約2兆ドルの予算増額を提案しているのだ。大統領と下院議長が仮に合意した案より1兆2千億ドル多い。

大勢の共和党上院議員が立ち上がって2兆ドル増額案を賞賛している中(その中には全国放送された大統領自身も含まれている事は言うまでも無い)、いったいどうやってオバマは民主党の指導者に8千億ドルの新予算合意を通してくれと頼めるのだ?ギャング・オブ・シックス案が単なるメモ程度のもので、上院や下院を通過するのはおろか、実際の法案になる可能性も無いものだと言う事はどうでも良い。リベラル派は大統領を笑い飛ばすだろう。この数字は、すでに数人の議員が個人的に抱いているオバマに対する疑念を裏付けてしまうだろう。オバマは超党派の勝利を求めるあまり、自党の信念を売りとばすような合意でも受け入れてしまいかねないと言う疑念を。

火曜の午後早い時間、ネイバーズはジャクソンに、今回は沈んだ声で電話した。予算と支出のバランスについて問題を抱えそうだと彼は言った。デイリーも似たようなメッセージをジャクソンに送っていた。我々は果たしてどうすべきか?彼は知りたかった。大統領はこの合意を、最終ラインを通すのに充分な数の上院議員と下院議員に売りつける事が出来ないかも知れない。

後にホワイトハウスの補佐官達が言っていたように、ボーナー側の人間はこのニュースを平静に受け止めていた。彼らは批判的ではあったが、話し合う準備はあるようだった。しかしながら下院議長の側近は、動揺したと言っている。合意は合意だと、当惑しながらもジャクソンはデイリーに言った。ジャクソンとローパーは、ホワイトハウス側のアラームが一時的な過剰反応であり、ひとたびオバマとボーナーが話し合えば、オバマは折れてくれると希望していた。彼らはまだ交渉を続けるつもりだった。その夜遅く、ロブ・ネイバーズからのe-mailがジャクソンのinboxに届くまでは。大統領からの逆提案がついにやって来たのだ。

達成しそうなグランド・バーゲン

昨年6月以来続いてきた、誰が合意を潰したのかと言う話において、その合意にどんな項目が含まれていたのか明確にするのは困難だった。従って、火曜の夜にロブ・ネイバーズから、バリー・ジャクソンとベレット・ローパーへ送られた3ページに及ぶ逆提案は、両陣営の間で取り交わされた提案の内、最後となったものであり、グランド・バーゲンがどの様なものに成ったか、最も詳細な絵を見せてくれるものだ。この文書は、この時点でのスナップショットとして、明記されている両者の対立点よりも、オバマとボーナーが実際にどこまでの合意に達していたかを示すものとして、注目に値する。

彼らは個別の支出削減について同意している。つまりは、防衛費とその他の支出の両方から、1兆2千億ドルを10年間かけて削減すると言う事だ。実施に当たっては下院の議論に委ねる。彼らは又、次の10年間に最低2千億ドル以上を削減するリストについても同意している。その中に含まれるのは、政府職員および軍属の年金からの推計440億ドル、住宅公社のファニー・マエ、フレディー・マックから300億ドル、農業助成、自然保護プログラムから330億ドル、郵政改革による160億ドルだ。

福祉関連予算についても彼らは最終合意に近いところに居た。ホワイトハウスはメディケアから、給付年齢の引き上げ等によって、少なくとも次の10年間に2500億ドル、その後の10年間に8000億ドル削減する事に同意している。政府は又別に、メディケイドやその他の保健プログラムから1100億ドル削減、次の10年間にさらに2500億ドルの削減を承認した。そして、明らかに民主党内に反乱を呼び起こす行動であるが、オバマは、より倹約的な新しい社会保障費計算方法の導入に積極的だ。それは2015年にスタートする。(ホワイトハウスはボーナーが提案した年金給付年齢引き上げは拒否した。)これらはボーナーにとっては充分で無く、ギャング・オブ・シックス提案ほど広範囲でも無い。しかし下院議長のチームは、相違点が克服不可能とは思っておらず、予算の額においても両者は合意できると考えていた。

しかしながら、予算に関する部分には、避けて通るわけにはいかない2つの重要な意見の相違があった。2日前日曜日のボーナー提案には、デイリーとガイトナーも同意していると彼が考えたところのポイントが幾つか含まれていた。しかしギャング・オブ・シックスのブリーフィング後にオバマが出した逆提案には、いくつかの広範囲な変更が入っていた。8千億ドル予算に追加して、メディケア、メディケイド削減と同額のものを予算へ追加する事を彼は望んだ。約3千6百億ドルの追加で、合計1兆千6百億ドル増額の予算だ。全体額増加の他に、オバマがこの交渉で初めて持ち出したのは、新たに追加する予算と、ボーナーが求める福祉削減の間に、明確なリンクをつける事だ。別の言葉で言えば、オバマの新しい枠組みは、ボーナーが求めるメディケア、メディケイドからの削減に対し、同額を予算へ追加する事を求めているのだ。

この提案自身、交渉を台無しにする可能性はあった。しかしホワイトハウスはその他にも、問題となりそうな変更を行っていた。最も目立つのは、議員達が新税制の議論に入る時に8千億ドル増額を上限値とする、下限値では無いと言うボーナー・チームの主張に対する変更だ。別の言葉で言えばボーナー・チームは、税制改革でもたらされる最終的な数字は8千億ドル以上ではありえず、それ以下だと主張している。ボーナーは下院議会に対し、税制改革の一環として、グランド・バーゲンが与えるインパクトのいわゆる「マクロ予測」を求める予定だった。それは基本的に、低い税率が導入されて経済が活動を始めた結果もたらされる、最善の税収予測だ。民主党は通常このような予測を軽視する。彼らは基本的にサプライサイド経済学の保守的理論を支持しているからだ。しかしマクロ予測はボーナーにとって本質的なものだ。彼は自分の主張の為にそれを必要としている。その主張とは、追加予算のうちかなりの部分が、経済成長と徴税率改善でもたらされると言うもので、それにより下院は実際には、誰に対しても税率を上げて増収を図る必要が無くなる。ボーナーは日曜夜の会合で、特にガイトナーを説得し、この条件を受け入れさせたと思っていた。

しかしオバマは自分の逆提案で枠組みを設定し直した。今や1兆千6百億ドルとなった税収額は、税制改革が達成できる値(下限値)で、最大値(上限値)では無いと。そして文章の若干の変更により、ボーナーの基本的前提、経済成長による予算増額を計算に入れると言う前提を拒絶した。ボーナーはマクロ予測を求めて全くかまわない、それで気が済むなら。しかし彼はその予測を、議会が集めねばならない新たな税収の額を下げるのに使う事は出来ない。

ホワイトハウスの側近は後に主張している。先の日曜日に大まかな合意はあったが、税制改革に関する議論はいつでも揺れ動いていて決まったものでは無いと。そして継続中の交渉において、両陣営はいつも、相手側の限界を感じ取ろうとしていたのだと。ギャング・オブ・シックスのブリーフィングはこの交渉を疑いなく複雑にした事に彼らは同意している。しかしそれは、何らかの合意にサインした後で取り下げると言うような行為では無い。仮にこういった主張が真実であったとしても、技術的な意味合いで真実あると言う事でしか無い。もし貴方が自動車の価格について握手し、車検が通ってローンの審査が降りた後に再び話し合う事にしていたとする。貴方はおそらく、価格が5000ドル余計にかかるような事は考えていないだろう。本質的にボーナーにとって事態はそういう風に受け取られた。火曜日にホワイトハウスから行われた、パニックのような電話のやり取りと、それに続く逆提案が明らかにしたものは、オバマは自分が合意を変えてしまったのを知っていると言う事と、彼には選択肢が無かったと言う事だ。

議論の中でその他に残されていた領域は、強制条項に関わる問題、あるいは合意の中の「トリガー」に関わる問題だ。税制改革は下院での細かい議論に長い時間がかかる一方、支出削減は比較的真っ直ぐに進む為に、ホワイトハウスは当初から裏切られる事を警戒していた。共和党が支配する下院が単純に合意を発表しないと言う事態、彼らが望む支出削減だけを成立させて予算関連をサボタージュすると言う事態を、いったいどうやって民主党は防げるのか?その問いに対してオバマチームが下した答えは、両陣営がものすごく嫌った答えだが、2つの「トリガー」だ。即ち、税制改革で両党が納得できる合意が作れなかった場合に自動的に有効となる取り決めだ。

特に、オバマは2つのトリガーを考えていた。最初のトリガーは民主党向けで、ブッシュ減税を最富裕層に対して無効にすると言うものだ。ボーナーはこの提案を拒否した。彼の指摘によれば、もし税制改革を通さないことで最も大切な政治目標であるブッシュ減税の削除が達成できるなら、民主党は税制改革を通す意欲を持たないであろうと言うものだった。

2番目のトリガーは共和党をなだめる為のもので、自動的に4250億ドルを、今後10年間かけて、メディケア、メディケイドから削減すると言うものだ。しかしボーナーは繰り返し自分の「政治的トロフィー」をトリガーとして求めた。左翼にとってのブッシュ減税と同程度の影響を右翼へ与えるもの、すなわち、全てのアメリカ人を保健に入れるオバマの保健法の中心命題、「個人の義務(individual mandate)」条項の削除だ。この条項の削除は下院のティー・パーティーにとって最優先課題で、彼らはこれをオバマの専制性の証拠と見ていた。オバマがこのトリガーを喜ぶことはあり得なかった。この議論は交渉の初めから、2人の男と彼らのスタッフの間で取り交わされていたが、今や合意が間近になった事で、どのように強制力を持たせるかと言う問題は緊急のものとなった。トリガーを巡る議論は本質的に信頼性の問題だ。避けがたい議論が巻き起こった時に、両方とも相手方が税制改革合意を自党に拒否させないと納得できるものでなければならない。そして2人とも共に働いた事が無く、個人的にもお互いを良く知ら無い為、オバマとボーナーが確信を得るには、合意できない時の政治コストが両者にとって受け入れがたいほど高いものでなければならなかった。

7月20日の水曜日、2時間に渡るオーバル・オフィスでの会合で、オバマとボーナーは熱心に議論を重ねた。両者共、お互いが譲れない点、予算の額とトリガーについては、相手を尊重していた。次の朝2人は議会からの反乱に直面した。タイム誌の記者、カール・ハルス(Carl Hulse)とジャッキー・カルメス(Jackie Calmes)が1面トップで交渉について書き、合意が近いと報じたのだ。上院民主党会派の毎週の昼食会に出席したジャック・リューは、比較的小額な8千億ドルの税金の為に福祉削減の話し合いをしている事に怒った上院議員達から叱責された。上院議員達はそれをタイム誌から知らされたことに激怒していた。多数派リーダーのハリー・リード上院議員が(下院リーダーのナンシー・ペローシと共に)完全な報告を受けたのはその前夜だった。リューがその席で、他の上院議員からの口撃を受けている間、リードはこわばった姿勢のまま沈黙を続けた。

ちょうどその時、ボーナーはラッシュ・リンボウ(Rush Limbaugh)のラジオ・ショーに、招かれてもいないのに電話を掛けた。右翼からの抗議の声をなだめようという行為だった。保守派が嫌悪しているのは追加予算だけでは無かった。2010年選挙で、将来のメディケア削減を含むオバマの健康保険法案に反対するキャンペーンを展開した議会保守派は、2012年を待たずして争点を放棄する事に、民主党以上に不熱心だった。(グランド・バーゲンのこの部分に対する彼らの抵抗は恐らく、右翼の予算政策における中心的矛盾点を際立たせている。共和党は自らの定義づけを、殆どすべてにおいて債務削減に対する決意に置いている。しかしそれを達成するための全ての方法(増税、防衛費削減、福祉改革)は政治的に不快なものと受け取っている。)「まだ何の合意もなされていない。」ボーナーはリンボウに放送の中で確約した。

しかしながら、両党から強力な一団が立ち上がり、既にきわどくなった合意に反対するこの状況下でなお、交渉は和やかに素早く進んだ。7月21日木曜日の朝、ジャクソン、ローパー、ネイバーズ、スパーリング、リューは、他の側近達と共に、予算問題を脇に置いて、両者の提案の小さな相違点に注目して克服する事に同意していた。今や両者の間には一定レベルの信頼感が作られていた。かくも多くの文書が両者の間を行き来し、そのどれもがレポーターやブロガーにリークされてないと言う単純な事実が、彼らの仕事上の関係を強固にしているようだった。ネイバーズのウェストウィングのオフィスを訪れたことがある両方の陣営の誰に聞いても、彼らは最終合意に向けて揺るぎ無く建設的に行動していたと話している。

実際オバマは、その木曜夕方、オーバル・オフィスでのリードとペローシとの会議において、グランド・バーゲンが間近だと自信を持って話している。大統領は自党の議会指導者達に、ボーナーに選択肢を与えたと話した。オバマが望むより大きなバーゲン、1兆2千億ドル予算と合意間近の支出削減、あるいはより小さいバージョン、オリジナルの8千億ドル予算と少ない削減枠、のどちらかだ。オバマはリードとペローシに言った。彼が思うに、これは悪い合意と、さらに悪い合意との間の選択だと。しかし大統領は合意に対する支持を2人に求めた。議会指導者達は2人とも展望に対して興奮はしなかった。しかし2人は静かに大統領を支持する事を約束した。

カンターと逆提案

ワシントンにいる多くの者と同じように、ホワイトハウスの側近達は、ボーナーと、彼より14歳年下で序列2位のエリック・カンターの関係について戸惑っていた。7月にホワイトハウスで行われた下院指導者達との一連の緊張した会議で、オバマの側近達はカンターの言動に呆然とした。少しばかりきまりの悪い思いさえした。カンターは意見を求められた時、大統領の目の前で議長と正反対の意見を言う事があったのだ。それはオバマの側近達にはワシントンの礼節に反する行為に思えた。そして共和党会派内の深い対立を垣間見せてくれるものだった。7月中旬にデイリーとガイトナーが交渉を再開する為にキャピトル・ヒル内のボーナーのオフィスに招かれた時、2人はカンターもその場所に居たので驚いた。それはホワイトハウスが、合意が上手く働くと信じた主たる理由でもあった。カンターの存在は、2人の共和党指導者が同じ意見を持っていることを意味していると、彼らは受け取った。

しかしカンターはグランド・バーゲンに対する自分の意見を変える事は無かった。ボーナーはデイリーやガイトナーを会議に招いたのと同じように、単にカンターを招いただけだった。そして多数派リーダーがこの状況に対してできるのは、単に受け入れる事だけだった。カンターの回想に従えば、彼が会議に出たのは出ないよりましだからだった。最初の交渉の時は10日間に亘る交渉が続く間、彼は無視されていた。

カンターが反対するのは、彼が単に妨害者だからでは無い。彼は予算関連の話題を好きになれなかった。部分的には主義主張の為に、そしてまた部分的には、このグランド・バーゲンが、ワシントンの共和党が必死でコントロールしようとしている草の根の反乱に再度火をつけてしまい、メンバー数人の再選を危険に晒してしまうからだ。党指導部が政府に、寄り多くの資金を与えるべき(より少なくでは無い)と主張する場合、税金に関する議論は、あからさまな反乱と第3党の分離を招いてしまうだろう。カンターは又、ホワイトハウスが合意を守ると信用していなかった。更に多くの要求を持って帰ってくるに違いないと警告していた。そして恐らく最も重要な点は、既にウォールストリートジャーナルのエディトリアル・ページで増税案と呼ばれているボーナーの8千億ドル案と同様、グランド・バーゲンは下院を通る見込みが全く無いと、カンターが強く批判的だった点だ。

この最後の点は、ボーナーの主要な弱点と会派の中で受け取られているもののヒントを与えてくれる。ボーナーの議長になるまでの経歴は特異だ。彼は、票読みをして囲い込むと言う仕事で重要な役割を果たす下院幹事長を経験していない。彼は又、まとめ役としての経験も充分では無い。「イエスを得る」ために時として必要な攻撃的戦術は彼にとって馴染みの薄いものだ。ボーナーは自分の議長としての権威が投票の日に効果を発揮すると信じているが、そのような予想は既に彼を何回かトラブルに巻き込んでおり、彼の指導部のメンバーは、彼の予測に信頼を置いていない。ギャング・オブ・シックスの混乱が起きる前、彼はグランド・バーゲンに対して(全240票の共和党票の内)150票余りをまとめられると概算していた。カンターと他の共和党上院議員は、その半分以下だろうと考えている。

木曜の午後、次の行動について話し合うために、カンターがボーナーのオフィスへ入った時、下院議長は言わば箱に閉じ込められた状態だった。ホワイトハウスが取った立場は、ボーナーに自会派の中で動ける余地を、わずかしか与えていなかった。しかし彼は又、妥結直前まできた合意を壊したく無かった。そして時間切れ寸前での対立は、国全体を巻き込む危機と成っていた。

交渉のこの瞬間における議長側の物語は、いつも際立って整合的であり、彼と彼の側近達はここ数週間この物語を、私を含む多くの人に繰り返し話している。オバマが要求する追加予算は、「成功の見込みが無い(nonstarter)」と彼は言う。彼は「詳細なチェック(gut check)」をした結果、大統領を信頼できないと決断した、大統領は明らかに自分達が作った合意を支持し続ける勇気を持っていないと。従ってボーナーには、交渉の席を立つ以外に選択肢が無かった。カンターも同じ考えであり2人は同時にこの結論に達した。

これは保守的な信条に立脚した男の明確な物語だ。しかしながら、厳密に言えば、追加予算は成功の見込みの無い話では無かった。いずれにしても、ボーナーは、オバマが「ゴールポストを動かし」てから、さらに48時間交渉を続けるほど、ひどく合意を望んでいた。その事実は、この裏切りこそが明白に交渉を破壊したとするボーナーの主張に疑問を投げかける。そして木曜日の時点でも、ボーナーと彼の最上位の側近達は、大統領を驚かすような逆提案が出来ないか、多少なりとも考えている。

ボーナーが出した広範囲に渡る提案、その詳細は今日に至るも秘密にされているが、その中でボーナーは新しいより高額の予算目標について、明らかに大統領と率直に語り合っている。明らかに、増税拒否の考えを棄てた事を意味する妥協だ。もしオバマの机に逆提案が届けば、両者にとって巨大な政治的リスクを持つグランド・バーゲンが、24時間以内に合意された可能性は高い。それが議会を通ったかどうか、実際には大統領の机になんらかの合意を届けられたかどうかは、永遠に答えの出ない質問だ。

その代わりに起きたのは、広範囲に渡るレポートに従えば、次のような事だった。木曜日の午後、ボーナーはカンターと共に彼の逆提案の実現可能性を高めようとした。しかしカンターはそれを即座に拒絶した。彼は常に、ホワイトハウスを信頼できないと言い、さらなる要求を返してくるに違いないと警告していた。オバマが予算の額をひっくり返したのはその証拠だと。カンターはこれ以上の逆提案に対し、支持できない事を明確にした。彼は又、会派も支持しないであろう事を確信していた。もはやカンターは、室内に居る批判派では無かった。彼は今や、グランド・バーゲンは現実に不可能だと確信していた。

ボーナーは少し後にオバマと話している。大統領は、後にリードとペローシに言ったのと同じオプションを告げた。より大きな予算と大きいパッケージ、又は8千億ドルと小さなパッケージだ。ボーナーは全てを聞いた、しかしその時点で彼は、カンターやその他の人間との会話から、どちらのオプションも自分の会派を通らないことを知っていたはずだ。グランド・バーゲンに自分の議長の椅子を賭けるのは1つの選択肢だろう。しかし成功の見込みの無いものに賭けて議長の椅子を投げ捨てるのは全く別だ。そしてオバマは今、彼にそれを求めている。

このサーガの最後の行動は、ほのかな十代のロマンスにおける不器用な失敗、ただしフェイスブックでの友達削除とかショートメッセージとかが無いもの、のように進んだ。木曜日午後10時、オバマはボーナーの携帯に電話した。ボーナーが出なかったので、大統領はボイスメイルにメッセージを残した。次の朝、オバマは何気なくデイリーに、ボーナーから何か聞いてないか尋ねた。デイリーは、何も受け取ってないと答えた。そして議長の側近の誰とも連絡がつかないと付け加えた。それで大統領は不安を覚えながら待った。何故議長は自分の電話に答えないのだろうと、訝しみながら。何時間かが進むうちにウェストウィングの雰囲気は、当惑から不安に、そして怒りに変わった。午後も半ばの時間になってキャピトル・ヒルからホワイトハウスへ噂話が伝わってきた。ボーナーが記者を相手にブリーフィングをスケジュールしていると。彼は記者を相手に合意が死んだことを告げた。そしてリードとミッチ・マコンネル(Mitch Mcconnell)、上院共和党の指導者と会談し、債務リミットを上げる方法が無いか話し合っていると言った。

最終的にボーナーが金曜の夜、電話を返してきた時は、傷ついた求婚者同士のおざなりの会話しか無かった。両者はイライラし、直ちに自分達の側の物語を公言し始めた。さまざまなバージョンを織り交ぜながら。オバマがゴールポストを動かした。ボーナーは届けられなかった。この話はワシントンにおける、両面的現実を代表するものとなった。両方とも本質的には真実だ。しかし完全では無い。

何故ボーナーは金曜日早いうちに電話を返さなかったのか?どんな子供でもポケモンカードをトレードした事がある子なら、少なくともベスト・オファーをテーブルに出さないうちに交渉から引き上げてはいけない事ぐらい知っている。ボーナーは言うだろう。彼には時間が無く、オバマが動かないことを確信していたと。しかしもっと蓋然性の高い話が考えられる。その話では、ボーナーがオバマと話たく無かったのは、全く逆の理由でだ。オバマが先の日曜日の内容で応じ、ボーナーはそれで逃げ場が無くなる。ボーナーは今や知らねばならなかった。自会派を従わせられる説得力あるステーツマンとの自己認識にかかわらず、実際はどんな合意であろうと彼自身の指導部すら通すことが出来ないと言う事を。ボーナーにとって、交渉から退散してオバマが合意を妨害したと非難するほうが、オバマを以前合意した内容へ後退させ、議長自身の提案を採択させるリスクを犯すより安全だった。

最終的には、それが実際に起きた事だった。次の日、議会リーダー達はオバマに、彼ら自身の合意を提案できると告げた。その合意は、債務上限について2012年に別の投票を必要としている。そして6人の議員からなる「スーパーコミッティー(上下両院超党派委員会)」を設けて大規模な歳出削減を探すことを求めている。もし委員会が失敗したら、自動的に痛みを伴う削減が2012年末に発動される。(最終的には債務上限投票は2013年へ延ばされ、その他の法案は可決された。)オバマはこれを嫌悪し、オーバル・オフィスで彼に合意を伝えた議員達に自分の怒りを伝えた。会議の後、彼は再びボーナーを呼び出し、先の日曜日の合意へ戻る事ができないか尋ねた。ボーナーは、もう次へ進む時だと告げた。

ボーナーは欺いたのか?

ボーナーの見地から見ると、彼が何故、オバマが欺いたと感じて立ち去ったのか、理解するのは難しく無い。「オバマは知るべきだった。彼が私の髪の毛に火をつけたんだと言う事を。」3月最初の日、私達が彼のオフィスに座っていた時、ボーナーはそう言った。彼は大理石の暖炉の側に置かれた革の椅子に座っていた。側に置かれた灰皿には彼のタバコが置かれ煙を昇らせていた。3人の側近が近くに座っていた。

「理解してもらわねばならない。」彼は続ける。「何時間も何時間もの話し合いが行われた。私が自分で考える以上に、彼は私の政治状況について話していたんだ。いいかい?だから突然に4千億ドルの増額を言い出した時も、彼は知っていたはずだ!」ボーナーは当惑したかのように頭を振った。

「もちろん彼は知っていたさ。」議長は最終的に決断した。「彼は自分がものごとを崖から突き落としたと知っていたはずだ。」

それでも最終的に、党の優先課題を脅かすグランド・バーゲンに対し両陣営リーダー達が根深い疑念を持つ中、最も近い側近達に対し、オバマが自分の望む事にサインさせられた一方、ボーナーはそれをしなかった、あるいは出来なかったと言う事実は、異なる物語を売りつけるあらゆる努力に関わらず、否定しがたい。民主党指導者達が、予算額の多寡に関わらず合意を受け入れようとしていた間、ボーナーの理論的な逆提案、おそらく彼が単独で決めていたなら出されていたであろう逆提案は、彼の指導部自身すら通らなかった。

この記事が公開される少し前にボーナーは私に文章を送って、あの週後半に逆提案をするチャンスは事実上ゼロだったと述べた。しかし3月最初の日、カンター以外の共和党リーダー達に逆提案を見せたかどうか私が尋ねた時、彼の返答はもっと曖昧だった。

「あれがそこまで出回っていたかどうか知らないな。」ボーナーは少し考えてから言った。「エリックと私は、自分達の立ち居地に満足していた。私達は孤立していると考えていただろうか?その通りだ。私達は、もし合意に達したら大統領が孤立すると考えていただろうか?その通りだ。しかし私は、他の指導者達とこの部屋に座り、正確にどんな立ち居地にいるか話していたとは思わない。そんな事は無かったとは言わない。だけどそう感じていた主な理由は、合意に対する反応について、私が極めて好意的に考えていたからなんだ。」後に彼は私に率直に語った。「去年の夏に起きた事は、議長として私が体験した中で、最も残念な事だった。」

今、債務に関わる新たな闘いが待ち受ける中で、なんらかのグランド・バーゲンが復活する可能性はとてもありそうも無く思える。オバマとボーナーは数回しか語り合っていない。政権で最も合意形成に長けているビル・デイリーは、このエピソードから完全には回復出来ず、ハリー・リードとの仲は損なわれたままだ。リードは、自分や他の上院リーダー達を、交渉が壊れる間、暗闇に置いたままだった事でデイリーを責めている。デイリーは1月に辞任し、後任にジャック・リューが就いた。ボーナーとその側近達が脇へ追いやろうと試みた男だ。

年末に待ち受ける2つの危機(自動的な予算削減と、その数週間後の債務上限に関する投票)について、ボーナーに尋ねた時、彼は新しい大統領に希望を託していると言った。「私は現大統領が自党を率いる勇気があると言う現実的な証拠を何も見ていない。」彼はうめいた。彼は付け加えて、しばらくの間はどんな形でも包括的な合意を自分の党に売るのは、前より難しい状況だと言った。

しかしそれでも、失敗したグランド・バーゲンの試みは、回復不能な災害と言うほどでは無い。債務上限に関連したメルトダウンを避けようと言う数ヶ月に渡る醜いプロセスは、普通のアメリカ市民に更なる苦々しい思いをさせた事だろう。しかし同時に両陣営の政策決定者達に、自分達自身の妥協に対する許容量と格闘する事を強いた。何週間と言うもの、ホワイトハウスと下院議長のオフィスでは、この国で最も影響力のある側近達が、スプレッドシートに没頭し、一般的でない特殊用語を駆使しながら、どのような種類の予算削減と歳入額ならやってゆけるかを考察した。

彼らは自分達が追い求めた広範囲な合意を得られなかった、しかし彼らは超党派的改革案の真剣な青写真を、一連の部外秘メモの形で作り出した。両者の相違は数千億ドルしか無かった。それは実際の金額のように見え、もちろんそうなのだが、政府が放送電波の認可だけで250億ドル手に入れられる事を考えれば、この違いが克服可能なもので有る事を理解できるだろう。今現在明らかなのは、ワシントンを債務削減に向けて踏み出す事から押し留めているのは、単一の政策上のジレンマでは無く、妥協する事を致命的なリスクにしてしまう政治的ダイナミックスであると言う事だ。

そのダイナミックスは11月以降変化する。そして直感に反するように見えるかも知れないが、現在の配役が変わらない方が、変化は起こりやすいと思う。ミット・ロムニー(Mitt Romney)が大統領に選出されて、政権のスタッフを決め、宣誓を済ます前に、差し迫った予算危機に立ち向かう場面を考えてみよう。ロムニーが選出される場合、共和党保守派支持基盤の深い不安にも関わらす選出される事になる。そして彼は自分の政策を通す為に保守派の支持を必要としており、保守派は、彼のわずかな揺らぎさえもイデオロギー的忠誠心を計るものとして注目している事だろう。彼が大統領としての最初の行動で、メディケア削減と税収入拡大という妥協をして、この支持基盤を激怒させるリスクを犯すと考える者が居るだろうか?

一方、オバマが再選された場合、彼は人生最後の選挙が終わり、自分の業績を確立する時間を最高で18ヶ月持っていると知った状態で、差し迫った危機に相対する。ボーナーは2010年のティー・パーティー選挙から2年経ち、自会派内の過激派の数が減っていることを知るだろう。そして不信と苦々しさは残っているものの、80%は合意している素案を持っていることを、両方ともが知っている。

インタビューの最後に、両者が再び数ヵ月後に激突したら何が起きるか、ボーナーに訊いた。彼はシガレットを一服した。

「私達はとても重要な瞬間を迎えようとしている。国の未来を左右する大きな決定を下さねばならない瞬間だ。」彼は穏やかに言った。そして、やおら立ち上がり、手を打ち鳴らして私を驚かせた。「オール・ライト!」彼は私に手を伸ばしながら言った。彼は話し終えた。少なくとも今は。

~~ここまで~~

次回更新は4月21日ごろになると思います。
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まとめteみた.【オバマ対ボーナー、債務削減案を潰しtのはどっち?】

アメリカ政治関連の記事をUpします。記事を書いたのはマット・ベイ(MattBai)さんです。元記事はここにあります。去年夏、オバマ大統領とボーナー下院議長との間の政府債務削減案交渉の内幕話です。~~ここから~~オバマ対ボーナー、債務削減案を潰したのは誰だ?昨年7月...

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英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

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