スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

はたして9歳児をサイコパスと呼べるのか

発達障害に関連した記事をUpします。

記事を書いたのはジェニファー・カーン(Jennifer Kahn)さんです。元記事はここにあります。

記事中で取り上げられているサイコパスは精神障害の一種で、反社会的人格を特徴としています。凶悪犯罪を犯した一部の人間に見られる症状です。
文中の心理学用語callous-unemotionalは、日本語訳が判らないので英語のままにしましたが、勝手な翻訳として無感情非感動的と言う言葉をつけました。学術用語としては通用しない言葉です。悪しからず。

~~ここから~~

はたして9歳児をサイコパスと呼べるのか

去年夏のある日、アンと夫のミゲルは、9歳の息子マイケルをフロリダの小学校へ連れて行った。家族で「サマーキャンプ」と呼ぶことにしたプログラムの初日だった。何年もの間、アンとミゲルは長男の事を理解しようと奮闘してきた。長男は、高い頬骨と大きな瞳、薄茶の髪の毛をしたエレガントな少年だったが、時として、激しい憤怒と冷たい無関心を交互に繰り返す子供だった。8週間に亘るマイケルのプログラムは、実際のところサマーキャンプでは無く、高度に組織化された心理学研究だ。サマーキャンプと言うより、最後の拠り所となるキャンプだった。

母親によれば、マイケルの問題は3歳ぐらいの時に始まったと言う。弟のアランが生まれた直ぐ後だ。その当時マイケルは大体において単に「駄々っ子のように」振舞うだけだったと彼女は言う。しかしマイケルの振る舞いは直ぐにエスカレートした。癇癪を爆発させたマイケルは泣き叫び、なだめようが無かった。普通の幼児の振る舞いとは異なっていた。「『もう疲れた!』とか『もう嫌だ!』とか、普通の子供がするようなものではありませんでした。」アンは回想しながら言った。「息子の振る舞いは常軌を逸していました。それが毎日、何時間も何時間も続くんです。何をしても駄目でした。」何年もの間、靴を履きなさいとか居間の玩具を片付けなさいとか、両親から通常の用事を言いつけられる度に、マイケルは泣き叫んだ。「あそこへ行きなさい。ここに居なさい。どんな事でもマイケルは破裂するんです。」ミゲルは言う。こういった激怒は幼児期が終っても続いた。8歳に成ってもマイケルは、アンやミゲルが学校の準備をさせようとすると怒りを爆発させた。壁を殴ったりドアを蹴って穴を開けたり。見ていないところでは、ズボンをハサミで切ったり、自分の髪の毛を順番に引き抜いたり。怒りを便器の蓋にぶつけて、壊れるまで開けたり閉めたりを繰り返した。

アンとミゲルが最初にマイケルをセラピストへ連れて行った時、彼は「第一子症候群(firstborn syndrome)」と診断された。弟が生まれた事に怒っていると判断されたのだ。確かに両親共、マイケルが新しい赤ん坊に深い憎しみを抱いている事に気がついていたが、弟に対する競争心だけでは、彼が続ける極端な行動の説明として充分で無いように思われた。

5歳になったぐらいからマイケルは、目一杯怒っている状態と、計算された完全に理性的な良い子の振りをする状態とを、巧みに使い分けるように成った。酷く戸惑わせる能力だとアンは説明している。「どんな時に、本当の感情を見せているのか、判らなくなるんです。」アンはある出来事を覚えている。宿題についてマイケルが金切り声を上げて泣いていた時、アンは息子を順々に説得しようとしていた。「私は言ったんです。『マイケル、昨日やったブレインストーミングを覚えている?貴方がしなければいけなかったのは、自分の考えを文章にする事。そして貴方はそれが出来たじゃない!』それでも息子は酷く泣き叫び続けていました。それで言ったんです。『マイケル、昨日ブレインストーミングしたから、今日はこんな事、起きないと思ってたのに。』そしたら彼は、泣き叫ぶのを止めて、ピタッと静かになったんです。そして私を向いて、大人のような落ち着いた声で言いました。『そうすると母さんはあの時、充分明確に考え抜いてはいなかったんだ。違うかい?』」

アンとミゲルはマイアミの南にある小さな海辺の町に住んでいる。よく手入れされたカル・デ・サクで子供達が自転車を乗り回しているような場所だ。(取材対象のプライバシーを守るために、ファーストネームとミドルネームのみを使っている。)私が2人と会った日は曇り空の暑い日だった。広々とした居間のソファに座りながら、アンはコーク・ゼロを飲んでいた。2人の年下の息子達、6歳のアランと2歳のジェイクは絨毯の上で遊んでいた。彼女の話では、年下の息子達はどちらもマイケルのような問題は見せていない。

「私達はこれに関する本を本棚一杯集めました。『The Defiant Child(頑固な子供)』、『The Explosive Child(爆発する子供)』」彼女は私に言った。「皆それぞれ違う戦略が書いてあります。私達はそれを全部試しました。数日間ほどは効果があるように見えました。でも又、元に戻ってしまうんです。」心理学の学位を持ち、以前小学校の教師もしていたアンは、自分の学んできたものが役に立たない事に苛立っているのを認めた。「私達は、空回りしていると感じていました。」彼女は言う。「私達のせいでしょうか?息子の問題でしょうか?あるいは両方悪いのでしょうか?大勢の医師に見てもらい、数多くのテクノロジーを試しました。でも、誰も私達に言ってくれないんです。『問題はこれです。私達はこうしなければいけません』って。」

37歳のアンは多弁で率直な人間だ。彼女は最近フード・トラックの運営を始めたところで、私達が会った日は、フロリダ風ビジネスウェアを着ていた。ブルートゥースのヘッドセットにiPhone、ジーンズのショートパンツに、自分のビジネス名が飾られた蛍光色グリーンのタンクトップと言う服装だ。ミゲルはもっと控えめな人物だった。以前、商用機のパイロットをしていて、現在は不動産関連のエージェントをしているミゲルは、しばしば家族の中の仲介者として振舞う。嵐の中で飛行機を着陸させる時のような、男らしい落ち着きで、緊張した場面を収める。

「最初は自分達が悪いんだと思いました。」ミゲルは言った。年下の2人の息子は玩具の自動車で騒々しく遊び始めていた。「しかしマイケルは理論を受け付けない。本に書かれていた事をやってみても、息子は依然として狂ったままでした。私達は人前で息子と奮闘する事に疲れてしまい、実際、社会的な交わりを控えるようになってしまったんです。」

この6年間、マイケルの両親は彼を8人の異なるセラピストの下へ連れて行き、どんどん増え続ける数多くの診断を受けた。「とても多くの人に、とても多くの違った事を言われてきました。「あ~、これはA.D.D.だね...いや違う、うつ病だ...あるいは別の何か。きっとDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診断と統計の手引き)を開いて何か適当に選んだとしても、息子が受けた診断と関連している可能性は高いと思います。息子はO.C.D.(Obsessive Compulsive Disorder:強迫神経症)の特徴を示していると言われました。あるいは又、息子はsensory-integration disorder(知覚統合失調症)の特徴を示していると言われました。息子を治療する上で、誰1人本質的な症状が判らないんです。それもイライラさせられる事の1つです。」

去年の春、マイケルを診察していた心理学者が、両親を、フロリダ国際大学の研究者、ダン・ワッシュブッシュ(Dan Waschbusch)に紹介した。それに続く一連の検査の後、アンとミゲルは、又別の可能性ある診断を提示された。息子のマイケルはサイコパスであるかも知れない。

過去10年間、ワッシュブッシュは「callous-unemotional(カロウス・アンエモーショナル:無感覚非感情的)」児童の研究をしてきた。特徴的に、感動とか後悔とか同情とかを表す事が欠けていて、成人してからサイコパスに成る危険性があると考えられている児童だ。マイケルの検査においてワッシュブッシュは幾つかの心理学試験と、教師および家族の評価尺度を組み合わせた。その中には、Inventory of Callous-Unemotional Traits(無感覚非感情的特徴の目録)、Child Psychopathy Scale(児童サイコパス尺度)、そして修正版Antisocial Process Screening Device(反社会的過程選考手順)といったツールが含まれている。全てのツールは成人サイコパスと密接な関連がある冷血で利己的な行動をはかるよう設計されている。(「ソシオパス(sociopath)」と「サイコパス(psychopath)」は本質的に同じ意味の言葉である。)研究助手が、マイケルの両親と教師に対して、家庭と学校での彼の行動をインタビューした。全ての試験結果とリポートを図示した結果、マイケルにはcallous-unemotional(無感覚非感情的)行動に関連する標準的な2つの項目で、正常範囲からの逸脱があった。マイケルはそれにより、スペクトラムの中でも、深刻な側の端に位置づけられる。

現時点で児童のサイコパスについて標準的なテストは存在しない。しかし、サイコパスが自閉症と同じように独特な神経学的状態であり、児童においても5歳以降であれば特定可能だと考える心理学者は増えてきている。この診断において重要なのは、callous-unemotional(無感覚非感情的)特徴だ。殆どの研究者は現在、この特徴が、一般的な行為障害をもつ子供、同じように衝動的でコントロール不能、かつ敵意を持った暴力的行為をする子供と、「芽生えつつあるサイコパス」とを分けるものであると信じている。幾つかの研究に従えば、マイケルが見せたような攻撃的不服従を含む、深刻な行為障害をもつ子供の3分の1は同じようにcallous-unemotional(無感覚非感情的)特徴において通常より高い値を示している。(成人に対する診断に含まれる、自己愛(narcissism)と衝動性については児童に適用することは困難だ。児童は自然な性質として自己愛的で、衝動的であるから。)

何人かの子供ではC.U.特性は明白な形で現れる。20年に亘って児童のサイコパスに関するリスク要因を研究してきたニュー・オーリンズ大学の心理学者、ポール・フリックの説明によれば、ある少年は家で飼っている猫の尻尾を、1週間の間ナイフで少しずつ切っていたと言う。少年は自分が行った一連の切除を自慢した。両親は当初、気がつかなかった。「その事について話した時、彼は極めて率直だった。」フリックは回想する。「彼は言ったよ。『僕は科学者になりたいんだ。だから実験してたんだよ。猫がどんな反応をするか見たかったんだ。』」

他の有名なケースでは、9歳のジェフリー・ベイリー(Jeffrey Bailey)と言う少年が、モーテルの水泳プールの深いところに幼児を突き落とした。幼児がもがきながら底へと沈んで行く間、ベイリーは椅子を出してきて見ていた。後で警官に質問されてベイリーは説明した。誰かが溺れるところを見たかったんだと。捕まった時、刑務所に入れられる事を彼は気にしていないようだった。むしろ自分が注目の的であることを喜んでいるかのようだった。

しかし多くの児童において、兆候は見え難い。Callous-unemotional(無感覚非感情的)児童は、外見を装う事が巧みだとフリックは強調する。彼らは又、頻繁に嘘をつく。全ての子供が良くやるように、罰を逃れる為だけで無く、あらゆる理由で嘘をつく。あるいは理由も無く嘘をつく。「例えば夕食前に缶からクッキーを盗み食いしてるのを見つかった子供は、たいてい後ろめたさを顔に出している。」フリックは言う。「子供はクッキーを欲しいのだが、同時にそれが悪い事だと感じている。重症のA.D.H.D.の子供、衝動を抑える力の弱い子供でも、母親に怒られた時は、悪い事をしたと感じている。」callous-unemotional(無感覚非感情的)な子供は後悔の念を感じていない。「誰かに怒られても、全く気にしないんだ。」フリックは言う。「彼らは、自分が誰かの感情を傷つけたとしても気にしない。」成人サイコパスと同様、彼らは人間性を欠いているように見える。「もし彼らが、冷酷にならなくても、求めるものを手に入れられるのなら、状況はより容易になる。」フリックは主張する。「しかし最終的には彼らは、何であれ最も有効な方法を採用するだろう。」

心理学者の間では、幼い子供にサイコパス的傾向があると言う考えは、依然論争の的と成っている。テンプル大学の心理学者、ローレンス・スタインバーグ(Laurence Steinberg)は、他の多くの人格障害と同様、サイコパスを児童に対し正確に診断することは不可能だと主張する。あるいはティーン・エイジャーに対してさえ困難だと。なぜなら、両者とも脳が成長途中であるし、この年代の人間の自然な行動でさえ、サイコパス的だと誤解されやすいから。他にも、仮に正確な診断が下せたとしても、若い子供をサイコパスだとレッテルを貼る事の社会的コストは高すぎると、懸念を示す人々がいる。(この障害は歴史的に治癒不可能であると見られている。)テキサス・A&M大学の診療心理学者、ジョン・エデンズ(John Edens)はサイコパスのリスクを持つ子供を特定する研究に資金を費やす事に反対し、警告を発している。「これは自閉症とは違う。自閉症なら両親は援助を期待できる。」エデンズは主張する。「かりに正確に診断できたとしても、それは破滅的な診断だ。サイコパス児童の母親に同情する人間はいない。」

ニュー・サウス・ウェールズ大学の心理学者、マーク・ダッヅ(Mark Dadds)は児童における反社会的行動を研究している人物だが、「5歳の子供にサイコパスと言うレッテルを貼る事に平静で居られる人間はいない」と認めている。しかし彼はこうも言っている。この特徴を無視する事は、さらに悪いと。「こういった気質の存在を示し、若年児童でも特定可能だとする研究結果は極めて強力だ。」最新の研究では、若年版のサイコパス・チェックリストで高いスコアをマークした思春期児童の脳には、重要な解剖学的相違が見られるとしている。これはこの特徴が生来のものである事を示している。別の研究、3000人の児童の心理学的成長を25年に亘って追跡した研究では、サイコパスの兆候は3歳の頃から発見できるとしている。少数ではあるが次第に数を増しつつある心理学者、ダッヅやワッシュブッシュを含む人々は、この問題に早期から取り組む事で、このような子供のコースを変えるのを助けるられるかも知れないと発言している。例えば、同情する能力は、脳の特定の部位でコントロールされていて、callous-unemotional(無感覚非感情的)な子供でもまだ弱い形で存在しているかも知れない。そしてそれは強化できるかも知れないと、研究者は望みを託している。

治療が成功する事の恩恵は莫大だ。サイコパスは人口の1%存在すると推計されているが、刑務所にいる犯罪者の約15%から25%を占めている。そして不釣合いなほど多くの殺人および暴力犯罪を起こしている。神経科学者のケント・キール(Kent Kiehl)による最近の推計では、国全体のサイコパスによる損害額は年間4600億ドルに上ると言う。うつ病による損害額の約10倍だ。その理由は部分的に、サイコパスが繰り返し逮捕される傾向がある為でもある。(恐らくは、非暴力的サイコパスによる社会的損害額はさらに高いかもしれない。「Snakes in Suits(スーツを着た蛇)」の共同執筆者、ロバート・ヘア(Robert Hare)は、金融業界やビジネス界の人々にサイコパスが含まれている証拠を詳述している。彼は、バーニー・マドフ(Bernie Madoff:ポンジ・スキームを使った詐欺で多くの人の財産と人生を破壊した人物)はこのカテゴリーに入ると推測している。)症状が改善する可能性は、診断行為を決定論的考え方から切り離す事にもなる。サイコパス児童を刑務所に送り込むのでは無く、治療を施す理由になるのだ。「修道女がかつて言っていたように、『充分若い内に取り組めば、変えることが出来る』のさ。」ダッヅは主張する。「この格言が真実であると望まなければならない。そうで無かったとしたら、私達が取り組んでいる相手は何だ?モンスターだ。」

私が最初にマイケルに会った時、彼はシャイではあるが、とても行儀の良い少年に見えた。弟のアランがビニール袋をパラシュートのように頭の上にかざして、家の中を走り回っている間、マイケルはお高くとまった様子で居間に入って来ると、ソファの上で丸くなってクッションに顔を隠した。「こっちへ来て、こんにちわって言わないの?」アンが言った。彼は私を見てから、元気良く立ち上がった。「もちろんさ!」そう言うと母親に駆け寄って抱きついた。台所でボールを弾ませたのを叱られると、普通の9歳児のように目を回して見せた。そして大人しく外へ出て行った。数分後、家の中に戻ってくると、ジェイクの前でおどけて跳ね回って見せた。ジャイクは玩具のスクーターに乗って行ったり来たりしている。スクーターがひっくり返った時、マイケルは大げさに息を呑んで弟に駆け寄った。「ジェイク、大丈夫?」彼は目を一杯に見開いて聞いた。弟の髪を熱心に撫でながら、彼は私を見ると勝ち誇ったように笑った。

仮に、この兄弟愛溢れる光景が不自然に感じられたとしても、それが本質的に不安をかき立てるものであるとは言い切れない。しかしながら、マイケルの態度は次第に変わっていった。2階のコンピュータでやるポケモン・ビデオの順番待ちをしている間、マイケルは私のところへ来て、簡潔に言った。「見て解るとおり、僕はアランが好きじゃ無いんだ。」その言葉が本当かどうか訊いたら、彼は言った。「そうだよ。本当さ。」そして普通の調子で付け加えた。「僕はあいつが憎い。」

数秒後、彼はテーブルに目を落として、私のデジタル・レコーダーに気が付いた。「これ録音しているの?」彼は訊いた。私は録音してると答えた。彼は少しの間私を見てから、ビデオへ戻って行った。そして突然別の部屋で大きな音がして、私が注意を逸らした間に、マイケルは機会を逃さず、レコーダーを引っつかんでイレーズ・ボダンを押した。(ワッシュブッシュは後で、こういった計算付くの反応は9歳児には珍しいと指摘した。9歳児は普通、すぐさまレコーダーを取りに行くか、単に泣いたり、すねたりするだけだと言う。)

私はマイケルの奇妙な行動の原因となるような、何らかの障害の兆候がアンとミゲルに見られないか観察したいと言う衝動に駆られた。しかしこの家族は、何であれ、極めて正常な家族に見えた。年下の2人の息子を監督するアンは、とても真剣で直接的だった。アランが居間を走り回って、ソファのクッションと衝突した時、彼女は鋭い口調で言った。「アラン、止めなさい!」(彼はその通りにした)ジェイクとアランが玩具の取り合いで泣きそうになった時、アンは、殆どの親に馴染み深い、忍耐強い怒り方でけんかの仲裁をした。「5分間だけ渡して上げなさいアラン、そしたら貴方が使って良いから。」アンが親として取るべき態度について、神経質になり始めるとミゲルはそれを静かに受け止める(アンはきっちりした厳しいルールを好み、ミゲルはもっと寛大ないき方を好む傾向がある)。ミゲルは自分でも認めている。自分のリラックスしたやり方は、たぶん「楽天的」なやり方なんだろうと。

それは確かにそのように見えた。夜が更けてゆくにつれ、マイケルの態度は寄り暴力的になる。ある時、マイケルが階下にいる間に、ジェイクがコンピュータ前の椅子によちよちと登りながら、うっかりして、マイケルが見ていたポケモン・ビデオのポーズを解除してしまった。アランはくすくす笑い、ミゲルさえもが優しい顔で笑った。しかし笑っていられたのは少しの間だけだった。マイケルが上がってくるのを聞いて、ミゲルは「オット!」と言うと、ジェイクを椅子から抱き上げた。

マイケルが来たとき、もうジェイクは椅子に居なかった。ビデオが進んでいるのを見たマイケルは鋭い悲鳴をあげ、誰がやったのか部屋中を見回した。彼はアランをじっと見た。そして木の椅子をつかむと頭の上に振り上げた。暴力に訴えようとしているかのようだった。しかし、つかの間じっとして、ミゲルが椅子を取り上げるに任せた。マイケルは叫びながらトイレへ走って行き、便器の蓋を、何回もバタンバタンと閉め始めた。引きずり出されて、ベッドへ行けと言い付けられたマイケルは哀れっぽく泣いた。「パパ!パパ!何でこんな事するの?」ミゲルに連れてゆかれながらマイケルは懇願した。「嫌だよパパ!僕はママよりパパが好きなんだ!」それからの数時間、ミゲルがなだめている間、マイケルは泣いたり叫んだりを続けた。部屋の外のホールでミゲルは謝った。「今日は普段より酷い夜だ」と言いながら。

「今日貴方が見たのは昔のマイケルなんです。」彼は続けた。「息子はずっとああでした。蹴ったり殴ったり、トイレの蓋を叩き閉めたり。」しかし彼は又、アランがマイケルを刺激して泣かせる事が良くあるとも言った。「アランはマイケルにちょっかいを出すのが大好きなんです。」ミゲルは言った。

ベッドルームからマイケルが声を上げた。「アランはどうなるか知ってるのに、どうしてあんな事するのか判らない。あいつを痛めつけてやる。」

ミゲル:「いいや駄目だ。」

マイケル:「後で覚えてろ、アラン。」

1時間後、ようやく子供たちが寝静まった後、ミゲルと私はキッチンのテーブルに座った。ミゲルの話だと、彼も子供のときは手のかかる子供だったと言う。それでもマイケルほどでは無かった。「自分の子供の側に私が寄りつかない事を願う親達が大勢いました。私の事をキチガイだと思っていましたからね。」目を閉じて記憶をたどりながら彼は言った。「大人の言う事をぜんぜん聞かなかった。何時も問題を起こしていました。成績も酷いもんです。通りを歩いているとスペイン語で言っているのが聞こえるんですよ。『Ay! Viene el loco!』『あのキチガイがきやがった』ってね。」

ミゲルの話では、彼の反社会的態度は10代後半まで続いたと言う。そこまで来たら、彼は「成長した」のだと。何が自分を変えたと思うのか質問したが、彼にも良く判らないようだった。「誰だっていつかは激しい流れをなだめる方法を覚えるんでしょう。」彼は最後に言った。「とにかくそう成ったんですよ。外側から自分をコントロールする術を学んだんです。」

ミゲルの経験がマイケルの将来について何かしら希望を与えるものであったとしても、アンの疑念は晴れなかった。その日の夕方、マイケルが元気良く抱きついてきた時の事を思い返しながら、アンは首を振った。「10分間で2回も抱きついてきたのよ。」彼女は言った。「この2週間、2回も抱きついてきた事なんて無かったのに!」彼女はマイケルが私に対して外面を繕っているのではないかと疑っている。セラピストに対してと同じようなトリックを使っているのだと。診療を受けている間だけ良い子でいて、成長している事を信じ込ませようとしているのだ。「ミゲルは信じようとしているの、マイケルが成長し、成熟しつつあるって。」彼女は言った。「私もこんな事は言いたく無いけど、マイケルは誤魔化す技術を育てているだけのような気がする。」彼女は言葉を切った。「マイケルはどうやったら欲しいものが手に入るか知っているのよ。」

ある朝私は、ワッシュブッシュが夏の診療プログラムを行っているサイトで彼に会った。そこはフロリダの北西にある小さな小学校だった。サイコパスに興味を覚える前、ワッシュブッシュは注意欠陥・多動性障害(attention-deficit-hyperactivity disorder:A.D.H.D.)を専門としていた。そして過去8年間、夏の間、重症のA.D.H.D.児童を対象にしたサマーキャンプ形式の診療プログラムを運営してきた。そして去年から、それとは別に8歳から11歳まで12人のcallous-unemotional(無感覚非感情的)児童(C.U.児童)を対象としたプログラムを始めた。マイケルは彼が当初から見ている患者の1人だ。

ワッシュブッシュの研究は、C.U.児童への診療としては、初めての部類にはいる。成人サイコパスは罰よりも報酬のほうに遥かに良く反応する事が知られている。ワッシュブッシュは果たしてこれが児童を対象としても真実であるかどうかテストしたいと思っている。A.D.H.D.児童が破壊的でコントロールしがたいのに対し、C.U.児童は意図的に大混乱を起こそうとする。泣き叫んだり、机の上を歩いたり、クラスの中を走り回ったり。ワッシュブッシュが「チャートから外れている」と言うところの特徴だ。

「体育の時間中にフェンスを乗り越えて隣のグラウンドへ行こうとした子供がいたよ。物理的に縛り付けておかなければ成らなくなるのは1日で何回もある。」ワッシュブッシュは言った。私達は学校の校庭へ歩いてゆく途中だった。「本当に仰天させられるのさ。」短く刈り込んだ白髪交じりの髪の毛と、情熱的で少し変わった仕草をするワッシュブッシュは、とても勤勉な人間ではあるが、驚くほど陽気に見えた。学校の廊下を通る間、途中の教室のドアを彼は注意深く見ていた。まるで児童がドアから飛び出して来ない事を確かめているかのように。ここでは、全ての子供2人に対し1人のカウンセラーが就いている。しかしワッシュブッシュによると、子供達はすぐさま学んでしまったと言う。集団で不法行為をする事で秩序を転覆させる事が出来ると言う事を。誰か1人の子供がキーとなるコード・ワードを叫んでシグナルを送った瞬間、全ての子供が同時に逃げ出すのだ。

「最初に私の目を一番惹いたのは、この子供達が見せる誤魔化しさ。」彼は信じられないかのように頭を振りながら言った。「彼らはA.D.H.D.の子供と違う。A.D.H.D.の子供達は衝動的なだけだ。彼らは又、行為障害でも無い。行為障害は、例えば『お前と、お前のゲームなんかくそったれだ!何でも言われたことの反対をしてやる』と言った感じさ。C.U.児童はルールに注意深く従う能力を持っている。彼らはそういった力を自分を有利にする為に使うのさ。」

話している間にワッシュブッシュは、私を学校のアウトドア・バスケットボール・コートへ連れてきた。そこでは、注意深く設計されたキープ・アウェイ・ゲームが行われていた。最初のうち、ゲームは普通に行われているようだった。輪になって立つ子供達は、中に立つ子供の頭越しにボールをパスし合っている。その間、コンサルタントは、集中力やスポーツマンシップを褒めたり、不正に対して注意深く注意したりして、フィードバックを与え続けていた。パスしたボールが大きく外れたとき、大きな体で髪の短い男の子がボールの受け手を睨み付けた。「あの子供達は、簡単に気分を害して行過ぎた仕返しをする。妬みについても同じだ。誰かが自分から得点したとすると、」あの睨み付けてる子供みたいに、「とても憤慨する。あの子は一日中、相手の子供に怒り続けるだろう。」

私は同じような、集中した激しい怒りをマイケルに見た事がある。ある晩、マイケルがポケモンのビデオを見ている間、アランが隣の椅子に登って座った。彼の口からは、ベイブレードのベルトの端がぶら下がっていた。マイケルはアランへ憎しみのこもった眼差しを向けた後、コンピュータの画面に向き直った。30秒後、マイケルは突然振り向くと、ベルトを強い力でひったくり、部屋の反対側へと放り投げた。

サマー・プログラムでマイケルは、不機嫌そうではあるが暴力的では無かった。赤いショートパンツを履いて野球帽を被ったマイケルはキープ・アウェイ・ゲームを上手くこなしているように見えた。しかしゲームの後、得点を数える時になると、退屈しているのが明らかだった。カウンセラーが得点を数え上げる間、マイケルは地面に寝転がってシャツから引き出した糸くずを振り回していた。

サマー・プログラムは7週目に入っていたが、殆どの子供に改善は見られなかった。マイケルを含む数人は実際悪くなっている。1人はカウンセラーに噛み付いた。プログラムの最初の頃、ワッシュブッシュが指摘したように、マイケルの態度は比較的良かった。彼は時たま席を飛び出して駆け回ったりしたが、強制的に退席させられるような事は稀だった。それに対し、最も乱暴な子供はしばしば退席させられていた。しかしその後、彼の態度はきりもみしながら悪化して行く。ワッシュブッシュの考えでは、その理由は部分的に、プログラムに参加している別の子供にマイケルが良い印象を与えようとしていた為だろうと言う。この場ではLと呼ぶことにする女の子だ。(彼女の名前はプライバシーを守る為に最初のイニシャルだけにさせてもらう。)

可愛いが気まぐれなLは、男の子達を互いに競わせる方法を直ぐに見つけた。「少女がやる誤魔化しの幾つかはとても典型的だ。」子供達が建物の中へ戻ってゆく間にワッシュブッシュは言った。「彼女がやって見せる事の正確さと量は、前例が無い。」例えば彼女は幾つかの玩具をこっそりとキャンプへ持ち込んでいて、それを賞品として他の子に披露した。彼女の命令で悪い事をした時に上げる賞品だと、ワッシュブッシュは私に話した。この戦略は特にマイケルに対して有効だったようだ。マイケルはしばしば彼女の名前を叫びながら監禁させられた。

ワッシュブッシュに従えば、Lのような計算された行動は、いわば「熱い血(hot-blooded)」で行われる行為として、サイコパスのような、より「冷たい血(coldblooded)」で行われる問題と区別できると言う。「熱い血の子供はより衝動的に振舞う傾向がある。」私達が子供の後について建物に入る間、彼は付け加えた。「理論的には、こういった子供は、異常に過敏な危機感知システムを持っている。彼らは怒りとか恐れを感じるのがとても早いんだ。」冷たい血のcallous-unemotional(無感覚費感情的)な子供は、それに対し、衝動的に振舞うこともあるが、彼らが行う悪い行いはより計算されたものだ。「じっと座っていられない子供と違って、こういった子は簡単に激怒はするが、とても静かに振舞う能力を持っている。その態度は言わば、『この状況をどういう風に利用できるか考えてみよう。それで誰が傷つこうが関係ない。』と言うものだ。」

ワッシュブッシュはある研究に言及した。その研究は23歳の犯罪者が3歳児の時、不快な刺激に対してどのように反応したかを比較した研究だ。この研究において3歳児は、最初に単調な音、次に突然、大音量の不快な雑音を聞かされる。殆どの子供は雑音の爆発を予知する能力を学ぶが、後に犯罪者となる子供は、最初の単調な音の時に、緊張するとか汗をかくといった、回避的兆候を見せなかった。

C.U.児童が一般児童に比べて、報酬とか罰に対して余り反応しないと言う命題をテストするために、ワッシュブッシュは、子供の良い行いに対して報酬として点数を上げ、悪い行いに対して罰として点数を下げるシステムを作った。そしてそのシステムを、週によって報酬のみ(加点のみ)したり、罰のみ(減点のみ)したりするように、若干変更した。週の最後に点数に従って表彰する子供を選ぶ。毎日、ワッシュブッシュとカウンセラー達は、子供達それぞれの行動、癇癪を爆発させた頻度やその強さ、良い行いの例などを記録し、その結果を集計した。プログラムでは、わずか12人の児童しか居ないので、その結果は有意な統計情報と言うよりも、一連のケーススタディでしか無いことを、ワッシュブッシュも認めている。しかしそれでも集めたデータが、C.U.児童を診療しようと試みる研究者のスタート地点になる事を彼は期待している。

「こういった子供達の行為については殆ど知られていない。ワッシュブッシュは、建物の中をバラバラに進む行列に付いて歩きながら言った。今現在でも、C.U.児童が診療に対して異なる反応をするかも知れない事は、殆どテストされていない。「これは地図の無い領域だ。」彼は認めた。「レッテル貼りを心配する人間は多い。しかしもし私達が、こういった子供を見分けられるのなら、少なくとも彼らを助けるチャンスはありそうだ。」彼は言葉を切った。「そしてもし、私達がチャンスを逃したら、もう他にチャンスは無いかも知れない。」

私の訪問したあくる日の朝、ワッシュブッシュはプログラム中に行われたクラスルーム・セッションのビデオを見に来るよう私を招いた。その視聴会は狭い部屋へ椅子を一杯並べて行われた。小さなテレビがキャスター付の台の上に乗せられている。フロリダ・インターナショナルの心理学部チェアマン、ウィリアム・ペルハム(William Pelham)が挨拶に立ち寄っていた。「ダンはテッド・バンディ(Ted Bundy:全米でおびただしい数の女性を殺害した人物)の再来を防ごうとしているのさ。」彼は私に陽気にそう言った。

ワッシュブッシュは熱心にスクリーンを見つめていた。カメラが教室をパンしている間、マイケルは居心地悪そうに机を押したり、椅子にそっくり返ったりして、モジモジしていた。「マイケル、課題をやってないわね。」カウンセラーが優しく注意していた。「O.K.!」マイケルは怒りながら言った。彼の隣には背の小さいメガネをかけた少年が座っていて、繰り返し床にペンを落として注意された。その子はその後、自分の腕に噛み付いている振りをした。

昼食のあと状況は悪化した。授業中、Lは別の少女に消しゴムを投げつけたが、小さな黒い髪の少年に当たった。その少年は椅子を力いっぱい引いて、後ろの席の机にぶつけた。Lが教室の中で、少年を追い掛け回しているのを見ながら、ワッシュバッシュは彼女が単にコントロールできないでいると言う考えを捨て去った。「これは計画的だ。」彼は重々しく言った。「彼女は自分が何をしているのか正確に判っている。」カウンセラーがLに座るよう命じると、彼女は自分の席に戻り、2分間静かにする事で報酬を10ポイント稼いだ。「この場面こそが正に相違点だ。」ワッシュバッシュはスクリーンを指しながら言った。「もしこれが衝動的なものなら、彼女は再び立ち上がって走り回っているはずだ。」

このような深刻な問題児を相手にする場合に難しいのは、彼らの問題行動の根っこを理解する事だとワッシュブッシュは指摘する。特にcallous-unemotional(無感覚費感情的)児童の場合は困難だと彼は言う。何故なら、彼らの行為、衝動的な行為とか、攻撃的な行為とか、誤魔化しとか反抗的態度とかが混合されたものは、しばしば彼らの持つ障害を見え難くするからだ。「マイケルのような子供は、一分毎に違って見える。」ワッシュブッシュは指摘する。「それなら、私達は衝動的な子供達はA.D.H.D.でそうで無いのはC.U.だと言えるだろうか?あるいは、彼は調子の波が上がったり下がったりするのであって、これは双極性障害(bipolar disorder)なのか?もし子供が注意を払わなかったら、それは反抗性障害(oppositional behavior)の為だろうか?単に興味が無かっただけなのだろうか?あるいは単にうつ状態なので注意を払うに必要な力を奮い起こせなかっただけなのだろうか?」

子供に対してC.U.のテストをする為の心理学的方法を研ぎ澄ます事に加えて、ワッシュブッシュは又、何故幾人かのcallous-unemotional(無感覚非感情的)児童が、そうで無い子供よりも、深い問題を抱えた成人へ成長しやすいのかを、よりハッキリさせたいと希望している。成人サイコパスの脳のM.R.I.画像には重要な解剖学的相違点が認められる。膝下野(subgenual cortex)が小さく、傍辺縁系(paralimbic system)の密度が低い、これらの領域は共感とか社会的価値を司る場所で、道徳的判断を下す時、活性化する場所だ。国立精神衛生研究所の認識神経科学者、ジェイムズ・ブレア(James Blair)によれば、この中の2つの領域、眼窩前頭皮質(orbitofrontal cortex)と尾状葉(caudate)は、肯定的な結果を補強し、否定的結果を避ける事において、重要な役割を果たしていると言う。Callous-unemotinal(無感覚非感情的)児童において、この間の連絡が機能していないとブレアは言う。否定的なフィードバックが、通常の脳のようには、記憶されないのだと言う。

研究者によれば、このような相違は主に遺伝的なものであると言う。ある研究によれば、callous-unemotional(無感覚非感情的)な性質の遺伝性は80%であると言う。パードュー大学の心理学者ドナルド、ライナム(Donald Lynam)は、20年間「サイコパスの芽生え」について研究した人物であるが、このような相違点は最終的に、成人サイコパスを特徴付けるあまり一般的でない混合、知性と冷酷さの混合を強化すると言う。「疑問点は、『何故、何人かの人間は悪いことをするのか?』では無い。」ライナムは電話で私に話した。「むしろ、『何故もっと多くの人間が悪いことをしないのか?』になる。その答えは、私達の殆どは、それを自分に許さない何かを持っているからだ。例えば私達は他人を傷つけることを心配する。何故なら私達は共感する力を持っているからだ。あるいは私達は他人から嫌われる事を心配する。あるいは捕まってしまう事を心配する。もしこういった制限事項を取り払ってしまえば、誰でもサイコパスに成ってしまうだろう。」

サイコパス的性向の遺伝性は高いが、不安性やうつ病の遺伝性よりは低いとライナムは指摘する。不安性とうつ病も同じように大きな遺伝的リスクファクターであるが、治療が有効な病でもある。ワッシュブッシュもそれに同意する。「私の見たところ、これらの子供達を正常な状態、他の一般的戦略が有効な状態に戻す為には、集中的な干渉が必要だ。しかしながら、サイコパスは遺伝的であるが故に治癒しがたいと言う立場は、」彼は頭を振った。「正確では無い。サイコパスには、凶悪な犯罪者の中でも最悪だと言う汚名がついている。私が恐れるのは、もしこの子供達に『サイコパス性向がある』と言ってしまうと、人々がそこから推論を引き出してしまう事だ。これは変更しがたい性質であり治癒不能だとね。私はそれを信じない。心理学は運命論では無いんだ。」

1970年代、精神医学研究者のリー・ロビンス(Lee Robins)は、一連の行為障害(behavioral problems)児童の研究を実施し、彼らが成人するまで追跡調査した。これらの研究によって2つの事が明らかになっている。第一に全てのサイコパス性向のある成人は、子供の時から深く反社会的であった。第二に反社会的性向において高い数値を示した子供の約50%は、成人サイコパスには成らなかった。別の言葉で言えば、初期段階のテストの数値は、将来その人物が暴力的犯罪者になる為の必要条件ではあるが充分条件では無い。

このギャップが研究者達に希望を与えている。理論的に言えば、仮に遺伝的なサイコパス性向がリスク・ファクターであったとしても、環境的影響によってリスクを緩和できる事に成る。ダイエットが心臓疾患の遺伝的リスクを下げられるのと同じだ。多くの心理学者と同様、フリックとライナムも、サイコパスに関して有名な「治療しがたい」と言う特徴は、実際には大げさに言われすぎていると考えている。情報を与えないという診療戦略が生み出したものであるに過ぎないと。研究者達は現在、児童におけるcallous-unemotional(無感覚非感情的)特徴と、完全な成人サイコパスとを、注意深く区別している。この病は、多くの心理学的障害と同様、成長と共に治療しがたくなるものなのだ。

それでもフリックは、どのような介入が最善なのか明らかで無いと認めている。「効果のある治療法を開発するまでに、これらの子供がどんな子で、どんなものに反応するのかを明らかにする為だけに、何十年も基礎的な研究をしなければ成らない。」彼は言う。「それこそが、私達が今やっている事だ。しかし実際に軌道に乗るまでには、まだしばらくかかるだろう。」

そして他にも問題が存在している。ライナムの話では、サイコパスが高い遺伝性を持っているが故に、冷たく無感覚な子供の親は、やはり同じような特徴を持っている場合が多い。そして冷酷に振舞う子供と親は、必ずしも強い繋がりを持っているわけでは無いので、こういった子供は、より多くの罰を受け、充分な養育を受けない傾向がある。その為に、彼が言うところの、「予言を自分で実現してしまう」のだ。

「やがて親はあらゆる努力を止めてしまう。」ライナムは言う。「数多くのトレーニングが、子供の両親に再度子供に取り組むよう仕向ける為にある。何故なら親達はあらゆる事をして、なにも効果が無かったと感じているからだ。」

アンは正にそう言う経験をしたと私に告白した。「母親として、本当のところ恐ろしい事なのですが、自分の周りに壁を築いてしまうのです。軍隊にいて毎日のように集中砲撃を受けているようなものです。癇癪を破裂される事とか憎しみとかに、自分を無感覚にする必要があるんです。」

マイケルの振る舞いが弟達に、特にマイケルを崇拝しているらしいアランに、心理学的影響を与えることを心配していないかアンに尋ねた時、アンはその考えに驚いたようだった。そして彼女は先週起きた出来事を話した。アランが1マイル以上離れた友人の家へ「逃げて」しまったのだ。「もちろん私達は酷く心配しました。」彼女は急いで付け加えた。「でもアランはけっこう向こう見ずなんです。」

自分は厳しくしつけるタイプなんだとアンは言う。特にマイケルに対しては。そうでなければマイケルは単純に乱暴な子に成ってしまうと彼女は心配している。彼女は「クリミナル・マインド(Criminal Mind:FBI行動分析課を舞台にしたテレビドラマ)」の中の、自分が恐れを抱いたエピソードを持ち出した。その話では、2人の弟が兄に殺された。「ドラマの中で兄は全く後悔の念を見せないんです。単にこう言います『あいつは僕の飛行機を壊したんだから当然だ』って。それを見たとき思いました。『ああ神様、こんな事が実際に身の回りで起きないようにしなくちゃ』って。」彼女はためらいがちに笑いながら頭を振った。「いつも言っているんです。マイケルはノーベル賞を取るようになるか、連続殺人犯になるかのどっちかだって。」

彼女のそんな言葉を聴いたら、たぶん他の親は驚くだろうと言われて、彼女はため息をついた。そして数秒押し黙った。「そういう人には、私の代わりをやってみてから判断して欲しいです。」最後に彼女は言った。「何故って、判るでしょう、とても大変なんですから。マイケルを育てる事には、大きな喜びも幸福も無いんです。」

恐らくは、callous-unemotinal(無感覚非感情的)児童の行動を改めさせる事は可能であろうが、その根底にある神経的障害、例えば共感に欠ける事などを、治癒する事が可能かどうかは不明だ。ある、よく参照される研究では、暴力犯罪犯の再犯率を下げることに成功した囚人対象のセラピー・グループが、サイコパスの犯罪成功率を大きく上げてしまったと言うものがある。サイコパスが、後悔したり内省したりする振りをする技術を磨いてしまったのだ。それに関連した最近の論文は、反社会的児童の治療としてリタリン(Ritalin)を用いるのは危険であると推定している。何故ならリタリンは患者の衝動的行為を抑える働きがあるが、それは患者が、より残忍な秘密の復讐計画を立てるのを可能にしてしまうからだという。

べつの研究では、C.U.児童は成長するに従い、他人の感情に理解を示す振りをする技術を身につけている事を、研究員のマーク・ダッヅ(Mark Dadds)が発見している。「私達はこの研究報告を、『話の話をする事を学ぶ(Learning to Talk the Talk)』と呼んでいます。ダッヅは言う。「彼らは感情的共感は出来ません。しかし認識による共感が出来ます。他の人がどのように感じるか話せるのです。しかしそれに注意を払ったり感じ取ったりしている訳ではありません。」マイケルがセラピストを誤魔化し始めているのではないか、ポイントを稼ぐ為に特定の感情を持つ振りをしているのではないかと、アンが心配している時、彼女は恐らく自分で考えている以上に正しかったのだ。

しかしながら、Callous-unemotional(無感覚非感情的)児童を研究する殆どの研究者は、楽天的な見通しを持っている。正しい治療をすれば、行動を変えられるだけでなく、一種の知的倫理、単なる偽装工作で無いものを教える事が出来るのではないかと考えている。「もしその人に、感情的処理を行う機構が無い場合、それを教えることは不可能だろう。」ドナルド・ライナムは言う。「例えば糖尿病のようなものだ。誰も糖尿病を完全に治癒は出来ない。しかしもし、これらの子供が刑務所に入るほど暴力的にならないで済む事を成功とするならば、私は治療はうまく行くと考えている。」

フリックは更に先へ行く事を考えている。もし治療を充分早く始められるなら、脳を書き換えて、C.U.児童であっても、より大きな共感を育てられる可能性があると言うのだ。セラピーを通して、感情の認知(C.U.児童は他人の恐怖を感知するのが苦手だ)から黄金率(マタイ伝:他人にしてもらいたいと思うような行為をせよ)まで、全てを教え込むことが可能だと。誰もC.U.児童に対してこのような治療は施していない。しかしフリックは、ある初期の研究で、暖かい愛情のこもった親の接し方でC.U.児童の無感覚さを、時間をかけて減じることができた事例を指摘する。このような緊密な関係に最初抵抗していた児童でさえも減じられたのだ。

1月の段階では、ワッシュブッシュによる報酬対罰戦略の比較分析では、何らかの一貫性は見出せなかった。おそらく研究対象が少数過ぎたのだろう。この夏、彼はプログラムを1つのグループから4つのグループへと拡大する。全てのグループはそれぞれ、C.U.児童と、行為障害児童に分けられる。ワッシュブッシュは2つを比較する事で治療に対する反応の違いを評価する事が出来ると期待している。

マイケルについて言えば、プログラムが何らかの助けになっているかどうか不明だ。キャンプの最後の週に、彼はカウンセラーの腕に噛み付いた。いままでやった事が無い行為だった。ミゲルによると、家でのマイケルは、言う事を聞かない時のやり方が、より陰険に成ったと言う。「以前ほど叫んだりしなく成りました。」彼は私にそう言った。「自分のやりたい事をして、それについて嘘をつくように成ったんです。」

ミゲルは依然として、マイケルが自分と同じような成長過程をたどる事を期待している。

「時々、マイケルがやった事について、私にはその理由が判ったりするんです。」彼は肩をすくめながら言った。「私も同じような事をしましたからね。」その間にも彼はマイケルに、自分に出来る助言を与えている。「マイケルに言い聞かせようとしているんです。お前は他の大勢の人と一緒にここに居るんだ。皆それぞれやりたい事は違う。お前がそれを好こうが嫌おうが、慣れるしか無いってね。」

~~ここまで~~

次回更新は6月9日ごろになると思います。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ゾノシン

Author:ゾノシン
英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
広告
海外格安航空券ena 【イーナドットトラベル】 Hotels.com【海外・国内ホテル予約サイト ホテルズドットコム】 【限定募集】ヒアリングマラソン・ベーシックkikuzo! 特別お試し3カ月コース デル株式会社
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。