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シリア反乱軍従軍記

シリアに関する記事をUpします。

記事を書いたのはC・J・シバース(C. J. Shivers)さんです。元記事はここにあります。

反乱軍の様子を描写した記事です。

~~ここから~~

冷酷で狡猾な内戦下の反乱軍との暮らし

シリア、タル・リファート(Tal Rifaat)にて――シリア反政府戦闘グループの指揮官、アブドゥル・ハキム・ヤシンはゲリラの基地として接収した住居の敷地内へピックアップ・トラックを入れて止めた。

彼の戦闘員達は、シリア最大の都市アレッポ(Aleppo)入り口にある軍のチェックポイントへ、夜明け前に攻撃をかける命令を待っていた。兵士達は弾薬を受け取り、お祈りを済ませた。トラック爆弾の準備も殆ど終わっていた。

その時、指揮官は驚くべきニュースを受け取った。7月に同じチェックポイントで逮捕された彼の父親が、数分前電話してきて解放されたと告げてきた。父をアレッポから連れ出さなければならなかった。それも今すぐにでも。

「神は偉大なり!」兵士達は叫んだ。彼らはトラックによじ登り、兵器に弾込めすると、アクセルを踏み込んだ。殆ど人気の無い暗闇の道を突き進み、政府軍が占領する街、自分達が取り戻そうとしている街へ向かった。

ヤシン氏は運転中、物思いに沈んでいた。電話が自分と兵士達を罠にかけるための餌ではないかと悩んでいた。「政府はよくやるんだ。」彼は言った。「たいてい待ち伏せしている。」

彼は空っぽのトラックを先行させた。道路をチェックする為だった。しかしスピードは緩めなかった。

先週5日間、ヤシン氏と彼のグループ、タウヒードのライオン(Lions of Tawhid)は、自分達がバッシャール・アル=アサド大統領を倒す戦争の一翼を担って戦う間、ニューヨークタイムズ紙の2人のジャーナリストに、共に旅し、暮らす事を許可した。

このグループはアル=タウヒード旅団の配下に入る。アレッポ地方における比較的新しい組織で、自由シリア軍(Free Syrian Army)の旗の下に幾つかのグループが統合して戦う武装反乱軍の緩やかな連合体だ。

この複雑な社会の1つの戦闘集団から大きな全体像を掴み取ることは困難ではあるが、彼ら兵士達の活動や個人の物語、武器を取って立ち上がった市民達と、それに参加した何ダースもの脱走兵の混合体は、反乱に対するよく結晶化された景色を見せてくれる。彼らが獲得したモメンタムとゲリラ的エネルギーを見せてくれる。

戦争前、ヤシン氏は綺麗に髭を剃った会計士だった。彼は妻と2人の息子と共に静かな生活を送っていた。今、濃い髯を蓄え、銃撃戦の中でもストイックな静けさをたたえる人物である彼は、戦争を通して予想も出来なかったやり方で鍛えられてきた。

彼は何ダースもの迷彩服を着た武装兵とアレッポ近辺をさまよう。他の指揮官と攻撃地点を決め、空からの攻撃を避け、密輸業者や爆弾製造者と会って多くの兵器を集め、辻々で行われる激しい市街戦の中、最前線を順番に担当している。彼は日中寝て、夜戦うように成った。

彼の兵士達は、内戦を開始した国の断面図を見せてくれる。兵士達の中には、不動産会社の社員もいるし、農夫も数人いる。建設会社社員や、即席料理の店を持つ看護師もいる。彼らは政府軍の脱走兵と並んで戦っている。脱走兵たちは、かつては守る為に戦っていた政府を、今は倒さねばならないと言っている。

市民たちは、石を投げたり、猟銃を使ったりして戦い始めた。初期の頃の最も強力な武器は火炎瓶を発射するパチンコと手製爆弾だった。本職の兵士が加入するに連れ、彼らは突撃銃や機関銃、ロケット・プロペルド・ランチャーや手榴弾を手に入れ始める。彼らは今や分捕った装甲車を1台に戦車を2台持っている。

次第に数を増し強くなって行くにつれ、彼らは民兵としての規律、治安維持の役割、イスラム法、そして何よりも必要とされる戦場での冷酷さとあからさま狡猾さが混ざり合った1つの軍へと組織化されていった。

そして何よりも、彼らの殆どは戦いを欲している。アサドの政府と装備の整った軍を破壊するあらゆる方法を探している。彼らは自分たちが勝つと言う自信によって強く結びついており、今が彼らの時代であるという感覚を漲らせている。

抗議活動から武装闘争へ

農業平野に位置する人口約20,000の都市、タル・リファールの人々にとって、反乱は平和的デモンストレーションの段階からむき出しの戦争へと移行した。この事態は2011年初頭に抗議活動として始まったものだった。政府はそれを押さえ込もうとした。

去年夏の中旬、アブドゥル・ハキム・ヤシンは10人に満たない住人と共にゲリラ部隊を組織した。彼らは4丁の散弾銃と1丁の猟銃で、膨大な内務警察と諜報組織、数十万の兵士を抱える軍に抵抗を始めた。

去年9月、治安部隊は鉄道車両基地に集まった群集に発泡して追い散らした。83名が負傷した。その内の1人32歳のアーメド・モハンメド・ホメドは死亡した。ヤシン氏によると、その時以来、戦争に成ったことを悟ったと言う。「タル・リファートの全ての者はチームを作ったんだ。」彼は言う。

ガンマンが待ち伏せを始めると共に、機械工とか機械好きの人間も働き始め、爆発物を爆弾に詰める方法を学び始めた。政府による弾圧は、タル・リファートやその他の場所での反乱を誘発した。

この春、軍がタル・ラフィートを制圧するに従い、今や戦いに慣れた街の住人は、街を殆ど空にした。政府軍兵士は建物に落書きをした。「アサドか無か」。そのうちの1つはそう書いてあった。

反乱軍はそれに返事を書いた。「我々は神にしか跪かない。」

古くからのゲリラ戦の作法に従い、初期のメンバーは、互いに関連しあった戦闘グループに分かれる事にした。そして脱走兵を受け入れ始めた。シリア軍歩兵、ジャマル・アブ・ホウラン(Jamal Abu Houran)がヤシン氏の下に加わったのは、そんな時だった。彼は自分の姓を明かしていない。

誇り高いシリア市民であり、喜んで徴兵に応じた兵士ジャマル・アブ・ホウランが反政府ゲリラになった旅路は、若い愛国者が、暴力が周りで勃発する中、自分の国を再発見する苦難に満ちた道のりだった。

彼はホムスのアル・バース大学(Al Baath University)でアラビア文学を学ぶ学生だった。彼はそこで、パレスチナ人詩人のマフムード・ダーウィッシュ(Mahmoud Darwish)を学び、中東におけるイスラエルや西洋軍の活動に反対するようになった。2年前彼は軍隊に呼び出され、強制的に兵役に就かされた。彼は喜んで本を置き、歩兵兵器や戦術の訓練を受けた。

革命が広がり、政府がそれを押さえ込む為に次第に暴力に頼るようになるにつれ、ジャマル・アブ・ホウランは自分たちの軍隊のする事に落ち着かなくなり始める。彼の兵役は今年初め終る予定だった。しかし軍は彼の同意無しに兵役を延長し、彼に歩兵小隊の指揮をとらせた。次第に数を増す反乱軍と戦うのに、軍のマンパワーを維持する必要にせまられてとられた緊急処置の一環だった。

しかしその政策はうまく行かなかった。4月初頭、ジャマル・アブ・ホウランはホムスの友人に電話をかけた。友人は兵士が11歳の少女をレイプしたと話した。彼の不満は今や嫌悪感に成った。

「軍は国を守り、西洋が中東でやっているプロジェクトに抵抗して戦うものだと僕は思っていました。」彼は言った。「あの事件の後、僕が出した結論は、自分たちが奉仕している軍は国民を守っていないと言う事です。」

ジャマル・アブ・ホウランはスカイプを使ってタル・リファートの活動家と接触した。活動家は彼に脱走して近くの村へ行く事を勧めた。車がその村で彼をピックアップした。直ぐに彼はゲリラの秘密オフィスへ連れて行かれる。彼はそこで、自分は武器に精通していて反乱に加わりたいと思っているのだと活動家に話した。

活動家はヤシン氏に電話し、ヤシン氏は直ぐに彼の前に現れた。ジャマルは彼の新しい指揮官の最初の言葉を覚えている。「君は我々の兄弟だ。」彼は言った。「そして君の血は私の血よりも尊い。」

それに対するジャマル・アブ・ホウランの返答は彼の人生を新しい方向へ押しやった。「私は神に祈ります。貴方のような人々を守る力を授けたまえと。」彼は言った。その言葉が彼の宣誓と成った。

彼は味方する陣営を換えた。

それは4月の半ばだった。その当時自分の武装グループを形作ったばかりのヤシン氏は、配下に9人の戦闘員を抱え、軍はアレッポ郊外で自由に行動していた。ジャマル・アブ・ホウランの初期の仕事の一つはリクルートだった。兵士の説得は戦争を追行する手段でもあった。より多くの兵士を脱走させれば、軍を弱体化させられ、自分たちの側を強化できる。

「軍で知っていた人間に呼びかけ始めました。」彼は言う。「12人を脱走させる事が出来たんです。」

戦闘グループが大きくなるにつれ、ジャマル・アブ・ホウランの役割と地位も上がっていった。彼はヤシン氏が信頼する軍曹の1人で、攻撃の時は小さなグループの指揮を取り、戦闘グループの兵器の管理もしている。彼は厳格に兵器を配り、回収し、台帳を注意深く付ける。彼が訓練を受けた軍での生活と似ていた。

チェックポイントの情景

夏になって、脱走兵の数が増え反乱側が寄り効率的に戦うようになると、軍による支配力は弱まってきた。地域の様々な戦闘グループは政府軍の殆どを郊外から追いやった。軍の部隊は、タル・リファート近くのミナク空軍基地(Minakh air base)およびアレッポ近辺の砲兵学校に駐留していた。

主要な戦闘は市街地に移動し、そこではヤシン氏の部隊を含む数多くの戦闘グループが、黒いアル=タウヒードの旗の下に集まっている。それはこの地方の種々雑多な反乱部隊を統合し組織化しようとする比較的新しい旅団だ。

新しい組織で協力が進むにつれ、ヤシン氏の部隊も市街戦の最前線をローテーションで担当するようになった。

8月中ごろ部隊は最前線から交替した。街の北側道路沿いにあるチェックポイントの破壊攻撃を地区の革命軍評議会に割り当てられ、その準備の為、タル・リファートへ戻った。

作戦の為にアル=タウヒードは情報を集めた。チェックポイントは2台のロシア製装甲車、B.M.P.を持ち、近くの建物の中の兵士30人がそれを援護している。兵士達は土嚢で守られ、近づく車両はそのためにスピードを緩めてジグザグに進むことを強いられる。

そして近くの病院に駐屯する兵士50名がそれを見守っている。そしてパレスチナ人家族が大勢、チェックポイントの側に住んでいる。こういった家族は、自分達を何十年も受け入れているアサド政権に忠実であると、反乱軍は考えている。反乱側はパレスチナ人の土地に侵入できていない。

さらにチェックポイントは空軍に守られている。空軍はヘリコプターや地上攻撃ジェットを備えている。迫り来るチェックポイント攻撃は困難なもので、反乱軍側に多くの犠牲者が出る事が予想されていた。

それでも反乱軍側はチェックポイントの破壊は重要だと考えていた。政府側がチェックポイントを支配する限り、街への出入りは限られる。兵士達は道を行き来する全ての人間を精査でき、誰でも好きな人間を逮捕できる。

ヤシン氏は個人的にもそれを知っている。7月に父のジャマルが正にその場所で逮捕された。息子が武装グループを指揮しているのを政府が知っていてやったのではないかと彼は疑っていた。父は殺されるだろうと彼は思っていた。チェックポイントは破壊されるべきだと彼は言った。

先週初め、ヤシン氏は部下を建物に残して、指揮官会議に出席するために出かけた。自分が戻ったとき攻撃できるよう準備しておけと彼は命令した。彼は夜中少し前に戻り、攻撃は延期されたと伝えた。兵士達は落胆した。

次の日の夕方、ピックアップ・トラックが若い捕虜を連れてきた。兵士の話では、アブ・ヒラル(Abu Hilal)と呼ばれるその男は、政府に忠実なシャビハ民兵(shabiha militia)の一員で、数マイル離れた小さな町、マーラ(Maara)で反乱軍に捕まったと言う。

アブ・ヒラルはヒョロっとした男で頭を剃っていた。兵士たちが回りに集まると彼はたじろぎ、身を縮めた。彼には何度も叩かれた痕があった。左腕は打撲で腫れ上がっていた。彼はビッコをひきながら石段に行き座り込んだ。肉体的にも精神的にも打ちのめされているようだった。

兵士たちのシャビハ民兵への憎しみは爆発寸前だった。1人の兵士、アンター(Antar)が前に出て、アブ・ヒラルを守る為に、野次を上げる兵士達と彼の間に割って入った。彼は捕虜を台所へ連れて行った。台所にはディーブ・メルダオウン(Deeb Meldaoun)が居る。彼は訓練を受けた看護師で、兵士たちの料理人兼衛生兵として働いていた。彼は捕虜の服を脱がせて傷を調べた。

紫色の打撲傷がアブ・ヒラルの背中と左足を覆っていた。

ヤシン氏はドアの所に立って、捕虜にリラックスしろと言った。

「シャワーを浴びるか?」彼は聞いた。

「いえ、結構です。」アブ・ヒラルは弱弱しく言った。

「良く寝ることだな。」ヤシン氏は言った。

兵士達はアブ・ヒラルにパンとジャムを与え、タバコも与えた。そして解放されたあと自由に移動できるようにIDカードを探しておいてやると彼に言った。次第に兵士達は彼への興味を失った。彼は台所の床に屈み込みタバコを吸った。

ヤシン氏は隣の自分のオフィスで考え込んでいるようだった。彼は何本もタバコを吹かした。アブ・ヒラルは反乱が起きる前、政府の刑務所に収監されていたと彼は言った。そしてシャビハ民兵へ助力するために監獄から出されたのだと。反乱側の話しでは、彼は革命軍の暫定法廷で、レイプと6件の殺人に関与した事を告白したと言う。法廷は彼に死刑を宣告した。

ヤシン氏は男の処刑に反対したと言う。彼は革命軍にたのんだ。アブ・ヒラルを彼の元に預けてくれれば取引に使えるかも知れない。おそらくは捕虜とか、兵器購入用の身代金との交換に。

「あいつは悪人だ。」彼は言った。「しかし革命の為に利用できるかも知れない。」

予期せぬ恩赦

その夜、アブドゥル・ハキム・ヤシンは、チェックポイント攻撃に関する又別の会議に出ていた。ジャマル・アブ・ホウランは武器弾薬を支給した。兵士達は祈った。

ヤシン氏は、トラックの警笛を鳴らしながら急いで帰ってきた。彼は父から電話があったと叫んだ。予想もしなかった事に監獄から釈放されたのだと。父を取り戻す為に急がねばならなかった。兵士たちは歓声を上げた。トラックによじ登り南へ、アレッポの方角へスピードを上げた。

先導するトラックでヤシン氏は、先行させた空荷の輸送トラックに乗っている市民服を着た友人を何回も呼び出した。彼は罠を予想していた。先行するドライバーに、父が実際に開放され罠が無いことを確認させたかった。そうすれば兵士達は後に続く事が出来る。

彼は市の郊外で1人の男を呼び出す事に成功した。その男はジャマル・ヤシンと一緒だったと報告していた男で、北に向かっていた。

その時一瞬、ヤシン氏はゲリラの指揮官では無く、1人の息子になっていた。彼は電話を切った。彼は無言で運転しながら、そのニュースが体に染み渡ってゆくのに任せた。そして彼は言った。「神は偉大なり。」

人気の無い道路の暗闇の中で、別のトラックが近づいて来て止まった。ジャマル・ヤシンが降りてきた。彼は背筋の伸びたガッシリした男で頭を剃っていた。怪我は無いようだった。

兵士達は最初のピックアップ・トラックの助手席、タル・リファートへと運転する息子の隣へ彼を急がせた。

ジャマル・ヤシンの話では拷問は受けなかったと言う。しかし監房はとても狭く、詰め込まれていたので殆ど寝れなかった。

アブドゥル・ハキム・ヤシンは自分が不安に思っていたことを認めた。「待ち伏せだって99%確信していたんだ。」彼は言った。

父はそれを聞いて、優しくたしなめた。「私が待ち伏せの為にお前を呼び出すと本当に思っていたのか?」彼は言った。「仮にやつらが喉を掻っ切ると脅していたとしても?」

「父さん、神かけて誓うが、とんでもないプレッシャーに晒されていたんだ。」アブドゥル・ハキムは言った。

「力を抜け息子よ、もう大丈夫だ。」父は答えた。

長いこと計画していた攻撃

アブドゥル・ハキム・ヤシンは父を兄弟の家の前で降ろした。兵士達は外に立ち、再会に興奮しながら神への感謝を叫んだ。ヤシン氏はピストルを抜いて空へ向けて弾を空にした。彼は笑っていた。

「さあ行こう。」彼は言った。

まだチェックポイントの攻撃が残っている。しかしヤシン氏は最初にお祝いがしたかった。基地に帰った彼は兵士たちにアイスクリームを配った。兵士達は堪能した。美味しさに皆が驚き、口々に褒め称えた。

「父にはもう会えないと思ってたんだ。」ヤシン氏は彼らに語った。

彼はその場を辞すると、自分のオフィスへ戻って仲間の指揮官と、差し迫る攻撃の最終的な詰めをした。2人の男は手書きの地図の上に屈みこんだ。

攻撃は直ぐにも始まるとヤシン氏は言った。夜明けの1時間前に始める予定だった。殆どの政府軍兵士が寝ているであろう時間だ。兵士達は、つかの間の休息やお祈りの為に部屋へ戻った。

捕虜のアブ・ヒラルは壁に寄りかかって見ていた。

出発の直前、彼は外に連れ出されて目隠しをされた。そしてピックアップ・トラックの後部座席に座らされた。「今晩、捕虜交換をする。」ヤシン氏は言った。

彼は建物の後ろの壁に開いた大きな穴へ急いで歩いき、フラットベッド・トラックへ近づいた。荷台には手製爆弾と共に分厚いパイプの束が載せられている。電気コードが何本も最後部から出てトランクへと繋がっていた。遠距離から爆破できるように配線されたトラック爆弾だった。

「300キログラムだ。」ヤシン氏は言った。

彼は自分の計画の殆どを明かしてくれた。反乱側は迫り来るチェックポイントでの戦いで必要な重火器を持っていない。それで数人が平服を着てトラック爆弾を運転し、チェックポイントの近くで爆発させる。それを攻撃開始のシグナルとするのだ。

しかし1つ問題があった。タウヒードのライオンは兵士たちを自爆攻撃に使う事を良しとしていなかった。

2人の兵士がトラックへ燃料を補給し、看護師のメルダオウン氏が藪から枝を取ってきて爆弾の上に積み重ね、見えないようにした。

やがて実際の計画が浮かび上がってきた。計画には捕虜のアブ・ヒラルが含まれている。彼を解放すると言う約束は嘘だった。兵士達はチェックポイントの側で、彼をトラック爆弾の運転席に座らせて、捕虜交換の為に運転して前へ進めと言うつもりだった。

セメント業者でヤシン氏の副官の1人、そして看護師の兄弟であるアデル・メルダオウンがフラットベッド・トラックを運転し、未舗装の小道からメインロードへと出て行った。ピックアップ・トラックは兵士達を乗せて既に出発していた。

「ハラブ(Halab)」メルダオウン氏は、アレッポの古いアラビア語名を声に出した。

彼は兵士達に追いつくためにアクセルを踏んだ。コンボイはアブ・ヒラルを乗せて行ってしまった。目隠しをされ、殆ど間違いない死へ向かって。

ゲームの運命

日が昇って直ぐ兵士達は帰ってきた。彼らの足取りは重く、服は綺麗で血も付いてなかった。戦闘をした後には見えなかった。何人かは首を振り、顔を歪めていた。そして武器をジャマル・アブ・ホウランへ返しに建物の中へ入って行った。

指揮官がトラックから出てきた。長い顔をして疲れた目をしていた。殆どの政府軍兵士は寝ていた。何人かは外のテーブルでカードをしている。彼の部下達は配置に付き、最終の瞬間に向けて予定通りの行動をしていた。

「我々はアブ・ヒラルに『行け、運転してゆくんだ。お前の父親があそこで待っている。もう悪いことはするなよ。』と言った。」ハキムは言う。「とても嬉しそうだった。トラックを運転して行ったよ。」

アブ・ヒラルはチェックポイントでトラックを止めた。アブドゥル・ハキム・ヤシンは遠隔発火装置のボタンを押した。そして650ポンド以上の爆発物が炎を上げて爆音を轟かせるのに備えた。それは兵士達が前進し敵を掃討する合図になるはずだった。

何も起こらなかった。

彼はもう一度ボタンを押した。

トラックは爆発しなかった。

ヤシン氏の推測ではチェックポイントは信号をブロックする妨害電波を出しているのだろうと言う。

今、彼は事務所に座って、失敗に落胆しながら、自分自身の家族が無事でいることに驚いている。彼は疲れていた。彼が死ぬと予想していた全ての人々、彼の父親、彼の捕虜、兵士達にチェックポイントは、全て生きながらえていた。

「これが、」彼は言った、「ゲームの運命なんだろうな。」

都市での対決

数時間後、再び迷彩服を来たアブドゥル・ハキム・ヤシンは兵士達を率いてアレッポへ向かった。彼らのチェックポイントの担当は終わった。再び前線へ帰らなければならない。

指揮官はチェックポイントを大きく迂回した。彼は別の回り道を選んだ。トラックは大きく広がり、目一杯のスピードを出していた。人目に身をさらす事を最小限にし、ヘリコプターやジェット機からの攻撃を避ける為だ。

都市に着いてからは建物を縫って進み、反乱側が支配する一群の建築物に到着した。彼らは車を木陰に隠し、素早く中に入った。そして街を逃げ出した警察長官が残していったアパートに移動した。そこが暗くなるまでの待機場所だった。

彼らはそこで政府側が流すテレビニュースを見ていた。ニュースキャスターが首都ダマスカスの爆弾攻撃を報道していた。警察長官のカウチに寄りかかり、裸足になって、1晩寝ずに居たため眠そうにしながら、ヤシン氏は面白がっていた。彼のユーモアは戻っていた。彼はクスクス笑った。「きっとアブ・ヒラルは、はるばるダマスカスまで行ったんだろうな。」彼は言った。

彼の兵士達はアパートを捜索して回った。1人がエアコンのリモコンを見つけて点けた。他の者は家族の海賊版DVDコレクションを捜索した。大勢の者が、家へ持ち帰る書物を荷造りしていた。他の者が長官のストーブで食事を料理し、長官のカップで自分の指揮官へお茶を出した。

1人の兵士がヤシン氏の所へ来た。彼は長官の結婚アルバムを持ってきた。ヤシン氏はアルバムをゆっくりと、1ページずつ眺めた。そして結婚式に出席した女性の服が写っているページで止まった。その服装は彼の伝統的な田舎の趣向には合わなかった。

「服装が少し短すぎるように私には見える。」彼は言った。

直ぐに彼は自分の敵のカウチで眠りに着いた。アル・タウヒードから来る次のミッションの為に休みを取った。

その夜、前線に戻るのを待つ兵士達がまどろむ間、外では、政府のヘリコプターや軽武装ジェットが市街地に向けて機銃掃射やロケット攻撃をしていた。榴弾砲や戦車の砲火が散発的に爆発している。兵士達はあまり気にしていないようだった。

そして又、新しいサイクルが始まる。ヤシン氏は日没前に目を覚ました。彼はラマダーン中だが断食していない。素早く食事をして他の指揮官に合うために出て行った。彼は暗くなってから指令を持って帰ってきた。そして部隊を幾つかのチームに分けた。彼の兵士達は順番に弾薬を受け取り、コンボイを作ってアレッポの街を通り抜け、炎を上げる一角へと向かった。

彼らの話だと、その場所で別の反乱軍が政府側のコンボイを待ち伏せ攻撃していると言う。車両を破壊し多くの政府軍兵士を罠にかけた。ヤシン氏の兵士達は他の反乱軍を助け、政府軍兵士の逃げ道の一つをふさごうとしている。

近づくにつれ銃弾が飛んできた。コンボイは産業用建物の敷地に入った。倉庫に寄せて止めると、兵士達はトラックから飛び出し散開した。

ヤシン氏はオレンジ色の炎に照らされながら見ている。敵は近くに追いつめられていて、榴弾砲を敷地に向けて放っている。着弾する度に激しく爆発していた。彼は身動ぎもしていない。

1機のジェットが現れて上空を旋廻し始めた。月の無い夜空に、その姿は殆ど見えなかった。エンジン音だけが聞こえてくる。直ぐに攻撃が始まった。敷地に向けて降下すると空対地ロケットを2発放った。

ジェットは上昇し旋廻し帰ってきて再びロケットを発射した。ロケットは敷地の端に着弾した。

多くの紛争の中でも、これは気力を挫かれる不利な状況だろう。反乱軍側は飛行機を見ることが出来ない。例え見えたとしても効果的に反撃する方法が無い。パイロットは自由に攻撃できる。道路の反対側の火事が放つオレンジの光に助けられてもいる。その光は兵士達が隠れる敷地の外形を照らし出している。

しかしロケットが着弾しても、タウヒードの兵士達は殆ど注意を削がれていないようだった。彼らは政府軍兵士が近くに姿を現すのを待っている。1日1日と敵が弱くなり、自分達反乱軍が力を集めている事を確信している。

爆発の度毎にヤシン氏、戦争が彼に与えた役割と人生をこなしてきた1人の会計士は、自分の無線機のスイッチを入れ、兵士の様子をチェックしていた。彼の周りの者は皆、煙が漂う暗闇の中で屈み、兵器を構えて命令を待っている。あるいは、既に死んだと彼らが考える政府に対する行動を待っている。

~~ここまで~~

次回更新は9月8日ごろになると思います。
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Author:ゾノシン
英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

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