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ブラックホールにまつわるファイアーウォール・パラドックス

理論物理学関連の記事をUpします。

記事を書いたのはデニス・オーバーバイ(Dennis Overbye)さんです。元記事はここにあります。

ブラックホールとアインシュタインの相対性原理が抱える矛盾についての話です。

~~ここから~~

ファイアーウォール・パラドックスに内包されるブラックホールの謎

今度こそ本当にアインシュタインは間違えたのかもしれない、と彼らは言う。

もし、人がブラックホールに飛び込んだらどうなるか、世界の物理学者の間で熱のこもった議論が持ち上がっている。ブラックホール、すなわち、物質やエネルギー、そして光でさえをも飲み込んでしまう恐るべき重力の怪物にだ。もちろんその人は死んでしまうだろう。しかしどのようにしてだろうか?天文学者やSF作家が何十年間も言ってきたように、怪物的重力によって細かい埃よりも小さくなってしまうのか?あるいは、皆が注目する新しい計算が指し示しているように、エネルギーのファイアーウォールによって焼き尽くされるのか?

この陰鬱な響きを持つ議論が去年1年間で、膨大な論文、ブログ記事、ワークショップを生み出している。この議論に賭けられているのはアインシュタインの権威とか、私たちが使っているiPhoneの有効性とかでは無い。賭けられているのはむしろ、私たちが宇宙を理解する上での基盤となっている一般相対性理論、重力の理論だ。あるいは長年にわたって築き上げられてきた幾つかの基本的な自然界の原理を、おそらくは捨て去らねばならないかも知れないと言うことだ。しかし物理学者たちは、どちらを捨てねば成らないか合意に至っていない。そして彼らはほとんど毎週のように立場を変えていて、回答は今のところ視界に入っていない。

「これについて僕はヨーヨーみたいに揺れ動いている。」この分野で数多くの本を書いているスタンフォード大学のレオナード・サスキンド(Leonard Susskind)は言う。彼はしばし黙ると付け加えた、「ここ数ヶ月は考えを変えて無いんだけどね。」

カリフォルニア大学バークレー校の理論物理学者、ラファエル・ブソー(Raphael Bousso)は言う、「こんなに驚いたことは無いよ。全く予想がつかないんだ。」

あなたは不思議がるかも知れない、カレンダーにブラックホールと遭遇する予定でも入って無い限り、いったい誰が気にするんだと。しかし近代科学における幾つかの教義とアインシュタインの理論が、この「ファイアーウォール・パラドックス」として知られる問題には賭けられている。

「この問題は、私たちの重力に対する理解に何かが欠けている事を示している。」この騒ぎを呼び起こした理論物理学者の1人、カリフォルニア州サンタバーバラにあるカブリ理論物理学研究所(Kavli Institute for Theoretical Physics)のジョセフ・ポリチンスキー(Joseph Polichinski)は言う。

このウサギ穴の中に潜んでいるのは、現在物理学に存在する活きの良い魔法のような謎の数々。ブラックホールとか、時間と空間をショートカットするワームホール(wormhole)とか、隔てられた量子の間の気味悪い振る舞いとし知られる量子もつれ(Quantum entanglement)とかだ。量子もつれは、何光年も離れた量子どうしが直接的に関連し合っている現象をさしている。このウサギ穴を探検して得られる報酬は、おそらくは幾つかの予測しがたい成り行きの末に適切に得られるであろう新しい理解、何故私たちは時間と空間がある宇宙に住んでいると考えているのか、と言ったことに対する新しい理解だ。いずれにしても、もしアインシュタインが100年前にニュートン宇宙のもつ論理矛盾に関わっていなければ、今私たちは、時間合わせに彼の一般相対論を頼りにしているGPSシステムをポケットに入れることはできなかった。

落ちてゆく体

ブラックホールは、アインシュタインの理論で導き出される最も極端な形態だ。アインシュタインの理論は、体重の重い人が横たわるとマットレスが沈むのと同じように、物質やエネルギーは時空の形態を歪めると説明している。一つの場所に、あまりにも多くの物質とエネルギーが集中すると、空間が沈みすぎてしまい、その中の物質は、あたかも奇術師のコートに入ったかのようにして消えてしまう。特異点として知られる無限の密度を持つ一点へ向かって終わりの無い縮退を続けるのだ。1916年にこれを思いついたとき、アインシュタインはこの考えを馬鹿げていると思った。しかし今日、宇宙にはそのような暗黒の怪物が散りばめられている事で天文学者は合意している。その中には、ほとんど全ての銀河系の中心部に巣くう彷徨える野獣たちも含まれている。その野獣たちは、太陽の数百万倍、あるいは数十億倍の質量をもっていて、そのほとんどは死んだ星が縮退してできたものだ。

一般相対論は、後にアインシュタインが「最も幸福な考え」と呼んだものを基礎にしている。自由落下している人間は自分の重さを感じることは無いと言う考えだ。この考えは単純に等価原理(equivalence principle)として知られているもので、真空はどのような場所でも、誰にとっても同じように見えることを言っている。

この原理によって導かれる1つの結論は、宇宙飛行士がブラックホールに向かって落ちて行って、事象の地平面(event horizon)として知られる不可逆地点を過ぎても、何も特別なものは感じないだろうと言うものだ。バンジージャンプで飛び降りた人のように、彼は底に到達するまで無重力状態を感じ続けるだろう。その長さはブラックホールの大きさによって、数秒間から数年間までさまざまだが、彼はその間に、潮汐力によって蕎麦のように引き伸ばされ、小さな粒子へと崩壊してゆく。事象の地平面においては記録上、何も「劇的」なものは起きない。もう故郷に帰れないことを知ると言う知的トラウマに反して、少なくとも物理学的な意味においては、何も劇的なことは起きないのだ。人間であれ物質であれ、中に入ったものは、無限の密度へと崩壊して消えてゆく。それがブラックホールに対する伝統的見方だ。

しかしながら、1974年に物事はより興味深いものになってゆく。英国の宇宙学者スティーブン・ホーキング(Stephen Howking)は、素粒子の振る舞いを説明するパラドックス的な量子力学の法則を考慮に入れると、ブラックホールは粒子や放射線を漏れ出させ、最終的に爆発してしまうことを示し、世界を唖然とさせた。もっとも、恒星ほどの質量を持つブラックホールではおそらく、無くなるまでに宇宙の年齢よりも時間がかかるだろうが。

そこには、一般相対論が示す、宇宙を湾曲させる重力と、物質内部の顕微鏡的振る舞いを説明する量子論を組み合わせることで成し遂げられるブレークスルーが存在した。しかし同時に、大きな引っ掛かりも存在したのだ。ホーキング博士はブラックホールからの放射は完全にランダムであると、何が落ちて行ったのか知らせる情報は何も含まれていないと結論付けた。ブラックホールが最終的に爆発すると、全ての情報は永遠に宇宙から失われてしまう。「神は宇宙に関してサイコロを振っているだけでは無い、」1976年にホーキング博士は、量子論の持つランダム性へ向けたアインシュタインの有名な疑念への反論のなかで述べた、「神は時としてサイコロを見えない場所で振っているのだ。」

素粒子学者は反対の叫びを上げた。この理論は、情報が常に保存されると言う、近代科学と量子論の基本的教義に反しているからだ。例えば本を燃やす炎や、煙に含まれる物質から、その本が聖書なのかカーマ・スートラ(Kama Sutra:古代インドの性愛論書)なのかは見分けられるはずだ。同じことはブラックホールで起きる色々な出来事においても真実であるはずだと物理学者は主張する。30年におよぶ論争がこの時始まった。

2004年、最終的に新聞の1面を飾るニュースでホーキング博士は自分の間違いを認め、掛け金を支払った。

ファイアーウォール・パラドックス

しかしながら現在、数人の物理学者が発言している。ホーキング博士の敗北宣言は早すぎたのではないかと。「彼にはそうするだけの理由があった、」ポルチンスキー博士は言う。「しかし彼は間違った理由であきらめてしまったんだ。」ブラックホールから正確にどうやって情報を引き出せるのか考え付いた人間は誰一人いないと彼は説明する。

それこそがサンタバーバラに拠点を構える4人の研究者の仕事だった。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の3人、アフメド・アルムヘイリ(Ahmed Almheiri)、ドナルド・マロルフ(Donald Marolf)、それにジェイムズ・サリー(James Sully)、そしてカブリ研究所のポルチンスキー博士は、1年前にこの仕事に取り掛かった。メンバーの頭文字をとってAMPSと呼ばれているこのチームは、既知の物理法則に従って考え進むと矛盾にぶち当たることを発見して驚いた。ファイアーウォール・パラドックスだ。

彼らの計算は、ブラックホールから漂い出てくる情報を捕らえることは、他のケースでは矛盾の無いアインシュタイン時空と、その境界面である事象の地平面において、両立しなくなることを示していた。その場所には真空の中に不連続が存在しており、それ自身がエネルギーを持った粒子である「ファイアーウォール」が、ブラックホールの直ぐ内側に待ち構えているように見える。

ブラックホールに入ると焼き尽くされるなどと言う事態は、何も劇的なことは起きないとするアインシュタインの断言と確実に矛盾する。もしこれが本当なら、ブラックホールに飛び込んだ人間は、バンジージャンプの底に近づくはるか前に死んでしまうことになる。ファイアーウォールの存在は、一般相対論に従えばただの空間である地平面が、特殊な場所であることを意味しており、それはアインシュタインの理論、すなわち彼の重力理論と一般相対論に基礎を置く近代宇宙論をひっくり返すものだ。この考えは科学者に、ブソー博士が呼ぶところの「地獄からのメニュー(menu from hell)」を提示した。もしファイアーウォール論が正しければ、近代物理学の核心部分に横たわる3つの概念の1つが間違っていることになる。すなわち最終的に情報が失われてしまう、あるいはアインシュタインの等価原理が間違っている、あるいは素粒子と力がどのように相互に影響しあうかを説明する場の量子論(quantum field theory)が間違っているか修正が必要である、その内のどれかだ。どれか1つでも捨て去るのは革命的な話、又は唖然とするような話、又はその両方なのだ。

ポルチンスキー博士はこの結果に非常に驚いた。「こんな単純な問題はすでに考えられていて解決済みだと思った」彼は言う。問題をつぶそうとしてサンタバーバラの同僚たちと話し合った後、彼は、ブラックホールと情報に熟練した科学者であるスタンフォード大学のサスキンド博士にe-mailした。サスキンド博士が何か間違いを指摘してくれると思いながら。

「だけど、信じられない面持ちのまま1~2週間過ぎてみると、」ポルチンスキー博士は言う、「彼も僕らと同じくらい困惑してしまったんだ。」

サスキンド博士は言う、「論点ははっきりしていた。でも、誰もどう考えたら良いか判らなかったんだ。」

量子論の宣言

ファイアーウォール論は、量子物理学が持つ最も奇妙な側面の1つ、量子もつれ(entanglement)と呼ばれる振る舞いに依存している。アインシュタイン、ボリス・ポドルスキー(Boris Podolsky)そしてネイサン・ローゼン(Nathan Rosen)が1935年に指摘したように、量子論は1組の粒子がある関係性を持つことを予言していた。それは、どちらか一方の粒子の性質、例えばスピンの方向とかを測定すると、その結果は直ちにもう一方の粒子に影響を与えるというものだ。たとえその粒子が数光年離れていたとしても。

アインシュタインはこの「距離を隔てた奇妙な振る舞い」を量子力学のもつバカバカしさを示唆するために使った。しかしそのような実験は今日、研究所で毎日のように行われている。しかしこれで、光よりも早くメッセージを送ることは出来ない。何故なら、この関係性は二つの検体をつき合わせて個別の結果を比較しない限り判らないからだ。しかしこの現象は、量子計算とか暗号学において重要な役割を担っている。そしてこれは、ブラックホールから出てくるホーキング放射において、情報がどのように記録されているかを説明していることが判明している。

ブラックホールから放射される2つの粒子を考えてみよう(仮に2つの粒子をボブとアリスと呼ぼう)。ボブははるか昔に飛び立った、放射が始まったばかりのころだ。量子もつれの理論に従えば、ブラックホールがその放射した物質の情報を保持しつづけているなら、すでに放射されたボブは、現在放射されたばかりのアリスと関連していなければならない。

しかしこのシナリオは別の種類の関係性と競合しているのだ。ブラックホールの境界線、事象の地平面を挟んで別々の側にいる粒子同士の関係性と競合している。もし空間がアインシュタインが仮定した通りにスムーズであるとするならば、そしてもし場の量子論が正しいとするならば、アリスは別の粒子、ブラックホールの直ぐ内側にいるテッドと関係していなければならない。

しかし場の量子論は乱雑な関係性を許していない。量子情報の言語に従えば、アリスはボブかテッドのどちらかとしか結婚できない。両方はだめだ。仮に2度目の結婚が、私たちのほとんどが見ることの出来ないブラックホールの内側で行われたのだとしてもだ。

アリスは宇宙を説明する原理と調和していなければならないと、ポルチンスキー博士は説明する。「ちょうど私たち自身がそうであるようにね。仮に私たちが宇宙の地平面の内側にいるのだとしてもだ。」

そしてこの怪しげな煙は、コーヒーとか黒板のチョークとかからエネルギーを受け取りながら、去年いっぱい、AMPSグループのコンピュータから立ち上り続け、心の中にある量子加速器からも立ち上り続けた。ファイアーウォールは在るのか無いのか?情報は保存されるのか無くなるのか?アインシュタインは最終的に間違えていたのか?もし仮に私たちが研究所にブラックホールを所有していたとしても、実験は助けにならなかった。何故なら、想像上のファイアーウォールが仮に存在していたとしても、安全に見ることが出来ない内側の場所にあるからだ。

この冬のファイアーウォール・ワークショップの場で、ブラックホールから出る情報のランダム性に関してホーキング博士から掛け金をまき上げたカルテックの理論物理学者、ジョン・プレスキル(John Preskill)は宣言した。物理学者は40年前の地点に戻ってしまったと。

地獄からのメニュー

ブソー博士は、AMPS論文に対する最初の自分の反応は、「おいおい、冗談言ってるんだろ」と言うものだったと話している。彼は付け加えて言った、「あらゆる人が、何かしら悲痛なステージを通過しているさ。」

去年1年間で約40篇の論文がファイアーウォールに捧げられ、さらに多くの論文がこれから発表される予定だ。プリンストン大学のダニエル・ハーロウ(Daniel Harlow)と、マクギル(Mcgill)大学のパトリック・ハイデン(Patrick Hayden)は、この問題は観念上のものに過ぎないと示唆した。アリスとボブが関連していることを確かめる計算には宇宙の年齢ほどの時間がかかり、その間にブラックホールは蒸発してしまい、その中に入ることも矛盾を検証することも不可能になってしまうのだからと。

それ以外の論文については、ブソー博士が言うところの「地獄からのメニュー」のどちらを選ぶかは、論じている人間次第だ。

ある意味、量子場理論をあきらめてしまう、すなわち、ブラックホールの重力に引っ張られている誰かにとって、何も無い空間がどのように見えるかを説明する理論をあきらめてしまうのが、最も簡単な道であるようだ。結局のところ、現れたり消えたりする「仮想」粒子だとか、気味の悪い量子もつれとかを含む量子理論は、すでに充分奇妙なのだ。その一方で、今までファイアーウォール議論を遠くから眺めていたプリンストン高等研究所(Institute for Advanced Study)のエド・ウィッテン(Ed Witten)が言うように、「量子場理論は世界の動き方を規定している」ものなのだ。一年前にもこの理論は重要な勝利をあげた。CERNの大型ハドロン衝突加速器で、あらゆる亜原子粒子(subatomic particle:水素原子核よりも小さい粒子)に質量をもたらす亜原子粒子、ヒッグス粒子を、40年の探索の末に発見したのだ。

その間にも物理学者は、情報が失われることはありえないとする、さらに多くの理由を思いついている。1997年に出された有名な論文で、プリンストン高等研究所のフアン・M・マルダセナ(Juan M. Maldacena)は自然をホログラムのようなものとして説明した。その中で、ある大きさの3次元空間の中で起きる現象に関する情報は、例えば、その2次元境界における量子方程式で表すことができると述べている。ちょうどキャッシュカードに描かれているあなたの顔の3-Dイメージのように。

ブリティッシュ・コロンビア大学の若き理論物理学者、マーク・ヴァン・ラームスドンク(Mark Van Raamsdonk)は、この現象を説明するのに、マトリックス的ビデオゲームをコントロールするチップと言う、奇妙な比喩を好んで使う(自分の好みの音楽を好きなように入れて良いのだ)。

ある一定の体積の中で何が起きたのか説明するのに必要な情報は、その体積を含む領域と比例しているという発見は、ブラックホールが爆発するというホーキング博士の発見から導き出される、最も奇妙で、最も常識はずれな結論であり、依然として多くの謎に包まれている。

マルダセナ博士の宇宙はしばしば、スープの缶詰として表現される。銀河系、ブラックホール、星々、私たち自身を含む全てのものはスープの中にあり、それを説明する情報はラベルのようにして外側に貼られている。これを缶詰の中の重力として考えてみよう。ラベルがあらわす方程式は、情報が失われる余地が無いものとして決定論的であり、その中の宇宙に関する情報も保存されていることを意味している。

これに従えば、アリスとテッドの不法な結婚を防ぐ唯一の道はファイアーウォールになる、とポルチンスキー博士は言う。気味の悪い解法だ。何故ならこれは基本原理である相対性理論に反しているのだから。

しかしながら彼は指摘する。物理学者はすでにある意味、アインシュタインをバスから放り出しているのだと。量子重力理論の極地と見なされているマルダセナ博士のホログラム的宇宙において、時空の次元はもはや意味を持っていない。「私たちはもう何年ものあいだ、時空と言うものが基礎的なものでは無いことを知っている。」ポルチンスキー博士は言う。「一般相対論は基礎的なものでは無いんだ。」

彼はさらに続ける。「時空は出現するものだ。重力も出現するものだ。おそらくは、常に出現するわけでは無いのだろう。」

アインシュタインの復讐

しかしもし、空間と時間と重力が基礎的なもので無いのなら、何が基礎的なのだろう?

最近になって、ファイアーウォールの難問を解決し、付きまとう疑問に回答する新しい方法が多くの注意を惹くようになっている。しかし依然としてコンセンサスには達していない。マルダセナ博士とサスキンド博士は、アインシュタインは自分自身を救い出すために、もう一つの斬新な概念を持ち出すことができると提案した。ワームホールだ。

1935年にアインシュタインとローゼンは、数学的にではあるが、ブラックホールが空間をショートカットするペアを形成する可能性を発見した。その当時、アインシュタイン-ローゼン・ブリッジとして知られていたもので、現在はワームホールと呼ばれている。ワームホールは、今私たちが知る限りにおいては、どんな意味においても通り抜けできるものでは無い。SF作家や恒星間旅行のパイオニアたちの夢に反して、時間旅行だとかその他の相対論に反する現象を排除している。

2010年にブリティッシュ・コロンビア大学のヴァン・ラームスドンク博士は、このようなワームホールが、量子もつれの幾何学的顕現である可能性を示唆した。結局のところ、空間をまたがっているように見えるこの現象はどちらも、直接メッセージを送付することには使えないのだ。M.I.T.のブライアン・スウィングル(Brian Swingle)も1年前に同じような示唆をしている。

実質的にこれらの理論が言っているのは、量子もつれのような現象抜きでは、時空は構造を全く持たないと言うことだ。あるいは、マルダセナ博士が言うように、「遠距離における気味の悪い行動が時空を作り出している」のだ。もしそうであるのなら、この見識は、理論物理学者の長年の夢に近づく1歩、空間と時間がより基本的な現実の物質、このケースでは量子情報の断片から、どのように出現したのかを説明する1歩であるのかも知れない。プリンストン大学の理論物理学者でブラックホールと言う名前を付けた人物、ジョン・ホイーラー(John Wheeler)はこの概念を「ビットからイットへ(it from bit:無理に訳せば断片から物質へ)」と呼んだ。

この考えを真剣に受け止めて、マルダセナ博士とサスキンド博士は、同じような種類のワームホールの適用が、AMPSケースのブラックホールとホーキング放射の間に存在する、と提案した。ハイパースペースを蛇のようにのたくって進み、別のブラックホールへ口をあける代わりに、ワームホールは、無数のスペゲティのような糸に分かれて、ホーキング放射のそれぞれの端に繋がっているのだ。この考えに従えば、この記事の前段でアニメ的に理論を説明したとき登場したボブ、ホーキング放射の粒子であるボブは、事象の地平面から数光年離れていたとしても、ブラックホールの内側と繋がっている。まるで、ニュージャージーにある家のドアがマンハッタンの地下室と繋がっているかのように。

このワームホール・コネクションによって「テッドとボブは同じものになる」とマルダセナ博士は説明する。その結果この話は、同じ人間を取り違える一風変わったラブコメディーみたいなハッピーエンドとなる。ハンサムな流れ者が、実は身分を隠した王子様だったみたいな。アリスは、実はボブであるテッドと結婚することができ、結婚の絆はブラックホールの境界をスムーズに越える。

このケースではファイアーウォールは必要無く、物理学の法則にも違反しない。そしてアインシュタインは、いつの日かの次なる戦いまで生き延びることになる。

「もし正しければ、これは明らかに、重力と量子のメカニズムに関する主要な見識となるだろう、」サスキンド博士は情熱的にそう答えた。「私はこれをとても劇的なことだと思っている。」彼は言った。アインシュタインは、そのキャリアがとっくに終わったと思われていた56歳のときに、「この考えを生み出した」ことを彼は指摘する。ワームホールと量子もつれの関連については何の考えも無しにだ。

「彼は与え続けていたんだ。」

しかしアインシュタインはまだ安全では無い。

「最初の印象から言えば、」プレスキル博士は最近のブログポストで書いた。マルダセナ-サスキンド推測は「良い匂いがするし甘そうだ。しかししばらくの間棚で熟成する必要があるだろう。」彼は付け加えて言った。「ワームホールを愛する者たちは、今しばらく可能性を楽しんでいられるだろう。」

量子もつれ理論

マルダセナ博士とサスキンド博士は、ワームホール仮定はまだ発展途上の仕事であることを認めている。この考えが細部において充分形をなしていると納得している同僚はほとんどいないし、これがファイアーウォール・パラドックスを解決できると納得している同僚すらあまりいない。ワームホールやその他諸々のアイデアが確実に興味を持たれるであろうカブリ研究所でのファイアーウォール・ワークショップを翌週に控えた夜、サスキンド博士はe-mailで言った、「私が言えることは、完全に確固としたケースを持つ人間は今、誰もいないと言うことさ。僕もその1人だがね。いずれ時と共に明らかになるのだろう。」

ポルチンスキー博士は言う。「現在の私の考えでは、今なされている主張は全て、理論を持たない人間がするような類の主張だと言うことさ。」私たちには、より完全な重力理論が必要だと、彼は結論付けた。

「たぶん、『重力もつれから見た時空』はスタート地点として正しいと思う、」彼は書いている。「確信は無いがね。」

マルダセナ博士とe-mailのやり取りをしているブソー博士は、ワームホールがファイアーウォールを消し去るという考えに批判的だ。「私の見解では、現在はファイアーウォールを理解したり受容したりする過程にあるんだ。」彼は付け加えて言った。結局のところ宇宙には、アインシュタインの等価原理以外に、非暴力主義などは無いのだ。そしてその等価原理は、ブラックホールの地平面は特別な空間では無いと主張する。しかしたぶん、結局そこは特別な空間なのだろう。

その一方でブソー博士は言う。現在の議論は、ホーキング博士が最初に発見した情報パラドックスのもつ「馬鹿げているほどの重要さ」に対する自分の評価を、さらに数メモリ引き上げたと。

「ファイアーウォール・パラドックスは、」彼は言った、「ブラックホールから情報を取り戻すと言う概念が持つコストは、私たちのほとんどが信じていたよりも、さらに革命的であると言うことを教えてくれたんだ。」

~~ここまで~~

次回更新は9月7日ごろになると思います。
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Author:ゾノシン
英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

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