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ローラ・ポイトラスは如何にしてスノーデンを助けたのか

スノーデン事件に関する記事をUpします。

記事を書いたのはピーター・マース(Peter Maass)さんです。元記事はここにあります。

スノーデンさんを助けたジャーナリストに関する記事です。

~~ここから~~

ローラ・ポイトラスはどうやってスノーデンが秘密を漏らすのを助けたか

今年の1月、ローラ・ポイトラス(Laura Poitras)は興味深いe-mailを受け取った。匿名のその相手は彼女の公開キーを求めていた。ポイトラスはこの2年間ずっと政府による検閲(surveillance)を扱ったドキュメンタリーの仕事をしていて、時として見知らぬ人間からの問い合わせを受けている。彼女はこのe-mailに返答し、公開キーを送付した。相手の彼だか彼女だかに、ポイトラスだけが開くことのできる暗号化したe-mailを送れるようにしたのだ。しかし彼女はそれで何か大きなものが得られるとは考えていなかった。

見知らぬ相手は幾つかの指示を送り返してきた。その指示は2人の間のやり取りをさらに強力に保護するシステムを作るものだった。相手は、微妙な情報の提供を約束しながら、ネットワークに繋がったコンピュータによるブルート・フォース・アタック(brute-force attack:計算能力にものを言わせたしらみつぶしパスワードチェック)にも耐えられるよう、長いパスフレーズを選択することをポイトラスに求めた。「おそらく貴方の敵は、1秒間に1兆回のトライをする能力を持っているでしょうから、」見知らぬ相手はそう書いてきた。

その後あまり長く待つことも無く、ポイトラスは、暗号化されたメッセージを受け取った。メッセージには、政府が実施している複数の秘密の監視プログラムの概略が説明されていた。彼女はその中の一つを聞き知っていたが、他のものは知らなかった。見知らぬ相手は、それぞれのプログラムを説明した文章の後に、同じ意味の文を追記している。「私はこれを証明できます。」

暗号を解除してメールを読んだ直ぐ後に、ポイトラスはパソコンをインターネットから外してメッセージを削除した。「私は思ったのよ。O.K.これが本当なら、私の人生は変わってしまうって。」彼女は先月、そう私に話した。「彼が知ってるって言ってるもの、提供できるって言っているものは凄いものなのよ。とにかく全部変えなくちゃいけないことは判っていたわ。」

ポイトラスは、誰にせよ連絡相手について不安を抱えたままだった。彼女は、政府のエージェントが彼女を引っ掛けて、ドキュメンタリーでインタビューした人々の情報を引き出そうとすることを特に心配していた。インダビュー相手にはウィキリークスの編集者、ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)も含まれている。「彼を呼び出したわ。」ポイトラスは振り返る。「言ったのよ。本当にこの情報を持っているのかって。もし本当なら、ものすごく大きなリスクを背負ってる。それとも、私と私の知り合いを引っ掛けようとしてるのか、もしくは気が狂ったのか。」

それに対する答えは、はっきりしてはいたが、決定的と言うわけでも無かった。ポイトラスは見知らぬ相手の名前も知らないし、性別も年齢も勤め先も知らなかった(C.I.A.?N.S.A.?ペンタゴン?)。6月はじめに彼女はついに答えを得た。ポイトラスは、ガーディアン紙のコラムニストで以前法律家だった記者仲間、グレン・グリーンワルド(Glenn Greenwald)と共に香港へ飛び、N.S.A.の契約者エドワード・J・スノーデン(Edward J. Snowden)と会った。スノーデンは数千もの秘密文書を彼らに提供し、政府による検閲の範囲と正当性に関する、大掛かりな議論の幕を切って落とした。ポイトラスは少なくとも1点において正しかった。彼女の人生はもう元には戻らない。

グリーンワルドはリオデジャネイロ郊外の熱帯樹木に囲まれた家に住み、仕事をしている。彼はその家を、ブラジル人パートナー、および10匹の犬に1匹の猫と共有している。その場所は、ジャングルの中に出現した、安上がりの学生宿舎的雰囲気を持っている。台所の時計は何時間もずれているが誰も気にしない。使った皿がシンクに積み上げられている。居間にはテーブルとカウチ、大きなテレビ、Xboxのコンソールに1箱のポーカーチップがあるだけだ。冷蔵庫にはいつも新鮮な野菜が入っているわけでは無い。猿の家族がしばしば裏庭のバナナの木を襲撃し、キーキー鳴いて犬たちと吠え比べを演じている。

グリーンワルドはだいたいベランダの日陰で仕事をしている。服装はTシャツにサーファー・ショートパンツにサンダル履きだ。私がそこで過ごした4日間、彼はずっと動き回り、ポルトガル語と英語で電話し、ドアを走り出て町へ降りてインタビューを受け、スノーデンの情報を求める電話やe-mailに答え、225,000人のフォロワーへ向けてツイッターをポストし(その中の何人かと熱心に議論もして)、そして座ってガーディアン向けにさらに多くのN.S.A.記事を書いた。犬たちに静かにしろと言いながら。ある時、特に興奮して「皆黙れ」と叫んだが、誰も気にしているようには見えなかった。

この混乱の中、49歳の厳しい表情をした女性、ポイトラスは、予備の寝室とか居間のテーブルとかで、自分が所有する何台ものコンピュータの前に座り、集中した静けさをたたえて働いている。時々彼女はベランダに出て、グリーンワルドが現在執筆中の記事について話す。あるいは逆に彼の方が時々仕事を中断して、スノーデンについて編集中の最新ビデオを見るために彼女のところへ来る。二人は熱心に話し合う。グリーンワルドの方がはるかに声が大きく早口だ。そして時として、馬鹿げた思い出とか、互いに知っているジョークとかで、笑いを爆発させる。2人が口をそろえて言っているのは、スノーデンの物語は、2人が共闘する戦いであり、アメリカの自由に対する基本的脅威だと共に信じるところの政府の検閲を相手にした戦いだと言うことだ。

ガーディアン紙の記者が町に2人来ていてグリーンワルドを手伝っている。そのために私たちは、時々コパカバーナ・ビーチ沿いのホテルで過ごすことがある。日に焼けたブラジル人たちが眼下の砂浜でバレーボールをしている光景は、この全ての出来事に非現実的な空気を添えていた。ポイトラスはグリーンワルドの記事の幾つかに署名している。しかしだいたいにおいて彼女は背景に留まることを好み、書いたり話したりは彼に任せている。その結果、グリーンワルドだけが表にでて、人々から、恐れを知らない個人の権利の保護者、あるいは不埒な裏切り者、と見られることになった。どちらの見方をとるかは人それぞれだ。「僕は彼女をこの物語のカイザー・ソゼ(Keyser Soze)って呼んでいるんだ。何故って彼女は完全に見えなくて、そしてどこにでも居るんだからね。」グリーンワルドは、1995年のサスペンス映画「ユージュアル・サスペクツ(The Usual suspects)」でケビン・スペーシー(Kevin Spacey)が演じた役、誰でもない振りをした主謀者の名前を使ってそう言った。「彼女はこれ全部の中心にいるんだ。でも誰も彼女のことを良く知らない。」

ある日の夕方、日が暮れてから、私はポイトラスとグリーンワルドの後について、ブラジルの主要新聞の1つオ・グロボ(O Globo)のニュースルームに入った。グリーンワルドはちょうどその新聞で、N.S.A.が如何にしてブラジルの電話やe-mailをスパイしているかを詳述する記事を発表したばかりだった。同じような記事が世界中の他の国についても書かれている。そして、その記事はブラジルで大規模なスキャンダルとなり、ニュースルームに入ったグリーンワルドは有名人だった。編集長は彼と握手し、レギュラー・コラムを書いてくれと頼んだ。記者たちは携帯で記念写真を撮った。ポイトラスはその光景を幾つか撮影したが、カメラを降ろして見守った。私は誰も彼女に注意を払わないのに気がついていた。全ての目はグリーンワルドを見ていて、彼女は笑っている。「良いわね、」彼女は言った。「完璧よ。」

ポイトラスは溶け込みながら働こうとするタイプのように見える。それは内気からくるものと言うよりも、戦略から選んだ機能であるようだ。彼女は実際、情報の管理に当たっては、顕著に強権的だ。ある会話のなかで、個人生活について訊こうとすると、彼女は言い放った。「まるで歯医者に来ているみたいね。」彼女の個人生活は概略で言って次のようなものだ。彼女はボストン郊外の裕福な家庭で育った。高校を卒業した後、サンフランシスコに移り住んで一流レストランのシェフとして働き始める。同時にサンフランシスコ芸術学校(Sanfrancisco Art Institute)に通い、実験的映像作家アーニー・ゲール(Ernie Gehr)の下で学んだ。1992年に彼女はニューヨークへ移住し、映像の世界で身を立てようとする。同時にニュー・スクール(New School)で社会・政治理論の大学院クラスを受講する。その以来、彼女は5編の映画を作っている。最新作「The Oath(誓い)」はグアンタナモの囚人、サリム・ハムダン(Salim Hamdan)とイエメンにいる彼の義理の兄弟を扱ったもので、ピーボディー賞、およびマッカーサー賞を受賞している。

2001年9月11日、世界貿易センタービルが攻撃されたとき、彼女はマンハッタンのアッパー・ウェストサイドに居た。それに続く数週間、多くのニューヨーク在住者と同じように、彼女は悲嘆に暮れながらも団結を感じていた。彼女に言わせると、それは「肯定的な感覚の中で人々が何でもできた」時期だと言う。そしてそれが、イラクへの予防的侵略へと結びついた時、彼女は故国が道を誤ったと感じた。「私たちには、いつも不思議だったわ。国家がどうしたら道を外れるのかが。」彼女は言った。「人々がどのようにして、ああいった事態が起きるのを許すのか。国家が境界を越えて滑ってゆく間、人々はどういう風に見守っているのか?」ポイトラスは紛争地帯での経験は無い。しかし2004年6月、彼女はイラクへ行き占領の様子を撮り始めた。

バグダッドに着いて直ぐ、彼女はバグダッド市議会のメンバーがアブグレイブ収容所を訪問するのを撮影する許可を得る。それは、正にその収容所でアメリカ兵が囚人を虐待する写真が公開された数ヶ月後だった。訪問団の一員には高名なスンニ派の医師も含まれていた。ポイトラスは、医師が囚人とやり取りをした後、何の理由も無く囚人たちが拘束されていると叫ぶ、注目の場面を撮影した。

その医師、リャド・アル=アドハド(Riyadh al-Adhadh)はポイトラスを自分の診療所へ招き、バグダッドでの彼の生活をリポートするのを許した。彼女のドキュメンタリー、「My Country, My Country」は、彼の家族の苦境を中心に据えている。近隣で起きた銃撃事件とか停電、従兄弟の誘拐。映画は2006年初頭に公開され、数多くの賞賛を受け、アカデミー最優秀ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

イラク市民に戦争が与えた影響を物語る試みは、ポイトラスを、深刻で不当な非難の標的にした。2004年11月19日、アメリカ軍に支援されたイラク部隊が、医師が住んでいる場所の近く、アドハミヤ(Adhamiya)のモスクを襲撃し、その中に居た数人を殺害した。翌日その近辺で暴動が発生する。ポイトラスは医師の家族と一緒に家に居て、時折、何が起きているのか知るために家の屋上に上がった。屋上に上がっている時、彼女はオレゴン州兵大隊の兵士に目撃されている。その直ぐ後、反乱軍のグループが攻撃を行い、アメリカ人1人を殺害した。何人かの兵士は、ポイトラスが屋上に居たのは前もって攻撃を知っていてそれを撮影するためだと憶測した。現在は退役しているその大隊の指揮官、ダニエル・ヘンドリクソン(Daniel Hendrickson)中佐は、彼女に関する報告書を作成し旅団司令部へ提出したことを、先月私に話している。

この主張を裏付ける証拠は無い。その近辺ではあの日、いたるところで戦闘が持ち上がっていた。従ってどんなジャーナリストであろうとも、攻撃があった場所の近くにいないで居る方が難しかっただろう。この訴えをした兵士自身が何の証拠も無いと私に語った。ヘンドリクソンは私に、旅団司令部は何の返答もよこさなかったと話した。

アドハミアの攻撃の後も数ヶ月の間、ポイトラスは合衆国軍と共に行動するジャーナリストとしてグリーン・ゾーンに住んだ。彼女は自分の撮ったものを複数の軍関係者に見せている。その中には合衆国陸軍大学(U.S. Army War College)の人間も居た。バグダッドでポイトラスと関わりを持ったことがあり、今は退役しているトム・モウル(Tom Mowle)少佐の話では、ポイトラスはいつだって撮影していて、暴動のあった日に彼女が撮影していることは、「完全に正常なことだ」と言う。「これは全く馬鹿げた訴えだと思うよ」と彼は言った。

この訴えには証拠は無かったのだが、ポイトラスに対する数回の拘束や捜索と関連していたと思われる。ヘンドリクソンや数人の兵士が話してくれたように、2007年、彼女が初めて拘束されてから数ヵ月後、司法省合同テロリズム・タスクフォースの捜査官が、あの日のバグダッドでのポイトラスの行動についてヘンドリクソンと兵士たちを聴取している。ポイトラス自身は、どのような捜査官からも一度として聴取されたことは無い。「イラク軍と合衆国軍が金曜の礼拝時にモスクを襲撃して数名を殺害した。」ポイトラスは言う。「翌日に暴動が発生し、私はドキュメンタリー作家なので、その近辺を撮影した。私が攻撃を知っていたというあらゆる示唆は間違っているわ。合衆国政府は、戦争を報道するジャーナリストでは無く、誰が襲撃を命令したかを調査するべきよ。」

2006年6月、彼女が乗った国内線の切符には「SSSS」と書かれていた。Secondary Security Screening Selection(第2級保安調査対象)の略で、これを付けられたものは、通常の検査の他に追加検査を受けることになる。彼女はニューアーク国際空港でイスラエル行きの便に搭乗する前、最初に拘束される。そしてイスラエルで彼女の映画が上映された後、帰りの飛行機で再入国を許可される前、2時間拘束される。翌月、映画祭で映画を上映するために彼女はボスニアへ旅行する。サラエボからウィーンへ飛行機で飛んで着陸すると、空港の拡声器で呼び出されて、セキュリティーデスクへ行くよう言われた。彼女はセキュリティーデスクからバンに乗せられて空港内の別区画へ連れて行かれる。そして、荷物検査をする部屋へ入れられた。

「係員が私のカバンを取り出して検査したのよ。」ポイトラスは言う。「何をしているんだって訊かれたわ。それで、サラエボでイラク戦争の映画を上映したんだって言ったの。そしたらその保安要員と少し親しくなっちゃってね。いったい何が起きているのって訊いたの。彼が言うには、『君にはフラグが立ってるんだ。君の危険点数はリヒタースケール(マグニチュード)を超えちゃっているからね。最高400で400点だ。』私は言ったの。『その点数システムはヨーロッパ全部で有効なの?それともアメリカの点数システムなの?』彼が言うには、『違うよ、これは君の政府のものだ、君の政府が僕らに君を止めるように言ったのさ』」

9/11の後、アメリカ政府はテロリスト監視リストの編集を開始した。そのリストには一時、百万名近くの名前が載っていたと推計されている。そして少なくとも2つ、それから派生した航空機での移動に関連するリストが存在する。その内の1つ、いわゆる飛行禁止リスト(no-fly list)には、この国から飛行機で出てゆくことも入ってくることも許されない数万人の名前が載っている。もう1つのリスト、飛行禁止リストよりも大きな選抜リスト(selectee list)に載った人々は、空港での追加的検査と審問が果たされる。こういったリストは市民権団体から、恣意的すぎるし大きすぎる、そしてリストに載ったアメリカ人の権利を侵害していると批判されている。

ウィーンでポイトラスは、なんとかニューヨークへ向かう便に乗り換えることが出来た。しかしJ.F.K.に着陸すると、ゲートのところに2人の武装した警察官が待ち構えていて、尋問部屋へ連れて行かれた。それは決まり切った手続きで、あまりにも頻繁なので彼女自身、正確な数は忘れてしまっている経験だ。たぶん40回はいってないらしい。彼女の話では、最初の内、官憲は彼女が持っている書類に興味を持ち、レシートとかをコピーした。一度はノートをコピーされた。彼女がノートを持ち歩くのを止めると、彼らは変わりに電子機器に注意を向けた。そしてもし質問に答えないと、彼女の持ち物を押収して、そこから回答を取り出すとまで言った。ポイトラスの話では、ある時、彼らは実際に彼女のコンピュータと携帯を押収し何週間も返さなかった。彼女は又、質問に答えないのは、そもそも後ろ暗いことがあるからだとも言われた。尋問は国際線搭乗ゲートの外で行われており、そこは通常の憲法による権利が適用されないと、政府が主張する場所であるため、弁護士の立会いは許されなかった。

「完璧に法律に違反しているでしょう。」ポイトラスは言った。「そういう風に感じられるのよ。彼らは私の仕事に関連する情報に興味をもっている。それは明らかに個人的なものだし、尊重されるべきものなのに。飛行機を降りたら銃を構えた人間たちが待ち構えているなんて、おじけづきたくなる状況よ。」

議会のメンバーに手紙を書き、情報自由法(Freedom of Information Act)に基づく請求をしても、何故自分が監視リストに載せられているのか、ポイトラスは説明を受けたことが無い。「何故なのか想像するしかないってのは、本当に腹立たしいわ。」彼女は言った。「いったい、人間がリストに載せられてその理由を言われることも無く6年間もストップさせられるなんて世界は、いつ始まったの?彼らが何でこんなことしてるのか、全く判らない。当然あるべき手続きの完全な停止よ。」彼女は付け加えて言った。「私は何も聞いていない。何も訊かれていない。何もしていないわ。まるでカフカの世界。誰も貴方に、何を非難しているのか言わないのよ。」

繰り返し拘束された後、ポイトラスは自分のデータを守る措置を採るようになった。旅行仲間に自分のラップトップを運んでもらったり、ノートを海外の友人や銀行の貸金庫に預けたりした。自分のコンピュータや携帯からデータを綺麗に消して、官憲が何も見れないようにした。あるいはデータを暗号化し、警察が押収してもファイルを読めないようにした。旅行前のこういった安全対策は、時として丸1日かそれ以上かかることがあった。

彼女が心配するのは国境線での検問だけでは無かった。もしも政府が空港で尋問するくらい彼女を疑っているのなら、彼女のe-mailとか電話とかウェブのブラウジングとかを調査しているなんてのは、最もありそうなことだった。「私は自分のe-mailに対して国家安全保障書簡(National Security Letters)が出てるんじゃないかって思っているの。」彼女は私に、司法省が使う秘密の調査ツールの名前を出して言った。国家安全保障書簡とは、それを受け取ったものに、ほとんどの場合インターネット・サービス・プロバイダーとか電話会社とかだが、顧客データの開示を要求するものだ。その際、顧客、および如何なる第3者に対しても、開示を通知しない。ポイトラスはF.B.I.が、彼女の電子通信記録に対して国家安全保障書簡を出しているのではないかと疑っている(しかしそれを確かめることはできない。何故なら彼女の電話会社やI.S.P.はそれを彼女に知らせることを禁止されているだろうから)。

2011年に政府検閲に関する映画の仕事を始めた時、彼女は自分のデジタル・セキュリティーをさらに高いレベルへと上げた。彼女は携帯電話の使用を減らした。携帯は誰と話しているかが判ってしまうだけで無く、どの時点に何処に居るかも悟られてしまう。彼女は扱いに注意を要する内容をe-mailしたり電話で話すのに慎重になった。訪問したWebサイトを隠すソフトを使用するようにもなった。2013年にスノーデンと接触してから、彼女は自身のセキュリティーをさらに数段階きつくした。重要な情報のe-mailを暗号化するのに加えて、ファイルの編集に使うコンピュータと、連絡に使うコンピュータ、および扱いに注意を要する文書を読むコンピュータを、別々にするようにした。 (扱いに注意を要する文書を読むコンピュータは他のものと、言わば空気で隔てられている(air-gapped)。即ち、インターネットには一度として接続していない)。

こういった予防措置は偏執狂的に思われるかも知れない。ポイトラス自身これを「すごく極端だ」と言っている。しかし、彼女が映画のためにインタビューした人々は、政府による監視のターゲットとなる人々であり、彼らが逮捕されることを彼女は恐れている。以前N.S.A.高官の1人だった人物で、不法な検閲機関に対する非難を表明していたウィルアム・ビンネイ(William Binney)は、2007年のある朝、自宅に居た時、ドアを蹴破って進入してきたF.B.I.エージェントに、妻や息子や自分に銃を向けられると言う経験をした。エージェントが入って来て頭に銃を向けた時、ビンネイはバスルームにいて、裸でシャワーを浴びていた。彼のコンピュータやディスクは没収され、いまだに帰って来ていない。ビンネイは、何の訴追も受けていない。

ウィキリークスのボランティアで、プライバシーを擁護する活動家でもあるジェイコブ・アッペルバウム(Jacob Appelbaum)も又、ポイトラスの映画に出た人物だ。政府はアッペルバウムのアカウント・データへのアクセスを求める秘密の命令をツイッターへ出した。しかし、ツイッターが命令に逆らったことで、それが明るみとなる。同社はデータを渡すことを強いられたが、それをアッペルバウムへ通知することは許された。アッペルバウムが使用しているグーグルやその他の小さなI.S.P.も、やはり秘密の命令を受けて抗議し、彼にそれを通知した。ビンネイと同様、アッペルバウムも何の訴追も受けていない。

ポイトラスは空港での追加検査に何年も耐えながらも、不満を公表することは無かった。抗議することで政府が疑念を増大させたり、敵意を持つことを恐れていた。しかし、去年、彼女は限界に達した。英国からのフライトの後、ニューアークで尋問を受けた時、彼女はメモを取ってはいけないと言われた。彼女は弁護士の助言に従って、国境係官の名前、彼らの質問内容、そして彼らがコピーしたり取り上げたりしたものの名前を、常に記録していた。しかしニューアークにおいて係官は、彼女が書き続けるなら、手錠をかけると脅した。ペンを武器として使用する恐れがあるために、何も書いてはいけないと、彼女は言われた。

「それで私はクレヨンをよこせと言ったのよ。」ポイトラスは思い返す。「そしたらそいつは、クレヨンも駄目だって言うのよ。」

彼女は別室に連れて行かれて3人のエージェントの尋問を受けた。1人は彼女の後ろに立ち、1人は彼女に質問し、3人目は監督官であるようだった。「1時間半ぐらいかかったと想う。」彼女は言う。「彼らの質問をノートに書こうとしたら、怒鳴りつけてきたのよ。言ってやったわ、『ノートを取ったらいけないと言う法律があるなら見せなさい』って。まるで彼らの禁止事項について議論をしてるみたいだった。彼らは言ったわ、『尋問をするのは私たちだ』ってね。すごく攻撃的で敵対的な経験だった。」

ポイトラスがグリーンワルドに会ったのは2010年、彼のウィキリークスに関する仕事に興味を持った時だった。2011年に彼女は自分のドキュメンタリーで彼を撮影するために、リオを訪れている。彼は空港で彼女が受けている検査の話を知っていて、それを書いて良いか、数回彼女に訊いている。ニューアークの出来事の後、彼女は彼に許可を出した。

「彼女は言ったんだ『もううんざりだ』って。」グリーンワルドは私にそう言った。「何がおきているのかノートを取って文書に残す能力は、彼女にとってある種の力なんだ。ある意味、状況をコントロールする能力なんだ。記録を取ることこそ彼女の仕事の本質だ。彼女は、状況に対するセキュリティーとかコントロールとかの最後の手段を取り上げられたと感じたんだと想う。なんの説明も無しに、全く気まぐれな力の行使によってね。」

その時グリーンワルドはサロン(Salon)の記者だった。彼の記事「U.S.Filmmaker Repeatedly Detained at Border(合衆国の映像作家が繰り返し検問で拘束される)」は2012年4月に発表された。その記事が出て直ぐに拘束は緩められた。6年に及ぶ検閲と嫌がらせは、とうとう終わりになるかも知れない。ポイトラスはそう望んでいる。

ポイトラスはスノーデンにとって、何千と言うN.S.A.文書を渡す相手として、望ましい最初の選択肢では無かった。事実、彼は彼女に接触する1ヶ月前、グリーンワルドに接触している。グリーンワルドは、イラクとアフガニスタンの戦争、および9/11以降の市民の自由の劣化について、広範囲に批判的な記事を書いている。スノーデンは匿名で彼にe-mailを送り、渡したい文書があることを告げた。そして連絡を暗号化するためのステップ・バイ・ステップのガイドを送った。しかしグリーンワルドはそれを無視した。スノーデンはそれで、暗号化したビデオへのリンクを送ったが、やはり効果が無かった。

「暗号化ソフトは本当にめんどくさくて複雑なんだ。」熱帯の雨が降る中、家のベランダに座って話している時に、彼はそう言った。「彼は何回も僕を悩ました後、ある時点で失望したらしい。それでローラのところへ行ったのさ。」

スノーデンは、合衆国空港でのポイトラスのトラブルを書いたグリーンワルドの記事を読み、彼女が政府の検閲プログラムについてドキュメンタリーを作っているのを知った。彼は又、ニューヨーク・タイムズ紙の特集ページ用に彼女が作ったN.S.A.に関する短いドキュメンタリーも見た。彼は自分がリークしたいと思っているプログラムを彼女は理解できるだろうと想像した。そして、安全に連絡する方法についても知っているだろうと考えた。

冬も深まった頃、ポイトラスは、自分が連絡を取っている見知らぬ相手は信用できると判断した。政府のエージェントであれば、してくるだろうと彼女が考えていた行動、彼女が接触している人々の情報を要求してくるとか、現在の仕事に関して質問してくるとか言ったことが一つも無かった。スノーデンは早い段階から、誰か協力者が必要だと彼女に言い、グリーンワルドへ接触するよう求めた。彼女は、スノーデンが既にグリーンワルドとの接触を試みていたことは知らなかった。そしてグリーンワルドは香港でスノーデンに会うまで、それが6ヶ月以上前に接触してきた人物であるとは判らなかった。

この時のやり取りでは、全員が何かしら驚いている。その中にはスノーデンも含まれている。スノーデンはポイトラスを通して私が送った質問に答えている。いつポイトラスを信用できると判断したかという質問に答えて彼は書いた。「僕たちが検証と調査のプロセスに入った時、判ったんだ。ローラは、僕が彼女に抱いていたよりも大きな疑いを僕に対して抱いているって。編集狂的で有名な僕よりもだぜ。」連絡の暗号化を求める彼の指示に対するグリーンワルドの最初の沈黙について訊いた時、スノーデンは次のように答えた。「ジャーナリストが忙しいことは知っていたさ。真面目に受け取ってもらうのが難しいことも判っていた。特に僕が最初に提供できる詳細な情報が少しか無い状況ではね。それと同時に、現在はもう2013年だし、彼は政府の膨大な力とその集中力について常に報道しているジャーナリストなんだ。僕は、インターネットを通して送られる暗号化されていないメッセージは、世界中の全ての情報機関に提供されているってことを認識していない人々がニュース組織にいることを知って驚いたよ。」

4月にポイトラスはグリーンワルドにe-mailして、顔を合わせて話し合う必要があると伝えた。グリーンワルドはその時たまたま、ニューヨーク郊外の会議で発言するために合衆国にいて、2人は彼の宿泊するホテルのロービで会った。「彼女は非常に用心深かった。」グリーンワルドは思い返す。「携帯電話を持ってくるなって強要したんだ。スイッチが切ってあっても政府は携帯電話から盗聴する能力を持っているからってね。彼女はe-mailを印刷して持ってきていた。僕はそれを読んで、直感的に本当のことを言っていると感じたのを覚えている。書かれている文面の向こうにいるスノーデンの情熱と思いは明らかだった。その時はまだスノーデンだとは判らなかったがね。」

グリーンワルドは暗号化ソフトをインストールし、見知らぬ相手とコミュニケーションを始めた。彼らの活動は、ポイトラスを主謀者として、まるで諜報活動であるかのように仕立てられた。「作業上の安全保障は彼女が全て取り仕切った。」グリーンワルドは言う。「どのコンピュータを使うべきか。どうやって連絡を取るか。どうやって情報を守るか。どこにコピーを保存しておくか。誰と共有しどこに置いておくかとかね。彼女は、こういったことをする上での全体的な技術上および作業上の安全性について専門家レベルで完璧に理解していた。こういった全ての作業がこれほど効率的で効果的に行われることは、もし彼女がたずさわっていて全てが調和されるよう実際に指導していなければ、一切無かったと思うよ。」

スノーデンは2人に文書を提供し始めた。ポイトラスはいつ彼が文書を送り始めたか話してくれない。彼女は、スノーデン、および彼女自身に対する裁判で使われるかも知れない情報を、政府に渡したいとは思っていない。スノーデンは、文書の提供と共に、直接会う準備がもう直ぐ出来ると言ってきた。ポイトラスが、会いに行くのに車を使うべきか列車を使うべきか訊いた時、スノーデンは飛行機を使う準備をするように言った。

5月になって彼は、2人に香港へ来るよう暗号化されたメッセージで伝える。グリーンワルドはリオからニューヨークへ飛び、ポイトラスはガーディアン・アメリカ版編集者と一緒に彼に合流した。新聞の名声を賭けて、編集者はガーディアンのベテラン記者、イーウェン・マッカスキル(Ewen MacAskill)を同行させるよう頼んだ。そして6月1日、3人はJ.F.K.発香港行きの16時間のフライトに乗ったのだった。

スノーデンはグリーンワルドに少数の文書を送っていた。その数は全部で約20篇。しかしポイトラスはそれより多くを受け取っている。しかし彼女はまだ、それを熟読する機会が無かった。飛行機上でグリーンワルドはその内容を読んでいて、偶然、ヴェリゾン(Verizon)に対して出された、顧客電話記録をN.S.A.へ提供するよう求める秘密の裁判所命令に出くわした。4ページの命令は、外国諜報活動監視裁判所(Foreign Intelligence Surveillance Court:FISA)から出されている。自らの決定事項に対して高い秘密性を保持する裁判所だ。N.S.A.が大勢のアメリカ人の電話記録を収集していると言う噂は流れていたが、政府はそれを否定していた。

ポイトラスはグリーンワルドの20列後ろに座っていたが、時々前に来て、彼が読んでいるものについて話した。隣に座った男性が寝ている間に、グリーンワルドはスクリーンに映ったFISAの命令書を指してポイトラスに尋ねた。「これ読んだかい?これは僕が考えている通りのことを言っているんだろうか?」

その時、2人はあまりにも興奮して喋っていたために、寝ようとしている旅行客の邪魔をしてしまった。2人は話を中断した。「この出来事の重要性がどれほど大きいか、僕らには信じられないほどだった。アドレナリンが溢れて無我夢中で高揚していた。初めて強力な力を実感した。何故なら今まで、この巨大なシステムを相手にして、やっつけようと、ひっくり返そうと、光を当てようと奮闘しながら、なんの前進も得られなかった。その手段が無かったからだ。それが今や、その手段が膝の上に乗っている。」

スノーデンは彼らに指示を与えていた。香港に着いたら決められた時間に九龍地区へ行き、ミラホテルと繋がったモールにあるレストランの外に立っているように。そこでルービック・キューブを持つ男が来るのを待ち、彼にレストランはいつ開くのか聞け。その男は質問に答えるが、料理は不味いと忠告するだろう。そして、ルービック・キューブを持った男が現れてみると、その男こそスノーデンだった。その時、彼は29歳だったが、それよりも若く見えた。

「あまりにも若く見えたので、私たちは2人とも倒れそうだったわ。」ポイトラスは、まだ驚いているかのように、そう言った。「全く予想していなかった。私は誰かハイレベルの人間を予想していたので、それなりに年配だと思っていた。だけど又、やり取りを通して彼がコンピュータ・システムに関して非常な物知りだと言うことも判っていた。だから心の中では若干若いと思っていたの。それで私が考えていたのは40代の人間ね。かなりコンピュータを使いこなしているけれど、ある程度高いレベルの人間。」

暗号化されたやり取りの中で、スノーデンもまたこの時のことを述べている。「僕の見たところ、彼らは僕が予想より若いので戸惑っているようだった。僕の方も彼らが着くのが早すぎたので戸惑っていたんだ。そのために最初の検証手続きが複雑になってしまった。しかしながら閉ざされたドアの向こうに入って直ぐに、全ての人が予防措置と真正性について、強い注意を払っていることが確信できた。」

彼らはスノーデンの後について部屋に入った。ポイトラスは直ちに記録モードに入り、カメラを取り出した。「それはちょっとばかり緊張する、居心地の悪い瞬間だった。」グリーンワルドは最初の数分間について、そう言っている。「僕たちは座って、少しばかりお喋りを始めた。ローラは直ぐにカメラを取り出したんだ。彼女がカメラを向けたとたんに、僕も彼も完全に固くなったのを、すごく生々しく覚えているよ。」

グリーンワルドは質問を始めた。「僕は彼の主張の整合性を確かめたかった。それに得られる全ての情報を手に入れたかった。自分自身でどれだけ知っているかが、僕の信用とか、その他全てのことに影響してくるからね。本当に強固な人間的繋がりを築くのに、5時間から6時間はかかったよ。」

ポイトラスにとっても、確かにカメラは人間関係の力学を変えるものだ。しかし悪い方向に変えるわけでは無い。もしその人が撮影されることに同意したら、仮にその同意がカメラを向けた時に直接与えられたもので無いとしても、それは信頼の証であり、その場の感情的繋がりを強める。グリーンワルドが堅苦しさを感じたその時、ポイトラスは繋がりが強まるのを感じた。膨大なリスクを共有したのだ。「あの場には、何か本当に触感できる、あるいは感じ取れるなにかが存在していた。信頼されているって言う感じね。」彼女は言った。

スノーデンの方は、驚いてはいたが、その状況に慣れた。「誰でも想像するように、普通スパイってのは、レポーターとかメディアとかの接触を避けるものさ。だから僕はうぶな取材源だったんだ。あらゆることが驚きだったよ。でも僕らは皆判っていたんだ。何が賭けられているのかをね。状況の重々しさが、自分たち自身の利益よりも公共の利益に集中することを容易にしてくれた。彼女がカメラをオンにした時、僕らは皆、引き返せないってことが判ったんだと思う。」

次の週になると、取材前の準備作業は似たようなパターンをたどるようになった。皆がスノーデンの部屋に入ると、携帯電話からバッテリーを取り外してミニバーにある冷蔵庫の中に入れる。枕をドアの下に並べて、外から聞き耳を立てられるのを防ぐ。そしてポイトラスはカメラをセットアップして撮影を始める。スノーデンにとって、政府の諜報機関がどういう仕事をするか説明するのは、重要なことだった。何故なら彼は、いつなんどき逮捕されるか判らないと恐れていたから。

グリーンワルドの最初の記事、香港へのフライト中に初めて読んだヴェリゾンに対する命令を含んだ記事は、彼らがスノーデンへのインタビューを続けている間に発表された。それは奇妙な経験だった。一緒にニュースを作りながら、それが広がってゆくのを見たのだ。「私たちは皆で、ニュースが取り上げられて行くのを見たの。」ポイトラスは言った。「自分たちのニュースの注目の浴び方には全員が驚いたわ。私たちの仕事は非常に注目されていて、私たちもそれに注意を払っている。そしてニュースが飛び立ってゆくのを、私たちはテレビで見ることが出来たのよ。私たちはこの閉ざされた環境に居て、周りに反響が広がってゆくのが判っている。それを見ることも出来るし、感じることも出来たの。」

スノーデンは彼らが香港へ来る前に、公の場に出たいと考えていることを伝えていた。彼は自分のしたことの責任を取りたいと考えていたと、ポイトラスは言う。そして彼は他の人間が不当にターゲットにされることを望んでいなかったし、どこかの時点で特定されることも予想していた。彼女は、彼に関する12分半のビデオを作り、グリーンワルドの最初の記事が出た数日後の6月9日、オンラインにポストした。それによって香港を舞台にしたメディアの大騒ぎが始まる。彼らの所在を得ようと多くの記者が香港へ押しかけた。

ポイトラスは、私と記録を取って話すのを拒絶した題材を幾つか持っており、一切話そうとしない題材も持っている。それは安全上の理由とか法的な理由のためでもあるが、幾つかについては、その重要な部分を自分のドキュメンタリーで最初に取り上げたいと望んでいるからでもある。ひとたびビデオがポストされたら、スノーデンと別れることについて、彼女は単に言った。「これが公開されたら、この作業の時間は終わりだって、皆わかっていたわ。」

スノーデンはホテルをチェックアウトして身を隠した。記者たちはポイトラスの所在を見つけた。彼女とグリーンワルドは別々のホテルに泊まっていた。そして彼女の部屋の電話が鳴り始める。ある時は、誰かがドアをノックして名前で彼女に呼びかけてきた。その時までには、記者たちがグリーンワルドを見つけ出しているのが判っていた。それで彼女はホテルの警備員を呼んで裏口から退出した。

彼女は、スノーデンが再び会いたいと思うかも知れないと考えて香港に留まろうとした。それに彼女は彼の暴露に対する中国の反応を撮影したかった。しかし今や彼女自身が興味の対象であり、単なるカメラの後ろのリポーターでは無かった。6月15日、合衆国大使館の直ぐ外で行われたスノーデン支持のデモ行進を撮影中、CNNのリポーターが彼女を見つけ、質問してきた。ポイトラスは回答を拒んで立ち去った。その夜、彼女は香港を離れる。

ポイトラスは直接ベルリンへ飛んだ。彼女は去年秋にベルリンにアパートを借りている。そこでならF.B.I.が令状を持ってハードディスクを没収しに現れることを気にせずにドキュメンタリーの編集ができる。「私がプライバシーを感じられる場所とそうじゃない場所の間にはいつもフィルターがあるんだけど、」彼女は言う、「その境界線は段々狭くなってきてるのよね。」彼女は付け加えて言った。「私は自分がやっていることを止めてはいないけど、国を出ることになったわ。私は合衆国の中では、文字通り自分の所有物を守れると感じられない。スノーデンと接触する前からそうなのよ。もし誰かに対して、取材源として守ると約束したって、政府が自分をモニターしていてラップトップをいつ没収されるか判らないのであれば、現実的にも物理的にも、その約束は守れないわ。」

ベルリンに2週間留まった後、ポイトラスはリオへ向かった。リオはその数日後、私が彼女とグリーンワルドに会った場所だ。最初に私が立ち寄ったのはコパカバーナ・ホテルだった。その日2人はそこで、マッカスキルともう一人訪問中のガーディアン記者、ジャイムズ・ボール(James Ball)と仕事をしていた。ポイトラスは新しいスノーデンのビデオを繋ぎ合わせていて、それは数日中にガーディアンのウェブサイトへポストされる予定だった。グリーンワルドは、又別のブロックバスターとなる記事について、数名のガーディアン記者と働いていた。今度の記事はマイクロソフトがN.S.A.と秘密裏に協力していることに関してだった。部屋は混雑していた。全員が座れる椅子が無く、何人かはいつもベッドとか床に座っていた。幾つかのUSBメモリがやり取りされていたが、それに何が入っているのか、私には話してくれなかった。

ポイトラスとグリーンワルドはスノーデンのことを心配していた。2人は香港以来、彼と話していない。この時点で彼は、モスクワのシェレメーチエヴォ空港で外交関係が生み出した煉獄の中に囚われの身となっていた。合衆国政府が諜報上の理由で、地球上で最重要のお尋ね者とした人物だ(彼は後にロシアから一時的亡命を認められる)。ポイトラスが作業しているビデオは香港で撮った場面を使っていて、この1ヶ月で世界がスノーデンを見る最初のビデオとなるものだった。

「今は彼と連絡が取れない。再び彼から話を聞けるかどうかも判らない。」彼女は言った。

「彼は大丈夫かい?」マッカスキルが訊いた。

「彼の弁護士は大丈夫だと言っている。」グリーンワルドは答えた。

「だけど弁護士はスノーデンと直接接触して無いわ。」ポイトラスは言った。

その晩、グリーンワルドが家に帰るとスノーデンがオンラインで接触してきた。2日後、グリーンワルドの家で仕事をしているとき、ポイトラスも彼から連絡を受けた。

もう夕暮れ時だった。周りのジャングルからは盛大に鳥や虫の鳴き声が聞こえてくる。その物音は、玄関で出会った5~6頭の犬の吠え声と混ざり合っていた。窓を通してポイトラスが居間でコンピュータに向かい熱心に仕事をしているのが見えた。垂れ幕がかかった入り口を通って中に入ると、彼女は一瞬目を上げたが、直ぐに仕事に戻った。周りの騒音は完璧に気にならないようだった。10分後に彼女はコンピュータの蓋を閉じると、集中しなければいけない仕事があったんだと言いながら、失礼を詫びた。

彼女は何の感情も面に表さず、暗号化したチャットをスノーデンとしていたんだとも言わなかった。その時は彼女にしつこく訊くことはしなかったが、数日後、私がニューヨークから戻り、彼女がベルリンから戻った後に、あの夜彼女がしていたのは、それだったのかと尋ねた。彼女は認めた。しかし彼女はそれについて今は話したく無いと言った。何故なら、スノーデンとの会話について話せば話すほど、その時の感覚を失ってしまうからと。

「もの凄く感情を動かされる経験だった。」彼女は言った。「全く見知らぬ人間から、命の危険を冒しても公衆が知るべき事柄を公表したいと言われるのはね。彼は自分の命を賭けて私を信用し、その重荷を分けてくれた。その時の経験とか関係とかは、ずっと感情的に関わっていたいと望むような種類のものだったのよ。」彼と彼が持つ情報に対して自分が持っている繋がりは、自分の仕事を導いてくれるものなのだと、彼女は言う。「これから起こりうることとして彼が想像した世界の恐怖に、私は共感する。私は最大限の共鳴でそれと繋がりたいと思っている。もし座って延々とケーブル・インタビューを続けていたら、自分が繋がらなければならないと思う事柄から離れてしまうのよ。これは単なるスクープじゃ無い。もう誰かの人生そのものなの。」

ポイトラスとグリーンワルドは、2013年においてアウトサイダーによる報道がどのようなものとなるかを示す、特別に劇的な例だ。彼らはニュースルームの中では働かない。そして何をいつ公表するか個人的にコントロールしたいと望んでいる。ヴェリゾンに関する最初の記事に対して、彼らが望むほど早くはガーディアンが動かなかった時、グリーンワルドは別の社に持ってゆくことを主張し、暗号化された下書きを別の出版社の仲間へ送った。彼は又、全ての情報を公表するウェブサイトを作ることも考えていた。彼はそれをNSADisclosuresと名づけようと計画していた。最終的にガーディアンは彼らの記事を扱うことにした。しかしポイトラスとグリーンワルドは、やはり自分たち自身の公表ネットワークを作り上げた。ドイツとブラジルで、別の報道機関から記事を発表し、将来はさらに増やすことを計画している。2人は文書の全てを他の誰とも共有していない。

「私たちは報道機関とパートナーシップを結んでいる。でも私たちの最優先事項は情報源が引き受けたリスクと彼が提供した情報に対する公共の利益なのよ。」ポイトラスは言う。「どの報道機関と言えども、優先順位はずっと下ね。」

主要報道機関の多くの記者たちと異なり、2人は政治的中立を装おうとしない。グリーンワルドはもう何年ものあいだズケズケ言う人間だった。最近彼はツイッター上で批判者に対して返答した。「お前は完璧なアホだ。判っているか?」彼の左翼的政治姿勢はその皮肉なスタイルと合わさって、政治の世界の上層部から、こころよく思われていない。ポイトラスと行った彼の仕事は、国家の安全保障を傷つけることを唱導しているとして、非難されている。「私は注意深く報道を読みました。」上院諜報委員会のチェアウーマン、ダイアン・ファインスタイン(Dianne Feinstein)上院議員は、最初のスノーデン記事が出た少し後に言った。「大勢の人間たちが、私たちの隙を狙っていることは判っているんです...これこそF.B.I.が現在、10,000人動員して対テロリズム諜報活動をしている理由です...何かが起きる前に暴き出すためなんです。アメリカを守るためだと言えるでしょう。」

ポイトラスは、グリーンワルドほど対決的では無いが、自分たちの仕事がゲリラ的リポーターの唱導活動だと言う示唆には同意しない。「もちろん、私には意見がある。」彼女は私に言った。「国家による検閲は制御不能になっていると思うか?その通り。これは恐るべきことよ。皆も恐れるべきよ。秘密主義で影の多い政府はどんどん大きくなっている。全てが国家安全保障のためで、民主主義ではそうあるべきだと誰でもが思う全国的議論無しにね。これは民主主義じゃ無い。私たちはそれを立証する資料を持っている。」

ポイトラスは政府によるスパイ活動が満ち溢れている時代では特別重要となる一連の技術を、普通のジャーナリストよりもはるかに豊富に持っている。彼女は政府の検閲から如何にして身を守るか、コンピュータ・セキュリティーのエキスパート並みに知っている。スノーデンがほのめかしたように、「今年暴露された情報からしても、取材源と暗号化せずに連絡を取ることは、許されないほど向こう見ずであるのは明らかだ。」スノーデンやブラッドレイ・マニング(Bradley Manning)上等兵のように、新しい世代の情報源は、秘密のネットワークを探し回る彼らの能力故に、少量の情報では無く数千の情報を持っている。彼らはワシントン上層部のネットワークの中に住んだり、そこを通して活動したりする必要が無い。スノーデンはハワイに居たしマニングはイラクの基地から数万の文書をウィキリークスへ送った。そして彼らは自分たちが得た秘密を、主要報道機関の記者たちにでは無く、自分の政治姿勢と同じ見解を持ち、漏洩情報を見つからずに受け取るノウハウを持った相手に渡すのだ。

暗号化されたチャットの中でスノーデンは、何故秘密情報を持ってポイトラスのところへ行ったか説明した。「ローラとグレンはこの時代全体を通して議論の中心となるトピックに対して、青ざめるような個人攻撃に直面しても、恐れを知らず報道している数少ない人々だった。そしてその結果ローラは、まさに最近暴露したものの中に入るプログラムの標的になっていた。彼女は、世界で最も強力な政府の秘密の不法行為を報道するという、どんなジャーナリストにとってもおそらくは最も危険な仕事を扱うのに必要な、勇気と経験とスキルを持っていることを示したんだ。彼女は明らかな選択肢だった。」

スノーデンの暴露は今、ポイトラスが作成中の政府検閲を扱ったドキュメンタリーの中心だ。しかしポイトラスは又、まるで鏡を覗き込んでいるような、奇妙な立場に自分が居ることを発見した。何故なら彼女自身が、自分の映画の登場人物になることが避けられなかったからだ。以前の映画で彼女は、自分で映画の中に登場したりナレーションを入れたりはしなかった。それはおそらく、この作品においても変わらないと彼女は言っている。しかし彼女は、自分が何らかの方法で登場しなければならないと実感していて、どうやってそれをやれば良いか悩んでいる。

彼女はまた自らの法的脆弱性の評価を進めている。ポイトラスとグリーンワルドは、今のところ、どんな訴追も受けていない。2人は永遠にアメリカから離れて暮らすことは考えていない。しかし直ぐに帰国する予定も無い。議会のメンバーの内、1人はすでに、彼らのしたことを裏切りに当たると見なしている。それにオバマ政権が、漏洩者だけでなくそれを受け取ったジャーナリストに対しても、前例の無いほど強硬に追求を続けていることも2人は意識している。私が一緒にいた時、2人は帰国の可能性について話し合ったことがある。グリーンワルドは、政府は2人を逮捕するほど愚かであるかも知れないと言った。そんなことをすれば非常に一般受けが悪くなるにもかかわらずだ。そしてそうしても、情報が流れ出すことを止められもしないだろう。

私たちがタクシーに乗って彼の家へ戻る途中、彼は帰国について口にした。外はもう暗くなっていた。長い1日の終わりだ。グリーンワルドはポイトラスに訊いた。「これが始まってから、非N.S.A.日ってあったかい?」

「何それ?」彼女は訊いた。

「僕たちにはそういう日が必要だって思えるのさ。」グリーンワルドは言った。「そういう日をとろうとしているわけじゃ無いんだけどね。」

ポイトラスは、そしたら又、ヨガを始めるかも知れないと言った。グリーンワルドは、定期的にテニスをする暮らしに戻りたいと言った。「これをやりながら歳を取るのはかまわないんだけどさ。」彼は言った。「太りたくは無いんだよね。」

2人の話は、合衆国へ戻る問題に戻った。グリーンワルドは冗談めかして言った。もし自分が逮捕されたら、ウィキリークスがN.S.A.文書公開の交通整理をすることになるだろうと。「僕はこう言ってやるのさ、『O.K.友人のジュリアン・アサンジを紹介するよ。あいつがたぶん僕の後釜になるからね。あいつと楽しくやってくれ。』」

ポイトラスは彼をつついた。「そうするとあんた、ステーツに戻るの?」

彼は笑って指摘した。政府はいつも一番賢い行動を選択するわけでは無いと。「もし彼らが賢かったら、」彼は言った、「いつだって帰るさ。」

ポイトラスも笑った。しかしこれは彼女にとって困難な問題だった。彼女はグリーンワルドほど開放的でも無用心でも無い。それがこの奇妙な2人組の相性を良いものにしていた。彼女は自分たちの物理的安全性を気にしていた。それにもちろん、政府の検閲も心配していた。「位置情報は重要よ、」彼女は言った。「私はできうる限りネットワークから離れていたい。彼らに簡単に特定されたく無いわ。彼らが私をつけ回したいと思うなら、本当に足を使ってもらわないとね。自分からG.P.S.に居場所を送ろうとは思わないわ。私の居場所は私にとって重要よ。今では前よりもずっと、新しい意味で重要になっているわ。」

彼らに対して怒っている人間たちは大勢いる。そして彼らが支配している何千ものN.S.A.文書を取り戻すことに手段を選ばないかも知れない政府機関、および民間機関もたくさんある。彼らが公開したのは、ほんの少し、トップ・シークレットで新聞の1面を飾るような、議会の公聴会開催を呼び起こすような少数のものだけだ。2人はウィキリークスみたいに、全てを一度に公開するようには見えない。少なくとも今のところ、彼らは公開したものよりも多くを秘密のままにしている。

「私たちはこの世界を覗き込む窓を持っている。そしてまだ、この世界を理解しようと努めているところなのよ。」ポイトラスは、私との最近の会話の1つで、そう言った。「秘密にし続けようとは思ってないの。でもパズルのピースを繋ぎ合わせているところ。時間のかかるプロジェクトなのよ。私たちは、公衆の利益に関わるものを公開するつもり。でも同時にこの世界がどんなものなのか、手掛かりをつかみたいと思っている。そしてそれを伝えたいと思っている。」

この問題に関する最も大きなパラドックスは、彼らの努力、政府による検閲を理解し暴こうとする彼らの奮闘は、それが続く限りずっと非難を浴び続けると言うものだ。

「私たちの人生は2度と元には戻らない、」ポイトラスは言った。「もうどこに住んでもプライバシーが保てるなんて感じられなくなった。そういったものは永遠に無くなってしまったのね。」

~~ここまで~~

次回更新は9月14日ごろになると思います。
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感謝感謝!

長文読解力はなく・・和訳を首を長くして待っていたので、本当に感謝です。海外のツイッターで"must read"などと大変多くリツイートされていたので、日本語で読めることがほんとうに嬉しいです。ありがとうございます。

Re: 感謝感謝!

読んでくださってありがとうございます。こんなに喜んでいただいて嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
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ゾノシン

Author:ゾノシン
英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

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