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ハーバード・ビジネス・スクールの男女格差解消の試み

アメリカで行われた男女共同参画の試みに関する記事をUpします。

記事を書いたのはジョディ・カンター(Jodi Kantor)さんです。元記事はここにあります。

ハーバード・ビジネス・スクールを舞台にした話です。

~~ここから~~

ハーバード・ビジネス・スクールのケース・スタディ:男女共同参画

ボストンにて――5月にハーバード・ビニネス・スクールの2013年度クラスが研究終了を祝って集まった時、その場には、この2年間に実施された実験の成果は、ほとんど目に留まらなかった。905名の卒業生たちは、モルガン(Morgann)とかブルームバーグ(Bloomberg)とか、ビジネスマンの名前から付けられたレンガ造りの建物に囲まれて立つ間に、身にまとった黒と真紅の帽子とガウンによって、性差の無い1つの集団へと化していった。

しかしこの週に行われた行事の1つである卒業祝賀会(Class Day)でスピーチをした優秀な女子学生は「無視されたと感じる一群の人々のフラストレーション」について言及した。そしてその場には、最近業績が急激に悪化した会社の元チーフ・エグゼクティブが招かれてスピーチをしたのは、その人が単に女性であることが理由だと、不満を述べる人たちも居る。受付のところでは、友人たちと笑いながら、学校の中で起きたことは「痛ましい経験」だったと公言する白いテニス・ウェアを着た男子学生がいた。

彼と彼の同級生たちは、そうとは意識しない間に、かつてはフェミニストの夢想だとしか思われなかった実験のモルモットにされていたのだ。それはすなわち、ハーバード・ビジネス・スクールが性差解消に自ら動いたら、例えば女性の成功のためにカリキュラムや規則や年中行事を変えたら、いったいどうなるだろうか?と言う実験だ。

国内第一級のビジネス・トレーニング・グラウンドは、見たところ微動だにしない問題の解決を試みていた。毎年毎年、男性と同等の成績とテストの点数を持って入学する女性たちが、次第に遅れを取るのだ。女性の教授を惹き寄せて維持する戦いも負け戦だった。2006年から2007年にかけて、女性の初任教員(junior faculty)の3分の1が辞めている。

何人かの女子学生、例えば95年度クラスの卒業生でフェイス・ブックのエグゼクティブ、かつ「リーン・イン(Lean In)」の著者シェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)のような人物は、順調に抜けてゆく。それでもウォール・ストリートで鍛えられた多くの女性が、ハーバードはトレーディング・フロアよりも酷いと告白している。初年度の学生は幾つかのセクションに分裂し、全ての講義を一緒に取り、リアリティー・ショーのような熱のこもった人間関係を築いてゆく。数名の男子学生は、ファイナンス業界の経験があり、クラスルームの議論で支配的に振る舞い、女子学生や若い教員の姿をかすませてしまう。そして「睡眠時間を潰す相手、あるいは (もっと明け透けな表現だが) 結婚相手」には誰が良いか、おおっぴら思い巡らして見せる。酒びたりの社交行事はもっと悪い。

「あんなことを、公の場で言うなんて、考えられませんよ。」学生の成績ギャップを暴き出す研究を統括した教授、キャサリーン・L・マックギン(Kathleen L. Mcginn)は言う。「これは今まで議論されてこなかった汚い秘密です。」

しかし2010年、ハーバード最初の女性学長、ドリュー・ギルピン・ファウスト(Drew Gilpin Faust)は、ビジネス・スクールの性差問題について、前任者よりもはるかに多くの積極的行動を宣言する人物を新しい学部長に任命した。その人物と彼のチームは、学生の喋り方、勉強の仕方、社交のあり方を変えようと奮闘した。事務局は成績評価時のバイアスを除くために講義に速記者を配置した。終身在職権の無い女性教員の何人かに対しては、毎講義後に個人的指導を提供し、さらには、賞賛を集めるケース・スタディ・メソッドを捨て去ることまでした。

学部長たちの大望はキャンパスを越えて広がり、ファウスト博士がインタビューの中で言及した「価値観を明確に訴える責務」にまで及んでいる。同校は自らを、アメリカン・ビジネスにおける標準を決める存在と見ている。新しい事務局が自らに確約しているように、同校の女性に関する数字を変えることは、他のビジネス・スクールとか、ハーバード卒業生が在籍する会社とか、わずか21社のみが女性のチーフ・エグゼクティブを持つフォーチュン500の会社とかにも、計り知れない影響を与えることになるだろう。この学校はまた、女性がグループの中で如何に発言するかとか、恋愛関係と仕事上のステータスとの繋がりとか、バイアスを下げるための評価ツールとかを研究する実験室にもなると期待されている。

「私たちは、この実験を行うことで、この問題に取り組む方法をリードし、世界をリードしてゆかねばなりません。」とフランシス・フレイ(Frances Frei)は言った。彼女の言葉は、学校が感じている使命と、その自意識を示唆している。人気の高い教授であったフレイ女史は、この運動の管理官となることで、学生の怒りのターゲットになった。彼女は、「unapologetic(弁解無し)」と言う言葉を良く使うことで知られている。その言葉は、例えば、私たちは自分が導入した変化を弁解しない、と言う風に使われる。

70人以上の教授、管理官、学生を対象としたインタビューによれば、徐々にではあるが、学校は女子学生にとってかなり改善された場所へと変わってきている。インタビューに答えた人たちの話では、より多くの女性が講義で積極的に発言するようになり、学術上の賞を獲得する女性の数も新記録になったと言う。そして、女子学生受け入れ50周年を祝うTシャツ姿でカフェテリアをぶらつく男子学生が出てくるまでに、女性の環境は大きく改善されたと言う。同校に在籍する女性は最終的に、「そう、私みたいな人間もこの学校の対等な一員なんだ」と感じられるようになったと、長年教授を務めるローザベス・モス・カンター(Rosabeth Moss Kanter)は言う。

そしてそれでもなお、実験は意図しない結果と全く新しい問題を運んできたと、学部長は指摘する。成績格差はあまりにも早く消えてなくなったので、いったいそれがどのように起きたのか誰も正確には言えないと言う。事務局の介入は数名の学生の反乱を呼び起こし、学生たちが言うところの介入的ソーシャル・エンジニアリングをめぐってフェイ女史を糾弾する「Unapologetic」Tシャツ着た学生が現れた。卒業する男子学生の1人スリ・バチュ(Sri Batchu)は、27歳にもなって「幼稚園とか小学1年生とかに」戻ったようだと言う。

学生たちは学部の教員に、より多くの女性を求めているが、それは学部長が実現に苦慮している要求だ。そして学部の人間は、女子学生がプレイポーイのバニーガールの格好をしてパーティーに来たり、男子と同じように異性を格付けしたりするという変化に、どう対処したら良いか判らない。「前には一度も考えたことが無いような問題が毎回のように持ち上がるんだ。」新しい学部長、ニティン・ノーリア(Nitin Nohria)はインタビューでそう述べた。

監督官たちは、学生がキャンパスを去った後もレッスンの効果が持続するかどうかは、判らないと言う。学部のメンバーは、学校の環境が性差に敏感になればなるほど、現実のビジネス界との類似性は失われてゆくと指摘する。「私たちは毎年卒業する900名の学生で世界を変えようとしているのだろうか?それとも学生たちに、これから入ってゆこうとする世界への準備をさせているのだろうか?」ある女性教授はそのように問いかけた。

始まり

2年前の2011年秋、ネダ・ナッヴァブ(Neda Navab)は講義参加ワークショップに出席し、信じられない面持ちで座っていた。イラン移民の娘であるナッヴァブ女史は、コロンビア大学の年度別クラスで代表だった学生で、マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてチーフ・エグゼクティブに助言を与え、ルワンダでは企業家にするべく女性を訓練してきた人物だ。それでも、25歳でビジネス・スクールに入った彼女は今、どうやって手を上げるかを教わっている。

以前軍に所属していた2年目の学生が、講義室の前に立ち、命令を下していた。目立つように手を上げること!遠慮がちに手を振るのは駄目!ナッヴァブ女史は新しくできた友人たちと驚きの視線を交わした。彼女には、学校が最優先課題である男女格差問題に真剣に取り組んでいる現場を目撃している、と言う意識は無かった。

ハーバードの女子学生はテストの成績は良い。しかし彼女たちは、最終成績に50%の重要度を持つ、講義中の振る舞いで酷く遅れを取っている。毎年のように、同じような階層構造が直ぐに顔を出す。投資銀行とかヘッジファンドでの経験を持つ、ほとんどが男性の学生たちが、質問の時間に積極的に発言し、女性を多く含む他の学生たちは黙ったまま座っているか、ためらいがちにしか発言しない。多くの学部長はこの問題を公には取り上げない。問題に言及することで女子学生の自意識をさらに強めることを恐れている。しかし学部長は、お互いを尊重することや礼儀をレクチャーすることを決断した。手を上げることをコーチするとかいった試みを増やし、各講義に速記者を配置し、誰がどんな発言をしたか、教授たちがバイアスの入った記憶に頼るのを防ごうとしている。

ビジネスの問題点について無作為に選んだ学生に教授が質問を浴びせる形式のケース・スタディ・メソッドも刷新し、問題解決チームとして学生をグループ分けするフィールド(Field)と呼ばれる新しいコースに変更した(男女格差問題はコース変更の唯一の理由では無いが、学部長は、この形式が問題解決の一助となると考えている)。新しく導入された成績評価ソフトウェア・ツールは、教授たちが、自らの質問と採点に関する性別パターンを直ちにチェックできるようになっている。教授の1人、ミコライ・ピスコルスキー(Mikolaj Piskorski)は、ノーリア氏のメッセージを次のように述べた。「私たちは学校レベルでこの問題を解決しようとしている。しかしあなた方は、それぞれで、自らのどんな行動がこの問題を招きよせたのかを特定する責任がある。」

このプロジェクトに参加したノーリア氏やフェイ女史、およびその他の人々は、自分たちを、この学校で成功したアウトサイダーだと見ていて、他の人々が同じことをするのを助けたいと考えている。初年度カリキュラムのチェアウーマンであるフェイ女史は、そのシルバー・ブラウンの髪の毛をボサボサにし、かつて大学バスケットボール選手だったときの情熱でもって、声高に主張する。「誰かが私に『駄目だ』と言ったとしても、私には『まだ駄目だ』としか聞こえません。」

何年にも亘る観察を経て、管理官と教授たちは、女性たちの講義における振る舞いに関して、あるファクターが特に破壊的であることに同意している。女性たち、特に独身の女性たちは、しばしば、学業上の成功と社交上の成功を天秤にかける傾向があるのだ。

その年の秋のある夜、手を上げるセミナーを笑い飛ばしたナッヴァブ女史は、エチオピア料理のレストランに座りながら、馬鹿な選択をしたかも知れないと考えていた。次の日はマーケッティングの中間試験だったのに、彼女は極めてビジネス・スクール的なデートに誘われていた。独身者の小さなグループをお酒の席で引き合わせる新しいオンライン・デート・サービスが、製品のテストをしようとしている。ナッヴァブ女史も来てみないか?「学部学生だったら、中間試験の後でねって、答えていたと思う。」彼女は後にそう言った。

しかし彼女は直ぐにも誰かと出会いたかった。たぶんこのハーバードで。彼女自身で言うところの「粒よりの人間たち(cream-of-crops-type people)から選べる最後のチャンス」だと、自分や他の学生たちが恐れている場所で。彼女は又、他の学生と同じように、自分のクラスメートたちが、自分たちの社交生活をマーケットの言語で見ていることを、すぐさま認識した。お互いを暗黙のうちにランク付けしているのだ。そして、他の学生と同じように、彼女も又、自分たちのステータスを経済の専門用語で説明するようになった。

最上級はファイナンスの世界で働いている男たちだ。豪華な車を乗り回し、贅沢な週末旅行をインスタグラム上で見せびらかしている人間たち。インタビューに答えた多くの学生が
そう主張した。幾人かは、いわゆる、セクションXに所属している。一時的に出たり消えたりする、ウルトラリッチな人間たちの秘密の社交場。退廃的なパーティーや旅行で知られる、ほとんどが男性でインターナショナルな学生たちだ。

女性たちは、しばしば外見で評価されることを、ナッヴァブ女史を含む数人の女性が発見してた。多くのものは、例えばテクノロジーとオペレーション・マネージメントのクラスで、まるでマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)の写真撮影があるかのような服装をする。男性の友人たちが他の女性について言っているコメント(「彼女は刺激的だよ、でも自己主張が強すぎだね」)から判断して、ナッヴァブ女史は、あまり望みを大きくし過ぎると、自分で冗談めかして言っているところの「ソーシャル・キャップ(social cap)」を傷つけてしまうのではないかと恐れている。経済用語のキャピタライゼーション(capitalization:総資産額)から取った言葉だ。

「私は1人の独身女性として、このキャンパスでどんな人間になりたいのか何も考えていなかった。」彼女は後に語っている。自分の優先事項が、「純粋にプロヘッショナルなのか、学術的なものなのか、それとも誰かとデートすることなのか?」

エチオピア・レストランでの製品トライアル・デートでパンをすくい取りながら、彼女は自分が、テーブルにつく男性の名前を一つも覚えていないことに気がついた。出席者はどんどん酒を飲んだ。翌日彼女は、二日酔いでテストに望んだ。成績は「惨憺たるものだった」と彼女は冗談で言う。

学部長たちは、女性たちがデート市場のバーター取引で学術上の成功を売り飛ばしてしまうのを止めることはできない。しかし学部長たちは学校を、より学究的な、酒びたりでない方向へ向かわせたいと望んでいる。「私たちは両方同時に実現することはできない。」M.B.A.プログラムの学部長、ヤンミ・ムーン(Youngme Moon)は言う。「私たちは学校を、リーダーシップを育てる場所にする一方で、学校の外で起きることに関知しないと言うことはできない。」

しかしハーバード・ビジネス・スクールの学生は通常よりもパワフルだ。学校の製品でもあり顧客でもある彼らは、年間50,000ドル以上の学費を払っている。彼らはプロフェッショナルであり、学部学生では無い。クラスのメンバーの一人は、プロ・フットボール・プレーヤーで、別の一人はアフガニスタンで軍務についていた。あるいは家族名がブランクファイン(Blankfein:ゴールドマン・サックスのチーフ・エグゼクティブであるロイド(Lloyd)の息子アレクサンダー(Alexander))だったりする。彼らは学校の歴史についてはあまり知らない。学部長たちは、女性に関する気のめいる記録に関してはあまり言わず、あいまいとした概念である「文化」とか「コミュニティー」とか「包含」に関することを語りたがる。

学期が進むに従って、多くの学生たちは、見たところ学部長が彼らの生活を改善したいと望んでいるらしいことへ、戸惑いを強くしていった。彼らはフィールド・コースに追加された課題に怒った。その課題は、多くの者の見るところ余分な作業であり、自分たちを忙しくしてパーティーに行かせないようにする企みに見えた。以前、各グループは、学生たちが自分たちで作っていたのだが、今や学部長がそれを決めている。

ハロウィンが近づくにつれ、数人の学生が講義にコスチュームを着てくることを計画した。しかし最後の瞬間にフェイ女史は、真面目な雰囲気を導入したいと言う希望と共に、セクシーな海賊衣装を着てくる可能性を排除したいと考えて、コスチュームを禁止する張り紙を出した。これには、多くの人が慨嘆した。「いったいH.B.S.はどこまでの責任を負うの?」クラスの共同代表ローラ・メリット(Laura Merritt)は問いかけている。「この学校は制服を制定するの?どこで止めにするんだろう?」

秋の学期が終わる数日前、投資銀行のベテラン、アマンダ・アップトン(Amanda Upton)は、クラスメートのほとんどが集まる前に立ち、ファイナンスについて、クイズをまじえたレクチャーをした。毎学期最終講義の直前に女子学生協会(Women’s Student Association)が開催する各学科のレビュー・セッションの1つだ。1時間使って1人の学生が膨大な資料を駆け足でクラスメートに説明する。初年度の学生では、女性で教授役を務める者が一人も居なかったこともある。今、アップトン女史は雄々しいパフォーマンスを見せ、ディスカウントキャッシュフローに関する戸惑いを吹き払い、債権の値付け方法を説明し、報償としてもらったクリスマス・キャンディーを皆に配った。

学校新聞の編集者ケイト・ルイス(Kate Lewis)は、他の多くの女性と同じように、学部長たちの努力を信じている。しかし彼女の考えでは、アップトン女史は、どの管理官よりもはるかに女性のイメージを強化した。「あれは一番強力なメッセージでした。目の前のこの女子は他の誰よりも良く知っているんだって」彼女は言った。

氷を破る

2012年4月のある日、クラスメートをふざけたパワーポイントのプレゼンテーションで笑わせることで有名なテキサス人、ブルック・ボヤルスキー(Brooke Boyarsky)を含む初年度クラス全員が、クラスルームでセクシャル・ハラスメントのディスカッションをするよう言い渡された。学生たちは直ぐに、ある女性が数ヶ月前、キャンパスの外のバーで男子学生に撫で回されたと学部の教官に訴えたことを知らされた。その女性は男子学生を特定していない。学部長はその訴えを取り下げるのでは無く活用しようとした。これは、酒飲みとその結果について議論するチャンスだ。「これ以上の一面トップは無いでしょうからね」ボヤルスキー女史は後にそういっている。

ボヤルスキー女史のクラスの人間は全員、彼女が鋭敏で面白いことを知っている。しかしキャンパス内の社交上の分類では彼女は目立たない。彼女は体重オーバーだし、ほとんど酒を飲まず、夜の外出やデートを避けていた。セクシャル・ハラスメントに関するたどたどしい話し合いを数分聞いた後に、彼女は手を上げ、別の問題を指摘した。学校の社交生活が外見とお金をめぐって回転していると言う問題だ。

「誰か他の人間が私に関して、セクションXに入るほどには可愛くも無いし金持ちでも無いって判断しているのよ。」彼女はそうクラスメートに言った。その声は震えていた。

クラスルームは急に活気付いた。自分たちが富に圧倒されていると感じる、と学生たちは発言した。富は学校生活をどこまでも追いかけてきて社会生活の全ての側面に影響しているように見える。数百ドルもかかる活動に参加しているのは誰なのか。ボストンにあるマンダリン・オリエンタル・ホテルのペントハウスに住む学生が主催するパーティーに招かれるのは誰なのか。何人かの学生は就職先を探す経験を全くしたことが無かった。彼らがハーバードに来ているのは家族の資産を投資する方法を学ぶためだ。その一方、別の学生は、社交上の関係を維持するために、年間数千ドルを借りなければならない。

この議論は、学部長が意図したトピックだけでは無く、多くの氷を破った。「その時まで、誰も『セクションX』について公言していなかった」バチュ氏はそう言う。その理由はおそらく、格差は性差よりも話し易いから、あるいは又、格差の方がより大きな分断を引き起こしているからだろう。学校においても国においても。

しかしそれは10回のセッションの中の1回に過ぎない。他の多くのセッションで男性はほとんど発言しなかった。その中の何人かは、そして少数の女性たちさえもが、学部長の性差の強調に対し、大っぴらに怒りを表した。彼らは「嫌になる」とか「無理して飲み込まなきゃならない」とか言い、こんなことを学ぶために金を払ってるんじゃ無いと抗議する。

パトリック・エルカーは反対者の1人では無い。彼は自分をフェミニストであり学部長のファンだと思っている。デューク大学の学部生だったころ、彼は女子バスケットボール・チームのマネージャーをしていて、選手たちの汗を床から拭き取ったり、汗で汚れたジャージーを集めたりしていた。

しかし静かに議論を聴いていて、彼は全体の構成が全て間違っていると判断した。彼らがほとんど知らない性に関連したエピソードの議論で、学期の最後に成績を評価する教授が率いる「89人の人間たちが全ての言葉を評価している。」

「僕も率直に発言したいさ、だけど僕はここに入るために数百万ドル費やしているんだ。」別の男性はインタビューに答えて、自分が失った給料を数え上げながら言った。「間違ったコメント1つで全てのネットワークがパーになるんだ。」男たちは別に鈍感なわけじゃ無い、と彼らは言う。彼らは単に、この議論が、自分たちが慎重に集めた社会資産の投資対象としては劣悪なものに過ぎないと見なしているだけだ。エルカー氏も、他の多くの学生が使う「強制」とか「父権的」とかといった、同じ言葉を使ってこの義務的会議を表現した。

その週、毎年恒例のパロディー・ショーのディレクター、アンドリュー・リーバイン(Andrew Levine)は、管理官から、学術的および社会的な保護観察下に置かれると告げられた。パフォーマンスの後、講堂で、別の学生たちがアルコールを飲んでいたためだった(彼の罪は、契約上の約束に従わないで訪問家族と飲食したことだった)。彼は社交上のイベントへの参加を禁止され、同じように学術上も観察下に置かれる。

それは正に、管理官に対する最悪の疑念が本当だと学生たちに信じさせる決定打だった。フェイ女史はリーバイン氏に関するその決定を行っておらず、学術上の観察下の措置を撤回しようと働いていたと、リーバイン氏は後に語っている。しかし学生たちは彼女を偽善者だと、酷いリーダーシップを発揮したリーダーシップの専門家だと呼んだ。数百人の学生が直ぐさま、「Free Andy」、又は「Unapologetic」と書かれたTシャツを着るようになった。

「何故学生たちはパパが嫌いなの?」ノーリア氏は、そう10代の娘に訊かれたと、学生たちに後で話している。

卒業式の数日前、2年生のネイサン・ビールマイアー(Nathan Bihlmaier)が、メイン州ポートランドのクラスメートと祝杯を上げた後、行方不明になった。最後に目撃された時、彼は余りにも酔っ払っていたので、バーテンダーにパブを出るように言われていた。明らかに誤って落ちたと見られるビールマイアー氏の死体が港から引き上げられたと、警察から告げられた時、ノーリア氏とムーン女史は学生たちと一緒に立っていた。

彼らの実験の初年度は、学生たちの行動に対して如何に少ししか影響を与えていなかったかと言う認識と共に、カタストロフィーを起こして終わった。ビールマイアー氏は酒飲みタイプでは無かった。学部長が招いたサンドバーグ女史は、フェミニストを称揚する精神でもって卒業スピーチをした。しかし式典の間、全ての人の目はビールマイアー氏の未亡人を見つめていた。彼女は外目にも最初の子供を身ごもっていた。

しかしながら、それら全ての混乱の中にも、学部長たちは希望の芽を見ていた。クラスルームでの残酷な冗談は、その他の形を変えた脅しと共に、以前よりはるかに少なくなっている。学生たちは、公共の場での口数の少なさに対し、活気溢れる個人的な会話について学部長たちに話している。女性たちの成績は上がり続けている。そして学部長たちに対するあからさまな怒りにも関わらず、全体としての学生たちの満足度は数年前よりも上がっている。

一方的な状況

2013年初頭、その冬一番寒い夜にも、フェイ女史はキャンパスから歩いて家に帰った。その日早くに来た留守電をiPhoneを片手に聞きながら。2人の幼い息子が寝た後、彼女はパジャマを来てダイニング・テーブルにつき、1杯のワインをゆっくり飲みながら、精力的にラップトップの電子ファイルにとりかかる。「本当?又なの?」彼女の妻、アンネ・モリス(Anne Morriss)ならそう訊くことだろう。

終身在職権を得て5年目のフェイ女史は、学部での募集に応募して学部長に昇進した。そして、多くの女性教授を支える努力を継続中だ。女性教官たち、特に終身在職権を持っていない人たちは、色々な問題に直面する。育児休職中の不安、古参教授と論文を執筆する機会の少なさ、そして、咄嗟には答えられない数学の質問を投げて自信を破壊しにきたり、着ているものにコメントしたりしてくる学生たち。

「女性の学部メンバーは、非常に敵対的な授業環境にいるんです。周りのものは守ってくれません」終身在職権を得ずに離れたある女性は、そう話した。現在在職しているある教師は、「ワードローブ・マルファンクション(wardrobe malfunction:服によって予期しないで体の部位が見えてしまうこと)」を恐れる余り、授業にはあつらえのスーツしか着てゆかない。彼女の上着は両面テープで、見えないように肌に固定されている。

今、フェイ女史は、学部の年少メンバーの保護者として、彼女らが教えるほとんど全ての授業の全ての瞬間に目を配り、次の授業でどうすれば良くなるか助言を与えている。彼女は、混乱を避けるために、他の教授たちが助言を与えることを禁止している。しかし、フェイ女史の同志たちにさえ、疑念を持っている者が居る。

各学期の終わりに、学生たちは教授たちのティーチング・スコアを、最低の1点から最高の7点までの間で採点するが、女性の初年度教授のスコアは救いがたいものに見えた。多くの男性教授は長いキャリアを積んだ後にハーバードへやってくる。彼らは実社会の経験談で学生たちを楽しませることができる。そもそもビジネスウーマンの絶対数が少ないために、女性教授は学界の経験しか無い場合が多い。そして学生たちは女性のスターを例外的存在と見る傾向がある。

「私が会った女性教授は、明確に男性教授よりも弱々しく感じました。」2011年の卒業生、ハル・テッコ(Halle Tecco)は言う。「彼女たちは本当に、男性たちのようには講義を進めることができていませんでした。」

例えば、トップ・ファイナンス教授のリチャード・S・リューバック(Richard S. Ruback)と、数十億ドルを扱うプライベート・エクイティの設立者、ロイス・G・ユードフ(Royce G. Yudkoff)がチームで教える、2年次に人気のコースを見てみよう。この2人は学生たちに、他の何よりも、どうやって「サーチ・ファンド」を始めるかを教えている。サーチ・ファンドは、買収する会社を探している間に資金を供給してくれる基金だ。最近サーチ・ファンドは、ビジネス・スクール卒業生でトップの者たちが追い求める最も熱狂的でリスキーな、そして最も見返りの大きい仕事であり、オーナーとかチーフ・エグゼクティブになる近道と見られている。

2人の教授は率直で面白い。ある時は学生をあおり、別の時にはからかう。2人はハーバード・ビジネス・スクールを卒業することで得られる金銭的未来を体現している。もし教授たちに気に入られれば、助言を貰えたり、援助さえしてくれるかもしれないと、学生たちは知っている。

フェイ女史は夜、ノートを取りながら授業風景のビデオをレビューし、自信を植え込む方法を探している。単純に人気を得ようとする女性は、例えば遅く入ってきた学生を叱責しないとかして、しばしば自分たちの権威を擁護することに失敗する。しかし、ひとたび攻撃を受けると厳しすぎる反応をして、防御的に振舞ってしまったりもする(「いったい何処からそんな考えを拾ってきたの?」)。

フェイ女史は彼女たちに、親しみやすさと高い自信を同時に発するよう即す。そして信頼を得ようとして自分の研究について独白するようなことを避けるよう助言する。「このクラスは貴方には少し重荷かも知れません。そして学生にはすこし物足りないかも知れない。」翌日フェイ女史は彼女たちにそう言うだろう。

学期末までに女性たちのティーチング・スコアが余りにも高くなったので、彼女は何か間違いが起きたのかと想った。ある教授のスコアは4から6へ上がっていた。しかし、女性教授を助けるため傾注された、膨大な注視や努力にもかかわらず、女性教師の絶対数には全く直接的影響を与えられなかった。学校に教えにやってくる女性の数は余りにも少なく、男女同数にするのはほとんど不可能にさえ思える。

最後の学期が近づくに従い、学生たちは、自分たち自身の雇用という差し迫った問題に放心状態になる。以前の卒業生たちと同じように2013年度クラスも、卒業後、ある程度性別によって分かれてゆく。より多くの男性がファイナンスとかの高い給料がもらえる業務へ行き、より多くの女性がマーケティングとかの低い給料の業務へ行く。

エチオピア料理で出会ったM.D.(Doctor of Medicine:医学士)とM.B.A.を持つ男性とデートしているナッヴァブ女史は、相手が見つかってから前より自分のキャリアに集中できるようになったと感じている。彼女はカリフォルニアでのスタート・アップの仕事に満足してはいるが、もっと給料の高い多くの仕事について、自分や他の女性は耳にすることさえできない、と指摘する。男子学生たちは、コネとかヒントとかを自分たちの間だけでやり取りしているからだ。

これはビジネス・スクールの女子学生が直面する一方的環境だ。知的名声に関して同世代の男性と同等、もしくは上回っていても、彼女たちは「お金に触る」ことができない。不動産プライベート・エクイティ投資家で学部メンバーのノーリ・ジェラルド・リーツ(Nori Gerardo Lietz)は、そのように要約した。イブニング・ウェアのレンタル・サービス会社Rent and Runwayのような成功するスタート・アップを設立した女性の同窓生は存在するが、大きな金銭的報酬を得ようと言う話になると、ほとんどの女性はゲームに参加することもままならない。

前年の学科外プレゼンテーションで、1人の女子学生がベンチャー・キャピタルのハイランド・キャピタル・パートナー共同設立者、ウィリアム・ボイス(William Boyce)に質問し、ベンチャー・キャピタル業界に入りたいと考える女性に助言を求めた。その場に居た数名の学生によれば、彼は笑いながら言った、「止めておけ」と。彼は続けて言った、男性のパートナーたちは女性を求めていない、この警告は親切心から言っているのだと。

数名の女性が抗議してその場を立ち去ったが、他の者たちは、彼が真実を言っていると信じた(インタビューの中でボイス氏は、女性はベンチャー・キャピタルに入るべきでは無いと言ったことを否定している。しかし管理官によれば、学生の要求で学校は同社に接触した。彼はその会社を数十年前に離れていた)。

学部長たちは、権力を得る方向へ動くだの、労働力として留まるだのといった、キャリア選択に関わる問題に注目してはいなかった。学部長たちはまず、キャンパス内の問題に取り組む必要があった。その一方、収入格差はジレンマを生んでいる。学部長たちは、学生たちがキャリアの中で財政的に破産するのを、なるべく少なくしたいと望んでいる。「人生の早い段階で自らの情熱に導かれた選択をするだけの勇気を持ちなさい」ノーリア氏は学生たちにそう話した。

多くの女性たちが、買収とビジネス経営に関するリューバック氏とユードフ氏の講義を選択しており、その中には、素晴らしいファイナンスのプレゼンテーションをしたアップトン女史も含まれている。彼女は30人から40人の同級生がサーチ・ファンドを計画していると推計している。そのほとんどは男性だ。唯一人、真面目一方のエンジニア、ジェニファー・ブラウス(Jennifer Braus)を除いては。教授たちは最終的にブラウス女史に助言と資金の提供を決断した。ほかのハーバード女子学生も後に続くことを望んで。「成功以上に良い前例は無いからね」リューバック氏は言う。

アップトン女史は、婚約者の住むピッツバーグで、裕福な家の投資を管理するという、よりリスクの少ない仕事を取った。「フロンティアに挑戦する人生か、安易で幸福な人生か、どちらでも選べるでしょう。」彼女は言った。

前を向く

卒業式週間に行われるあらゆる式典やレセプションの中でも、もっとも尊重されているのはジョージ・F・ベーカー特待生昼食会(George f. Baker Scholar Luncheon)だ。クラスのトップ5%のために、日の光がサンサンと降り注ぐダイニングルームが用意され、そこには、自分の子供が達成した業績に、興奮したり怖気づいたりしている両親たちが詰め掛ける。

最近、昼食会の派手やかさは、女性特待生の少なさによる居心地の悪さもあって、若干薄らいでいた。しかし今年、ベーカー特待生の約40%が女性だった。これは、誰も正確に理由を説明できないくらいの華々しい上昇だ。はたして教授たちは、今までは意識していなかったバイアスを拭い去ったのだろうか?それとも改善された環境で女性たちはより良いパフォーマンスができたのだろうか?あるいは、学部が望ましい結果を得るために、女性の成績を甘くつけたのだろうか?

「私の頭の中には、この3つ全部が浮かんだよ。」ピスコルスキー教授は言う。しかしノーリア氏は、教授たちが、性差解消のために新しいソフトウェアや主観的な講義参加スコアを使ったと想う理由は無いと言っている。「太陽の暖かい光こそが最高の消毒薬さ。」彼は言った。そしてこの言葉は、このプロジェクト全体を通して自分を導いてくれた言葉だ、と彼は言う。

ベーカー特待生の1人に、ボヤルスキー女史がいる。クラスで常に真実を話す人物だ。昼食会の2時間後、彼女は、数千人に及ぶ卒業生、学部メンバー、両親たちにスピーチするために壇上へ上がった。学生委員会の前で行った選抜で、約2ダースの男性と2人だけの女性を相手に、彼女は、かつて学校の記憶にないような、ウィットのある抑制の効いたスピーチで勝ち残った。

「私は、このH.B.S.へ、正に『非伝統的志望者』として入りました。病的に太った人物として。」彼女は言った。

彼女のスピーチのテーマは、必要ではあるが苦痛を伴う変化を起こすための、勇気を探し出すことだ。「勇気は、全く新しい、ここの学生たちよりも若い、教授であり、赴任して一番最初の日に、一番最初の講義をするところでした。」彼女は言う。「勇気は、ある1人の女性です。」――撫で回されたエピソードを報告した女性だ――「彼女は、男女の関係において、H.B.S.にはまだまだやることがたくさんあると、学校全体を覚醒させたのです。」

ボヤルスキー女史は続ける。彼女はハーバードでの最終年次に100ポンド以上体重を減らした。「勇気は私に、防御的に振舞おうとする欲求と戦うことを求めたのです。それは、特別にこの問題に関して、私が長いことそうであったと信じる振る舞いなのです。そして、何が変化を妨げているのか見つけ出すために、自分の内面を、厳しく、正直に見つめなおすことを求めたのです。」彼女は言った。

スピーチが終わる前にもう、彼女の携帯はクラスメートからのe-mailやテキストメッセージで鳴り始めた。彼女は今、誰もがもっと良く知りたいと想う女性になっていた。死亡記事を読んでその仕事をたどって見たいと想うような人物の卒業式週間版だ。彼女は、自らが可能な限り最も望ましい事例となることで、この2年間の実験を閉じた。「彼女こそ、皆が世界に見せたいと想って選んだ学生です。」ムーン女史は言う。ムーン女史は次の学年で、2年生に多くの波乱含みの対話をリードさせるよう計画している。学生こそが最も熱心な賛同者になりうることを実感しながら。

管理官たちと2013年度クラスは、別々の道を進んでゆくが、彼らの実験は続く。学部長たちは実験の継続を宣言している。しかしどのくらい激しく進めるかは言っていない。より多くの女性志望者を引き寄せるために、終身在職権プロセスを改定するかも知れない。あるいは、女性志望者を雇用し、昇進させる会社にのみ、キャンパスでの募集を許可するかも知れない。「私たちは第一段階では進歩を達成することができました。しかし、それによって判ったのは、なんてことでしょう、これがどれだけ根の深いものであるか、と言うことだったんです。」フェイ女史は言う。

学生たちは新たな仕事へと散ってゆく、自分たちの運命に最高に興奮しながら。彼らが経験したものの独特な性質のために、これから出される同窓会報や、開かれる同窓会は、どれだけ高く女性たちが上れるか、そしてどんな価値観を卒業生たちが植えつけてゆくのかを計るリファレンダムとなるであろうことを、彼らは知っている。それこそが、彼らが一翼を担った実験に対する真の判決となるのだ。

ダラスのマッケンジー社で、コンサルタントとしての新しい仕事に就いたボヤルスキー女史は、あたりを見回して、自分が圧倒的多数の男性の中にいることに、しばしば気がつく。しかし彼女は、どっちにしろ声を上げてゆくことになるのだろう。自分は今、学生時代よりも頻繁にデートしていると、若干の情熱をこめて彼女は付け加えた。

「30回目の同窓会へ行くのに、今から凄く興奮しているのよ。」彼女は言った。

~~ここまで~~

次回更新は10月5日ごろになると思います。
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英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

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