スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

中国に美術品市場をでっち上げる

中国に関する記事をUpします。

記事を書いたのはデイビッド・バーボーザ(David Barboza)さん、グラハム・ボウレイ(Graham Bowley)さん、アマンダ・コックス(Amanda Cox)さんです。元記事はここにあります。

中国の美術品市場が抱える問題についての記事です。
例によって固有名詞の漢字表記はいい加減です。予め謝罪しておきます。

~~ここから~~

中国に美術品市場をでっち上げる

2011年5月、チャイナ・ガーディアンズが開催するスプリング・セールのイブニング・オークションで、中国20世紀の名匠の一人、斉白石(Qi Baishi)の水墨画「松の木に停まる鷹(Eagle Standing on a Pine Tree)」が落札された時、その驚くべき値段は注目の的となった。6540万ドル。それまでどの中国画も、オークションでそんな高値を付けたことが無い。この取引は、中国が世界最大のオークション・マーケットとして2011年末までに合衆国を凌駕するだろうという印象を世界に与える上で、象徴的な出来事となった。

しかしながら、オークションから2年が経っても、斉白石の代表作は依然として北京の倉庫でくすぶっている。競り落とした者は、作品の真贋に疑いが持ち上がったために支払いを拒否しているのだ。

「この市場は今、非常な疑いの目で見られている、」国際的オンライン・オークション・ハウスであるオークショネイタ(Auctionata)を運営し、アジア美術の専門家でもあるアレクサンダー・ツァッケ(Alexander Zacke)は言う。「今、中国本土で行われるオークションの結果について、真面目に取り上げる人間は誰もいない。」

全くのところ、中国の沸騰する市場に対して美術界が魅惑されている今この時点においても、ニューヨーク・タイムズが6ヶ月に亘って調査したところでは、多くの取引、即ちここ数年間に国内のオークションで落札されたと報告されているものの内、約3分の1の金額を占める取引が、実際には行われていない。

それと同じくらい問題なのはこの市場が贋作で溢れていることだ。しばしば贋作は大量に生産され、腐敗の温床となり、企業幹部が政府高官の歓心を買うために送る賄賂として使われている。

確かに不正は国際美術品市場においても御馴染みのものではあるが、この国の市場は不正に対して特別脆弱だと、専門家は警告する。何故なら中国における多くの産業と同じく、美術品市場も監督官庁が追いつかないほどの早さで成長しているからだ。

事実として、社会主義を掲げる社会が資本主義へと傾倒してゆく様子が、美術品市場以上によく観察できる場所は他に無い。中国における多くの贅沢品売買と同じように、この地の美術品バイヤーは、新富裕層の鬱積した消費行動によって煽られている。20年前は美術品市場など、ほとんど無いに等しかったこの国において、去年は需要があまりにも大きく、オークション金額は2003年に比べて900%増加し89億ドルになった(2012年の合衆国オークション市場は81億ドルだった)。

中国における贅沢品購入の風習は、しばしば西洋を真似る傾向があるが、美術品に対する需要は中国独特の趣向を持っている。他の世界がポロック(Pollock)の作品やロスコー(Rothko)の作品に高値を付けている間に、中国のバイヤーは中国伝統の作品を追い求めている。15世紀の名匠の作品とか、現代作家で言えば、例えば、張大千(Zhang Daqian)のような古風なスタイルで製作することを選択した人の作品だ。

この国における過去の文化への敬意が、今、贋作の隆盛に非常に大きく貢献している。この国の芸術家は、過去の中国の名匠を真似るよう訓練される。彼らは定期的に高い品質で、過去の絵画や陶器やヒスイ工芸品のコピーを作り出している。そういった伝統が、新たに勃興し豊かになった美術品市場と混ざり合った。そうして、高い技術で作られた再生産品の多くが、しばしば本物として市場に提供されることになったのだ。贋作の蔓延に関して言えば、これ以上に条件が整った環境は、他に無いだろう。

「贋作は今、最大の問題です、」規模において国内第2位のオークション・ハウス、チャイナ・ガーディアンの代表でディレクターの王楊南(Wang Yannan)は言う。「全ての中国人が先ず思い浮かべるのは、この作品は偽物ではないかということです。」

何年もの間、多くの贋作が気付かれること無く、バイヤーからバイヤーへと渡り、その度に値段が上がってゆく。しかし、人目を惹くスキャンダルによって贋作の浸透具合が明らかになるにつれ、次第に、大きな市場においても疑念が植えつけられていった。3年前のあるケースでは、オークションで1000万ドル以上の値段で売却された、20世紀の芸術家、徐悲鴻(Xu Heihong) の作品とされる油絵が、実は作家の死後30年経って、中国の指導的芸術学校の一つで学生が授業の演習として描いたものであることが判明した。

もっと恥ずべき事件も起きている。去年7月、政府は河北省の私営美術館を閉鎖する決定をした。その理由は、唐王朝の陶器の花瓶を含む40,000点の工芸品のほとんど全てに対し、贋作の疑いが持ち上がったためである。

「美術品市場には常に贋作が存在しています。問題はその比率の高さなんです。」以前ハーバードでアシア芸術のキュレーターをしていて、現在クリスティーのコンサルタントをしているロバート・D・モウリー(Robert D.Mowry)は言う。

贋作への懸念と経済の減速は、中国美術品市場の熱を冷ましつつあるように見える。世界中の市場を研究しているリサーチ会社、アーツ・エコノミックス(Arts Economics)によれば、報告されている取引額は、2011年にピークをつけた後、去年24%下がった。今年は2012年よりもわずかに良い程度だと言う。

中国のオークション業界と政府は問題を認識している。特に、美術品市場は安全な投資先であると、多くの者に認識されているため、不正の一掃と消費者心理へのさらなる損害の防止が叫ばれている。

「中国人の大多数は中国の株式市場を信頼していません。」中国美術のコンサルタント、メラニー・オウヤング・ラム(Melanie Ouyang Lum)は言う。「住宅ブームは途方も無い減速に見舞われています。多くの人が投資の対象として美術品市場に注目しているんです。」

事実として、風景画で知られる20世紀の芸術家、張大千は、収集家で無い人には名前が知られていないが、世界で最も良く売れている芸術家として、ピカソ(Picasso)やウォーホール(Warhol)と並ぶ数人の中国人画家の一人だ。

中国は文化を経済発展の中心領域の一つとして位置付けている。そして活発な美術品市場をソフト・パワーの有効な道具と見ていて、審美眼や美しさの中心地として中国社会を売り出すことで、政治や人権の問題に対する国際的な注目を逸らそうと考えている。しかしながら、中国人は、美術品市場を浄化するに当たって、法体系の弱さという弱点を抱えている。オークション・ハウスは作品が贋作であった時に負う一切の責任を免れているのだ。

贋作問題は、支払い不履行件数の増加を助長させている。中国競売業協会(China Association of Auctioneers)が行った過去3年間の中国本土のオークション・ハウス取引に関する研究によれば、150万ドル以上する美術品を扱う売買の約半分、市場のかなりの割合を占める取引が、バイヤーが支払いを果たしていないために完了していない(合衆国の主要オークション・ハウスについて言えば、同等の価格の作品に対する支払い不履行は、無視して良いくらいでしか無いと、複数の専門家が言っている)。

「中国国内の一般的な環境には改善が必要です、」協会のチェアウーマン、張延華(Zhang Yanhua)は言う。「御存知の通り、中国は未だ、国内で法治を築き上げようとしている途中なのです。」

支払いの不履行や遅延に関して、専門家は又、別の説明もしている。それによると、全体の取引件数の中には、入札者がバイヤーの心変わりを受け入れてしまうケースだとか、自分が収集する特定の作家に対し、作品の値段を吊り上げるためだけに入札するケースなどが、含まれてしまっていると言う。

しかしながら、報告される金額に怪しげな点があったとしても、中国の銀行や国有会社やビジネス界の大立者がブームに煽られて投資を続ける中、過去十年間に美術品の金額は彗星のような速さで上昇したことは間違いない。美術品は今や現金の一種のような物となり、中国国内の収集熱は留まるところを知らず、オークションには大群衆が詰め掛けるようになった。中国のテレビでは、20以上の番組で、文化遺産の収集だとか見分け方とかのヒントを放送している。そして夜遅くテレビで流れる、情報提供を兼ねたコマーシャルは、名高い名匠の弟子の作品集を2,500ドルで買えば直ぐにリッチになれると、視聴者に約束している。今日これを買えば、直ぐにも100,000ドルの利益が確保できるとコマーシャルは宣言する。あまりにも多くの金がかけられているために、中国人美術品商は、中国の遺産を買い戻そうとヨーロッパやアメリカに殺到する。中国の骨董品を収蔵する美術館へは盗賊もまた押しかけている。工芸品のブラック・マーケットが出現し、いわゆるトゥーム・レイダーズ(墓あらし)が、売り物になりそうなお宝を探して地面を掘り返している。

市場の弱点をなんとかしたいと言う欲求は、西洋のオークション・ハウスが中国市場に参入することを制限するという、長く続いた法律の緩和に何らかの役割を果たしたと思われる。

サザビーズは今、国営企業とジョイント・ベンチャーをしており、クリスティーは今年、国際的オークション・ハウスとして始めて中国で独自に活動するライセンスを取得した。市場に高い標準を設け、競争を育むのに有効であると思われる進展だ。オークション協会代表の張女史は、西洋のオークション・ハウスを導入することは、池へワニを放すようなものだと言う。

「魚たちはもっと速く泳がなければならなくなるでしょう。」彼女は言った。

高騰する文化の値段

10年も経たない前、中国の美術品市場は未だ全くのんびりしており、依然として文化大革命の気分が残っていた。文化大革命中、贅沢品はブルジョワの象徴と見られ、紅衛兵が家屋を襲撃した際、没収されて破壊されていた。

北京を拠点とする有名な収集家、馬末都(Ma Weidu)は、1980年代でもまだ、小さな工芸品を手に入れるのが如何に容易であったか、よく覚えている。皆、何の見返りも無しに、あるいは数本のタバコと引き換えに工芸品をくれた、と彼は言う。時として小額の手数料を払うことはあったと言う。

「皆言うのさ。『全部持ってゆけ。俺が欲しいのは洗濯機なんだから』」彼はそう振り返る。

政府が文化遺産の売買に対する規制を撤廃する1990年代初頭まで、オークションが行われることはまれであった。そして規制が撤廃されても、2004年になって、人々の収入増加に焚きつけられるまで、美術品市場がテイクオフすることは無かった。

現在、中国には350のオークション・ハウスが存在し、美しい芸術品を扱っている。最大の2つ、ポリ・インターナショナル・オークション・カンパニーとチャイナ・ガーディアンは、東京やニューヨークを含む複数の都市に事務所を持ち、中国国内の支配階級と緊密な繋がりを持つ十億ドル規模の大企業だ。

しかし市場が成長すると共に、その暗部も同じように成長した。アナリストによれば、特定の芸術家の作品を数多く抱え込んだ収集家や投資家、そしておそらくは美術品投資ファンドも、自分たちが保有する目録全体の価値を高めようとして、作品の値を釣り上げる価格操作がはびこっていると言う。専門家の話では、時としてオークション・ハウスが自ら偽りの入札を行うと言う。中国人はこういった値を釣り上げるプロセスに名前を付けていて、「清炒(stir frying)」と呼んでいる。

専門家の話では、所蔵する美術品の世話を注意深く行い、個人所有の美術館で展示したりする収集家も存在してはいるが、多くのバイヤーは主に、利益の為に作品を転売することを目的とした投資家だと言う。対象となる作品は転売され、さらに又、転売される。斉白石の絵画「魚と海老(Fish and Shrimp)」は、10年の間にオークションで4回売られた。そして、2002年に30,000ドルだった値段は、去年12月、794,000ドルを付け、年末には552,000ドルまで下がった。

多くのバイヤーにとって、転売する機会を得るのは最優先事項だ。先月、北京のオークションで広州から来た4人の男は数億ドル相当の絵画数枚を買い込んでいた。「ここに居る多くの人間は、単なる転売人さ、本当の仕事を持っているわけじゃ無い。」白いボマージャケットを着た一人の男はそう言った。「俺たちはあれを買って、教養のある金持ちに転売するのさ。」

アナリストによれば、美術品の転売は、支払い不履行問題の一因となっていると言う。オークションの前にバイヤーは、おそらくは作品に興味を持つ収集家を見つけていて落札に成功する。しかし収集家との取引に失敗すると、支払いを拒否するのだ。

そして又、不払い問題が持ち上がるのは、中国の美術品市場が、経済学的に言って若すぎて、参加している人々が金持ちになったのが、つい最近であるためでもある。

「オークションで値を付けることが、拘束力を持つ契約であるかどうかについて、西洋と東洋の間には依然として大きな相違が存在します。」北京にあるユーレンス現代美術センター(Ullens Center for Contemporary Art)のディレクター、フィリップ・ティナリ(Philip Tinari)は言う。「若い成金たちは、オークションで数枚の絵を買った後、出てゆく時になって『13と11と7と6と5は、欲しいやつじゃ無かった』なんて言い出します。そんなことが毎回起きるんです。」

オークション・ハウスは、たいていの場合、不払いを糊塗する。不履行となった取引を本当の売買として報告するのだ。新しい高値として発表しさえする。そして後で記録を修正する。このような行為は誤解を招く。歳入を粉飾し、市場が沸騰していると見せかけ、高値を維持すると、業界の専門家は述べる。

市場の信頼性毀損を危惧する中国高官は、このような振る舞いに恐れをなしたあまり、数年前から、商業や文化に関連する省庁などの国家機関、およびオークション協会が、市場に介入するようになった。

協会は今、大きな改革計画の一部として、不払いデータを集めている。ふとどき者を洗い出す努力の一環としてその結果を公表するのだ。協会は今、オークション・ハウスに、不払い記録をもつバイヤーのブラックリストの作成を即すと同時に、入札予定者から、高額の積立金を要求することも推奨している。政府は2008年から2011年にかけて、種々の問題で、150のオークション・ハウスのライセンスを取り消した。その中には贋作を取り扱った件も含まれている。

多くの収集家や投資家は、たとえ不正や贋作があったとしても、あまりにも多くの熱狂と利益が市場にはあり、撤退はありえないと言う。新たな資金が美術品を購入しようと、オークションに注がれ続けている現状ではなおさらだ。

「新聞紙には、はした金で買った美術品が数百万ドルで売れたなんて話が、いつも載っている。」北京の精華大学で美術品市場と経営に関する講座を開いている張瑞(Rui Zhang)は言う。その一方、芸術家で批評家、かつキュレーターでもある江伊奉(Jiang Yinfneng)に言わせると、このような加熱した市場で被害を受けるのは、得てして経験の無い人たちだと言う。「私の友人の何人かは、美術品を買うのに家を担保に入れました。」彼は言う。「何人かは高金利で借金をしています。」

中国の美術品市場を駆動するエンジンの一つは贈与文化だ。9月の中秋祭になると、この贈与文化のために、地方政府の職員が大挙して北京を訪れ、美術品やお酒やその他の品々を政府高官の元へ届けようと、交通渋滞をさらに悪化させる。

そして美術品はさらに巧妙な贈賄の企みにも使われている。いくつかのケースで、政府高官は、直ぐにオークションに出すようにとの指示と共に美術品を受け取っている。贈賄側は、それを高値で競り落とすことで、美術品を現金と同様の賄賂として使い、かなりの額の利益を政府高官に与える。

「現金と違って、その値段は判り難くなる。」上海にあるヒマラヤ美術館(Himalayas Art Museum)のキュレーター、張平介(Zhang Pingjie)は言う。

そのような場合、贈られた作品が本物かどうかは関係無い、と専門家は言う。何故なら、バイヤーは何れにしろ、大金をはたくつもりでいるのだから。そして仮に企みがばれたとしても、贋作の価値が元々低いが故に、刑罰も低くなるのだ。

美術品を使った公職者への賄賂は、あまりにも普遍的で、中国語にはこの種の美術品贈賄を意味する特定の言葉さえある。

このような行為は、「優賄(yahui)」と呼ばれる。意味は「優雅な賄賂」だ。

こういった贈賄行為は、数年前に重慶市で、賭博場やバスやタクシーを牛耳る犯罪組織を一斉摘発した時に、明るみに出た。

2009年、当局は犯罪組織をかばっていた人物を逮捕する。市の副警察署長を務めていた温彊強(Wen Qiang)だった。

温氏の財産を捜索して出てきたのは、油紙に包まれて池に沈められた300万ドル相当の現金を含む時計やワイン等、世界中で汚職に関連すると見られている品々だ。

しかし捜査官たちは同時に、山腹に建てられた温氏のヴィラや、クラブアップル・ムーン・レジデンスにある彼の自宅から、驚くほど広範囲で高価な美術品を発見した。彼は、象牙の彫像や石仏の頭部など、100体以上の美術品を贈賄していたと言う。陶器の入れ物に入った高価な書の掛け軸とか、本棚に納められた張大千の絵画が見つかっている。

温氏は翌年、この罪によって処刑された。

「美術品市場にいるのは誰だと思います?」北京にある東方大学(Oriental University)の美術専門家で鑑定士でもある李延鈞(Li Yanjun)は言う。

「政府高官ですよ。」彼は言う。「彼らは後ろに隠れていて、他の人は、彼らのために入札する。あるいは彼らが持っている作品を買わされるんです。」

新品の骨董品

翡翠から切り出されたその椅子と化粧テーブルは、セットになっていて、約2000年前の漢王朝時代のものだと言われていた。北京で2年前、それがオークションに掛けられた時、ファンファーレと共に3300万ドルの値がついた。

しかし専門家が、漢王朝時代(紀元前206年から西暦220年まで)、中国人は椅子に座らなかった事実を指摘する。その当時、人々は床に座っていたのだ。

最終的に、中国東部の江蘇省にある村、邳州(Pizhou)で、翡翠取引を仕切っている人物が、その作品は2010年に村の職人が作ったものであることを認めた。

邳州において、宝石および翡翠業協会の代表を務めたことがある王如綿(Wan Rumian)は先月、インタビューに答えて、作品を骨董品に仕立て上げたのは職人では無くだ美術商だと言った。

「あれはそんなに出来の良い物じゃ無かった。」彼は主張した。

しかしその年は、中国美術市場を騙して高値を引き出すには絶好の年だった。

如何わしい「骨董品」の痕跡、インチキ絵画とか偽ブロンズ像とかは、今日、中国全土に残されている。中国南西部の険しい山中にある景徳鎮市では、小さな工房が、明朝や清朝の陶器の模造品を作っている。職人たちは、触感や光沢の僅かな違いを再現するために、薪を燃料とする窯まで建てている。

河南省中央に位置する埃まみれの村、岩間(Yanjian)では、数日前に作られたブロンズ製の鐘とか、祭祀に使うぶどう酒入れとかを、アンモニアで腐食させ、年月による錆で出来た緑青に似せて、古墳から発掘された工芸品に見せようとしている。

そして北京、天津、蘇州、南京では、高い技術を持つ画家や書家が、尊敬される名匠の筆使いを真似ようとしている。

いわゆる伝統的中国絵画は、山や川や森林の自然の美しさを、古典的スタイルで描こうとする。それらは書と共に、中国美術品市場を駆動する原動力だ。両方合わせて去年オークションで使われた金額の約半分に達している。従って国中の画家たちは、斉白石とか傅抱石(Fu Baoshi)のような名匠の作品をコピーしようとしている。

「私は絵画工房で700人から800人が、完璧な分担作業の元に斉白石の作品を作っているのを見たことがあります。」北京を中心に鑑定士として仕事をしている張金華(Zhang Jinfa)は言う。

中国に本社を置く美術データ会社アートロン(Artron)が、去年行った研究によれば、中国国内20箇所の街に住む約250,000人の人々が贋作の作成や販売にたずさわっている。ここ数ヶ月の間、そういった場所を幾つか訪れてみたところでは、製作現場は繁盛しているようだ。

古くから陶器製造の中心地である景徳鎮市では、繁忙する工房によっては数千人を雇っている。工房では上半身裸の職人がロクロに屈み込み、土を回しながら古典的な形を作り出している。生産ラインの先では、絵付け係が筆を絵の具に浸し、中国伝統の花のパターンを陶器の上に模している。そういったパターンは、しばしば、近くの机に広げられたオークション・カタログから直接取られている。

景徳鎮で最も知られた陶器模造業者に、熊建軍(Xiong Jianjun)がいる。彼は8年間、北京の国立博物館の求めに応じて、乾隆帝の花瓶の模造品を作っていた。

「模造品を作るには、基本的なことを勉強しないといけない。そしてその当時の人がどうやっていたのか推測できないといけないんだ。」熊氏は言う。彼の話では、模造品の幾つかは、許可してもいないのに骨董品として売られていると言う。

中国においては、模造の伝統は、単なる過去に対する敬意以上の意味を持っている。真似するに値する様式で美を捕らえたことに対する賞賛なのだ。「新たなるものによる衝撃」が尊重される西洋と異なり、中国は伝統に価値を見出す。そしてベスト・セラーとなるのは、しばしば、数百年前に作られたものに従順で、良く似た作品だ。

格式の高い美術学校の学生たちは、中国語で「臨模(lim mo)」と呼ばれる名匠の真似をさせられる。贋作とかイカサマが伝統の一部であるわけでは無いと専門家は言う。しかしながら、30年前に亡くなった有名な画家、張大千のような人物は、専門家をひっかけるのが大好きだった。

「張大千は、自分は昔の名匠たちと同等だ、と感じていたんです。」ニューヨーク・メトロポリタン美術館でアジア部門のチェアマンをしているマックスウェル・K・ハーン(Maxwell K. Hearn)は言う。「そして、それを証明するテストは、自分が名匠の作品をコピーできるかどうかにかかっていました。」

張氏の模写に対する悪戯好きな態度は、彼が1967年に、ミシガン大学美術館で行われていた17世紀の画家、石濤(Shitao)の展覧会を観に行った時の逸話に良く現れている。彼を案内したガイドは、二世紀以上前に亡くなったこの有名な画家の作品を展示できることに、誇りを抱いていた。それで彼らは、張氏が壁にかかった数々の作品を指差して、笑いながらこう言った時、非常に驚いた。「あれは俺が描いたやつだ!あっちのもだ!」

「張大千は、そう言ったんです。」現在は引退しているミシガン大学教授で、1960年代に張氏と初めて会ったマーシャル・ウー(Marshall Wu)は言う。「彼が真面目なのか、ふざけていたのか、本当のところは判りません。でも彼は実際に石濤の贋作をたくさん描いているんです。」

張氏の作品は、今、北京にいる彼の弟子である画家で、やはり伝統に基いた自分なりの古典的作風を持つ梁召金(Liang Zhaojin)に、モデルとして使われている。

「私は張先生を誇りに思います。」彼は言う。「そのスタイルを継承し発展させたいと思っています。」

もちろん、その作家が存命であれば、贋作を見つけるのは容易になる。アートロンは最近、人気画家、何家英(He Jiaying)の作品とされるもの100点を集め、同氏の助けを得てその内80点を贋作と判定した。

「基本的に全ては仲介者がコントロールしているんです。」美術商と偽って取材し、3冊の本を書いた作家の呉樹(Wu Shu)は言う。その内の1つは「誰が中国から騙し取っているのか?(Who Is Swindling China)」と言う題名だ。

「彼らは商品を三つのカテゴリーに分けます。最高の品質を持ったものはオークションへ行きます。中位の作品は骨董品市場。そして出来の悪いものは蚤の市へ行くんです。」呉氏は言う。

専門家によれば、中国の商人や荷主の何人かは、売買記録を操作して出所を誤魔化した作品を滑り込ませると言う。そしてそれが失敗すると、その怪しげな作品を含めるよう、オークション・ハウスの専門家に金を払ったりすると言う。

オークション・ハウスは収集家を惹き寄せるために、強い印象を与える委託品を必要としている。専門家の話では、目録を飾り立てる必要に駆られた多くのオークション・ハウスは、贋作をオーダーすると言う。

「私に言わせれば、小規模から中規模のオークション・ハウスの目録の80%は模造品です。」以前、南京美術館で鑑定アドバイザーをしていた有名な画家、肖平(Xiao Ping)は言う。

不滅の創造力

斉白石は誰もが認める名匠だ。1957年夏、健康が悪化しつつあるこの画家は、北京にある伝統的な中庭つき住居のスタジオに入り、筆を絵具に浸すと、花のポートレイトを描いた。濃い赤紫と黄色の花をつけた茎の長いシャクヤクだった。

3ヵ月後に彼は93歳で亡くなる。

「あれが、彼が完成させた最後の作品になりました。」彼の孫で、北京の自宅の金庫にその絵をしまっている斉秉毅(Qi Bingyi)は言う。「私はその絵をここに持っています。御覧になりたいですか?」先月訪問した時、彼はそう言って、絵を広げてくれた。

しかしながら、オークションの記録、および専門家と彼の親族へのインタビューによれば、斉白石の生産性は、死によって少しも落ちていないように見える。そしてそれは、最も偉大な中国近代画家の一人としての彼の名声と、その価格の高騰により、斉白石の贋作が市場にあふれていることを意味している。

「北京美術学院による斉白石作品集完全版(The Complete Works of Qi Baishi at the Beijing fine Arts Academy)」の編集者である劉夕林(Liu Xilin)は、中国のオークションで斉白石の作品として出てくる物の内、約半分は贋作であると言う。「カタログを見ただけで私には判ります。」

過去20年間、中国で、斉白石の作品とされる物がオークションで取り上げられたのは27,000回以上に及ぶ。

斉白石の作品として市場に出た絵画が、2000年の381点から2011年の5,600点に増えたことが、この熱狂を示す一つのサインだ。

斉白石は1864年に小作農の一家に生まれた。牛を追い、大工の弟子として働いた後、27歳の時に絵を描き始める。数十年後、北京に移り住み、水墨を使ったまるで書画のような流れる作風を採用して有名になる。

彼は、活き活きとした風景や自然のポートレイトを得意とし、ベゴニア、蜻蛉、バッタ、蛙、鶏、カニ、海老、それもたくさんの海老を、良く描いた。

学者によれば、彼は多作家で、生涯に10,000点から15,000点の作品を残したと言う。その内、約3,000点が主要な美術館の収集品となっており、幾つかは、1930年代の日本の侵略の時代や、紅衛兵が彼の家族の家を占領し略奪した文化大革命の時代に、失われたと考えられている。

オークションの記録では、1993年以降、それぞれ特色ある18,000点以上の斉白石の作品が売りに出されたことになっている。専門家の推計が正しければ、ありえない数だ。

アートロンから今年出された研究結果によれば、中国の指導的な現代美術家の多くは偽造されているが、斉白石以上に数が多い者はいないと言う。1980年代にサザビーズの中国絵画部門を統括していたアーノルド・チャン(Arnold Chang)も、やはりそう主張する。

「疑いの余地はありません、」彼は言う。「市場には、彼に描くことが可能とされる数をはるかに超える斉白石作の絵画が出回っています。仮にアシスタントによる流れ作業をしていたとしても多すぎます。彼は実際にアシスタントも使っていたと思われますがね。」

中国のほとんど全ての主要都市には、高品質の斉白石の贋作を手に入れることが出来ると主張する美術商がいる。それらの贋作はしばしば模造品として売られる。この国で入念に作られている他の多くの模造品と同じようにだ。しかし専門家の話では、贋作の多くは、いつも決まって、本物だと名札を付け替えられて、オークションに出てくると言う。

斉白石の家族の内、数人はやはり画家で、彼と同じスタイルで描かれた自分の作品を売るために、有名な芸術家の子孫であることを強く売り出している。

「遠い親戚の中には、あまり上手く絵が描けない人もいます。それでも彼らは出てきて斉白石の親族だと主張するんです。」北京在住の孫でやはり芸術家の斉秉恵(Qi Binghui)は言う。「もし祖父の名前を出してなにかするんだったら、少なくとも祖父の水準くらいには到達していないと。」

家族の者たちは、贋作を本物と認めるよう圧力を受けると言う。オークションに出る作品と一緒に写真に写ったり、斉白石の有名な作品を大量に作るよう言われることさえあると言う。

「私自身、タイまで行って、祖父の作品だと主張されている20点の贋作を本物だと保障するよう頼まれたことがあるんです。」斉秉恵は言う。「その人は、贋作をタイで売ろうとしていました。バイヤーに向けて、それらが本物だと言って欲しかったのです。」

斉白石の贋作に対する懸念は今、オークション・ハウスにとっても大きな問題になっている。大手オークション・ハウスのチャイナ・ガーディアンは、贋作を特定する上で、羨むべき記録を持っていると主張する。そしてほとんどの専門家も、チャイナ・ガーディアンの評判が他を圧倒していることに同意する。しかし2011年春、チャイナ・ガーディアンは、「松の木に停まる鷹」を、この画家の古典的代表作であり、数十年前、当時の主席だった蒋介石(Chiang Kai-shek)の誕生日を祝って描かれたものだとして、市場に出した。

この作品は、以前タクシー運転手をしていて富裕な金融業者へと成り上った劉儀銭(Liu Yiqian)が出したものだった。同氏は中国最大の収集家の一人だ。氏は、斉白石が書いた対句の掛け軸と一緒に絵を出した。オークション・ハウスはこの作品の値段を2000万ドルと見積もった。

5月のある涼しい夜、この作品の入札は、競売場に居た収集家と電話で参加していた人物との間で、30分に亘って繰り広げられた。最後に新記録となる6540万ドルでハンマーが打ち下ろされた時、部屋は拍手に包まれた。

しかしその熱狂はそんなに長く続かなかった。直ぐに美術評論家の牟建平(Mou Jianping)が、作品が贋作ではないかと示唆し、入札者は支払いを拒否した。2年経った現在、バイヤーは実質的に、この作品に対し債務不履行となっている。

劉氏は、この不成立の取引に対してコメントを拒否している。

しかし先月、チャイナ・ガーディアンのディレクターで副代表でもある寇欽(Kou Qin)はインタビューに答えて、市場における不払い問題は「非常に悪い現象だ」と言い、何れ対処されるだろう説明した。彼の会社は去年、最も高価な作品に対する不払いの割合を17%に減らしたと言う。

「正直さに欠けていること、」彼は言った、「それは私たちの社会全体が直面する問題です。」

~~ここまで~~

次回更新は11月16日ごろになると思います。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ゾノシン

Author:ゾノシン
英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
広告
海外格安航空券ena 【イーナドットトラベル】 Hotels.com【海外・国内ホテル予約サイト ホテルズドットコム】 【限定募集】ヒアリングマラソン・ベーシックkikuzo! 特別お試し3カ月コース デル株式会社
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。