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チャータースクールを巡るニューヨーク市の対決

又してもアメリカの教育に関する記事をUpします。

記事を書いたのはダニエル・バーグナー(Daniel Bergner)さんです。元記事はここにあります。

ニューヨーク州のチャーター・スクールを巡る戦いの記事です。

~~ここから~~

ニューヨークの学校を巡る戦い:エヴァ・モスコウィッツ対ビル・デブラシオ市長

この夏、ある日の午後にサクセスアカデミー・チャータースクールを経営するエヴァ・モスコウィッツ(Eva Moskowitz)は私に高校の年鑑を見せてくれた。「私が編集者だったの、」彼女は言った。私たちは彼女のチャーターネットワークが建設する最初の高校の内装が半分終わった事務所に座っていた。背後ではノコギリの音が聞こえている。彼女は1982年にニューヨーク市で一番の名門公立校、スタイヴェサント高校を卒業している。「私はこのセンチメンタルな本をどうやってまとめるかに夢中で、これをもっと大きなプロジェクトにしようとしていた。」彼女はその当時の抗議活動、すなわち核兵器反対運動と米国のエルサルバドル政府支援反対運動の写真を載せようと頑張った。写真と一緒に彼女はマニフェストを書いて次のような文章で結んでいる、「我々は無為に過ごしたりしない。」
 「これには決意が必要だった、」彼女は自分の年鑑の高揚感について若干自嘲気味にそう話した。モスコウィッツは又、スタイヴェサント高校の手に負えない問題点も振り返る。今もなお収まらないように見える怒りを込めて彼女は説明した。授業中居眠りをしていたアル中の物理学教師、特別優秀な生徒には手心を加える風習、繰り返される試験の時のカンニング、彼女の年鑑のカメラにはそういった風景が収められていた。「こういう証拠を学校側に見せるのは自分の道徳的義務だと思っていたのね、」彼女は言った。「学校は調査するって頑固に言い張っていたわ。でもしなかった。」
 50歳のモスコウィッツは小柄で、尖ったヒールと仕立てのスーツを好む女性だ。彼女が最初のサクセスアカデミーを設立したのは2006年、ハーレムに作った幼稚園と1年生向けのものだった。その後彼女は市で最大のチャーターグループを速やかに作り上げた。彼女のチャーターグループはサウス・ブロンクスからベッドフォード=スタイヴェサントに跨り約9,500人の生徒を集め、24校の小学校、7校の中学校、そして8月末に開校する新しい高校を含んでいる。ほとんどの生徒は黒人かラティーノで連邦政府の昼食補助を受けられるほど貧しい。市の通常の公立高校システムでは教育し難いと思われている種類の子供たちだ。ある陰鬱な統計によれば、市内の黒人生徒で読み書き計算ができるレベルの成績を取っているのは5分の1以下しかいない。
 高校の事務所を出た私たちは、共用施設の真新しいリノリウムの床の上に立った。モスコウィッツが選んだタイルは草をモチーフにしたものだった。彼女の目には芝生の絵は大学の中庭を思い起こさせるものに見える。彼女は想像する、この場所で生徒たちは直ぐにも「ハムレット」とか「リア王」の話をしながら寛ぐことだろう。
 公立学校タイピング講師の孫娘で2人の大学教授の娘であるモスコウィッツはハーレムで育ち今もそこに住んでいる。小さい頃から彼女は教えることに惹かれていた。ぬいぐるみの動物を相手に地理を教えていたのを彼女は覚えている。スタイヴェサントを卒業してペンシルベニア大学に進学した彼女はジョンズ・ホプキンズ大学で歴史学の博士号を取得する。1997年には、優秀なマイノリティー生徒を対象とするニューヨーク市のプログラム、プレップ・フォー・プレップで教えることになった。彼女は自分の生徒である高校2年生に、市が清掃する富裕なアッパー・イースト・サイドの公園と、生徒の何人かが住むハーレム近辺の放置された公園との間の格差について記述させた。彼女は生徒たちに、写真を撮って衛生局と公園局に訴えようと話した。「私たちは一寸ばかり騒ぎを起こしたのよ、」彼女は言った。「プレップ・フォー・プレップはこの問題に臆病だと思ったわ。何で単なるシミュレーションにしなかったんだって聞かれたもの。」公園は清掃されることになったと彼女は続ける。
 その間にモスコウィッツは、110万人の児童の就学に責任を持つ市の巨大な教育局の惨めな仕事振り、そして無能な教師の解雇も優秀な教師に報いることもほとんど不可能にしている組合に保護された契約に、次第に消耗させられてゆく。「あれを読んだ時のことを覚えているわ、」彼女は矛先を学校当局に対する手厚い保護に向けながら言った、「校長が職を危うくするには、『常習的に教育上の失敗』を示さなければならないって書いてあった。狂ってる!そう思った。常習的!常習的に人を轢き殺さないと運転手の免許は取り消せないとでも言うの!」
 モスコウィッツの情熱は今日でも健在だ。彼女を最初に認識したのは2年前の情報交換の場だった。私の友人の女性が自分の娘をサクセスアカデミーの1年生に入れようとしていたのだ。私は、自分と意見の異なる人間を誰であれ否定しがちな一人の教育者の姿を視認した。私はその後の4ヶ月の間にモスコウィッツに会い、彼女の働き振りを見て、反対意見に対する彼女の不寛容さが凶暴でほとんど狂ったような情熱の一部として現れるのを見てきた。彼女は若い教師と校長の軍団をトレーニングすること、そして如何にして「ワールドクラスの学校」を、あるいは彼女の言うところの「教育のニルヴァーナ」を出現させるかに全てを奉げている。彼女は自分の3人の子供の内2人を自分の学校に入学させている。彼女は自分の学校はどんな私立学校にも負けないと自負する。私立校のほとんどの教師は「怠け者」だと彼女は言う。
 彼女の生徒たちは驚くべき成績をあげている。2013年、数学と英語の熟練度を計る州内統一試験でサクセスアカデミーは市の普通の公立高校をはるかに引き離しただけでなく、最も高い敬意を集めるチャーターネットワーク、例えばアチーヴメント・ファースト、KIPP(the Knouledge Is Power Proguram)、そしてアンコモン・スクールズなどをも凌駕した。モスコウィッツのハーレムアカデミーに属するある学校の5年生は数学で州内全ての公立学校の同学年を上回った。白人が一番多く最も富裕な郊外にあるスカーズデールとブラークリフ・マナーをも上回ったのだ。その年度だけの偶然ではない。先月発表された2014年の結果で同ネットワークは数学で州内全学校のトップ1%に入り、英語でトップ3%に入った。95%が黒人かラティーノであるベッドフォード=スタイヴェサント・アカデミーでは98%が数学で合格点以上を取り、80%が4段階評価の最高点を取っている。
 市内でも最も困難な状況にいる何千という子供たちが、こんなにも良い教育を受けているのを見ればどんなニューヨーク市長だって興奮すると思えるだろう。しかしビル・デブラシオ(Bill de Blasio)は、去年の選挙戦の最中も市庁舎に入った後も、モスコウィッツとの間で険悪な政治バトルを繰り広げている。2人は共にリベラルの闘士でありながら、弱者の救済方法について深く異なる考えを持っている。デブラシオは本質的にポピュリストであり、ウォールストリートの1%人が学校ネットワークの取締役会を占めるモスコウィッツは庶民派とは言い難い。政治見解の相違は個人的敵意を煽り立て、デブラシオはモスコウィッツのネットワーク拡大を阻止し、モスコウィッツは自身の政治力を使ってデブラシオを排除しようとした。この2人の激突がどうなるかによって市の教育の未来が決定される。
公教育の再生と政治闘争の追行はモスコウィッツの人生を通してずっと絡み合っていた。プレップ・フォー・プレップにいた時から、彼女は市議会選挙に打って出ている。プレップ・フォー・プレップに入る2年前の1995年、彼女はギフォード・ミラー(Gifford Miller)の市議会選挙運動にボランティアで参加している。自分で立候補した彼女は公立学校の嘆かわしい状況を選挙の争点にした。彼女は自分で15,000回も募金を呼びかける電話をかけたと言う。「惨めなものよ。」でも彼女は突き動かされていた。「これは公平さの問題なの。私は、億万長者たち」と現職議員「を相手に挑戦していたのよ。もし私が敗れていたとしても、それはお金のためでは無いわ。」
彼女は実際その選挙には敗れた。しかし1999年の補欠選挙で民主党員のモスコウィッツは、市立学校に対する組合の束縛を非難しながら再び出馬する。おそらく市で最も強力な民主党系政治団体である市教員組合(United Federation of Teachers:U.F.T.)の強硬な反対運動に合いながらも彼女は勝利する。彼女はそれ以来チャーター・スクールを、すなわち政府から資金を受けながらも非営利団体が独立して運営し、全入、あるいはくじ引きで入学者を決め、そのほとんどが組合員を教師や管理職として雇わないチャーター・スクールを、公に支持するようになる。チャーター・スクールは主に国の教育官僚機構の外で運営されるのだ。
 2002年に議会の議長になっていたミラーはモスコウィッツを教育委員会の委員長に据えた(デブラシオも就きたがっていたと伝えられる地位だ)、そして彼女は学校システムの公聴会を収集した。彼女のことを「マッカーシーみたいだ」と呼んだ組合指導者、そして当初出席を拒んだ市高官を詰問しながら、彼女は学校の弱々しいリーディング点数からトイレの悲惨な状況まであらゆるものを徹底的に締め上げた。
 「私は教育委員会の委員長として変化をもたらすことができると思っていたのよ、」彼女は言った。しかし組合はあまりにも非妥協的で、市職員はあまりにも動きが鈍く保身に汲々としていた。「私はどんどん狭い場所へ追い込まれていった。いいでしょう、もし科学や芸術を改善できないならトイレット・ペーパーだったらどう。それだったら勝てると思った。トイレット・ペーパーなら全員が一緒になれるはずでしょう。でも駄目なのよ、何故って職員が問題を認めないから。私はトイレット・ペーパーが無いトイレの写真を撮って回らなければいけなかった...こんなの子供のためのシステムじゃ無いって思った。子供たちは政策が変わるまで待ってられないのよ。そんなのあと2世紀はかかるんだから。」
 2005年にモスコウィッツはマンハッタン地区の区長に立候補するもU.F.T.が資金と人員を動員して支援した候補に敗れる。その後、ヘッジファンドのゴッサム・キャピタルのパートナーで慈善家のジョエル・グリーンブラット(Joel GreenBlatt)とジョン・ペトリー(John Petry)が、これから始めようとするチャーターネットワークのチーフ・エグゼクティブに彼女を雇った。チャーターの長に典型的なチーフ・エグゼクティブというタイトルは、責任感を訴えるやり方であり、資金を提供する慈善家が使うビジネス界の言語であり、生徒数によって提供される政府補助金の支給前にネットワーク事業を進めるのを可能とするやり方だった。このタイトルは最終損益に責任を持つことを意味している。ちょうどビジネスでは利益をあげて見せる必要があるのと同じように、チャーター・スクールは子供を測定可能なやり方で教育する必要がある。
 始めるに当たってモスコウィッツは幾つかの戦略を採用した。顕著な戦略は他の多くのチャーターネットワークも採用しているものだ。全ての生徒に制服を着用させる、一日の授業時間を長く取る、宿題や行動に言い訳を許さない、厳格な規律、秩序だった雰囲気。しかしその以外の要素はより特徴的であり、より重要だ。彼女は文章力を究めて重要視し、幼稚園のカリキュラムを絵本から始めている。彼女は市販の児童本に溢れている生ぬるい文章を避ける決意をしたと私に話している(「スコラスティック社(Scholastic)は閉鎖すべきよ!」というのが出版大手に対する彼女の意見だ)。彼女は授業中の議論の有用性を信じている。たとえそれが数学の方式に関するものであろうと文節構造に関するものであろうと、例え生徒が7歳であろうと16歳であろうと、授業時間の80%は生徒の声で溢れていないといけない。最高の教師は最小の話し手だ。
 そしてそれら全てよりも重要なのは、彼女にはネットワークで働く全ての大人に対して厳密な基準があることだ。彼女は、公立学校やティーチ・フォー・アメリカでの経験がある教師か、資格認証プログラムを通った教師しか雇わない。管理職は自分の教職員から昇格した人しか使わない。彼女が最も気にかけているのは教師たちの知的容量だ。この夏に私が見学したトレーニング・セッションでは、教師に教え方を教えるよりも考えることを教える方が重視されていた。私は文学部の副部長ジェシカ・シー(Jessica Sie)が講堂一杯の小学校教師、中学校教師を前に、ザ・ニュー・ヨーカーの短いエッセイで使われているニュアンスに関する議論をリードしているのを見た。彼らはそのエッセイを生徒の前では使わない。しかしモスコウィッツは教師たちに、如何にして深く読めば良いか知って欲しかった。最年少の生徒が全員で「ウサギとカメ」を話し合っている時に、教師がこの授業を手本にできるように。
 別のトレーニング・セッションでは校長のアビゲイル・ジョンソン(Abigail Johnson)が、新任教師たちにクリスティーナ・ロゼッティ(Christina Rossetti)の詩について話し合うよう指導していた。後に彼女は私に、数年前モスコウィッツが彼女とその他の校長たちに文学作品の一節に関する論述演習を果たした時の苦難を物語ってくれた。各教師の分担が決まった後、モスコウィッツは彼らをトレーニング・セッションに向かわせた。以前教師だった2人の人物は、モスコウィッツは全く独裁的だと私に不満を漏らす。しかしこの厳しい教育は、モスコウィッツが好む命題にフィットしている。公教育に蔓延する失敗は、子供たちの困難な家庭環境に起因しているのではなく、全ての原因は教室で子供たちの前に座っている大人にあるのだ。
 ネットワークを始めた当初から、モスコウィッツのやり方は数字として業績に現れていた。しかし彼女の生徒たちをより抜きん出た存在としたのは新たに始まった今までより難しい州内統一試験だ。その試験は、子供に分析的思考を教えてより良い大学準備をさせるように学校を促すことを目的として2013年に導入されたベンチマーク、ニューヨーク州コモンコア教育目標に沿った試験だった。試験を受けたサクセスアカデミー生徒の82%が数学で合格点を取り、58%が英語の合格点を取った一方、一番の競争相手であるアイカーン・チャータースクールでも数学合格者は60%以下で、英語は40%そこそこだった。他の上位ネットワークはずっと下に沈んだ。
 「この結果は正に驚くべきだ、」アンコモン・スクールズのチーフ・エグゼクティブ、ブレット・ペイザー(Brett Peiser)はモスコウィッツの生徒が出した点数についてそう言う。「私はずっと驚き続けているんだ、人々が、」ここでペイザーが言う人々とは、市内の学校で5年間教師をし、両親も30年のベテラン教師であるペイザーにとっては教育システムの人々だが、「サクセスのドアを叩いて彼女がいったいどうやっているのか訊きに行かないってことにね。」
 ペイザーや他のチャーターの指導者と同様、KIPPのチーフ・エグゼクティブであるデイビッド・レビン(David Levin)も教授法を学ぼうとモスコウィッツの学校を訪れている。「その教え方と学び方の質の高さに吹き飛ばされたよ、」彼は言う。「感銘を受けたのは教師が自分のしていることに明確な目的意識を持っていること。さらにより印象的だったのは、本だとか数学問題の解法だとかを話し合っている時の子供たちの目的意識の高さだ。」
 チャーター・スクール界の外ではしかしながら、モスコウィッツはさほど敬意を持って語られていない。ニューヨーク大学教授で歴史学者のダイアン・ラヴィッチ(Diane Ravitch)のような彼女の批判者は、彼女のことを1990年代後半から国中で勢いを増し、現在6000以上の学校を数えるチャーター・スクール運動を代表する問題児の親玉と見ている。チャーターたちは病に陥った公教育に対する万能薬だと証明されたわけでは無い。彼らはありとあらゆる教育学上の概念を生み出したが、結局のところ通常の公立学校よりも優れていることを示す証拠はほとんど無い。幾つかの全国調査ではチャーターは伝統的学校よりも若干上の点数を取っているが、下の点数をつけた調査もある。しかし多くの批判者にとって成績は重要な点では無い。ラヴィッチにとって、この運動はそもそも破壊的だ。「この運動は公衆の公教育に対する信頼と責任を損なっているのよ。」
 私と話した時ラヴィッチは、将来有望なチャーター・スクールに資金援助し、取締役会をリードし、政治力を付与しているヘッジファンドの大立者やビジネス界の大御所たち、ホーム・デポットの設立者ケネス・ランゴーン(Kenneth Langone)やウォルマートのウォルトン家を含む人々を、口を極めて非難した。「ああいう人たちが自分たちのことを改革者だって言うのを聞くと、」彼女は言う。「私は吐き気がするのよ。」ああいう慈善家たちがやっているのは結局のところ、この国の教育を民営化しようという隠された目的の中間段階としてチャーターを使いながら自分たちだけでいい気になっているだけだ。チャーターの反対者に言わせればリベラリズムが危機に瀕しているのだ。この見地に立てばモスコウィッツは、その高らかに歌い上げることができる実績と共に最大のリスクを提起している。
 この脅威がデブラシオのチャーター嫌いとモスコウッツに対する彼の攻撃の中心近くに横たわっている。彼は如何にして全てのニューヨークの子供を救うべきかを語る。彼は市内に170校以上あるチャーターは、全体を網羅する使命に必要なリソースを奪っている、少数を教育するために多数から奪っていると説く。この道徳的かつ経済的なドラマは、チャーター・スクールと伝統的な学校を対立させ、近接配置として知られる差配のために、ニューヨーク市に余計な出費をもたらしている。マイケル・R・ムルームバーグ(Michael R. Bloomberg)市長の下で、チャーター・スクールは公立学校のガランとした校舎の空いたスペースに、ほとんど自由に作ることが許されていた。そのようにしてブルームバーグはサクセスアカデミーが拡散するのを促進したのだ。市教員組合(U.F.T.)が闘争を強める中、スペースの共有は混雑を招くとして公立学校は抵抗した。理論的には充分な空きがある場合のみチャーターは進出するのだが。
 本当の混雑の具合は建物毎に異なってはいたが、サクセスアカデミー進出提案はほとんど常に敵意で迎えられた。U.F.T.の組合員はコミュニティーの会合にバスで乗り付けて会場を埋めモスコウィッツに野次や唾を飛ばす。U.F.T.は進出阻止に法廷闘争も辞さない。他のチャーター・スクールに対する抵抗運動はずっと穏やかだ。U.F.T.はおそらくモスコウィッツが公聴会を開いた頃から彼女に復讐心を持ち続けているのだろう。私は組合の代表マイケル・マルグルー(Michael Mulgrew)に、何故彼と彼の仲間の組合員たちはそこまでモスコウィッツに怒っているのか尋ねた。「全ての物事に対する彼女の対決的なアプローチさ、」彼は言う。「『私たちが如何に公立学校より優れているか見せましょう』という態度なんだ。」その姿勢は多くの公立学校教師を怒らせている。私と話した数人の教師はサクセスアカデミーの急増について話すとき「増殖(metastasize)」とか「金銭ずく(venal)」という言葉を使った。モスコウィッツの富裕な取締役会メンバーが彼女の実績に対し高い報酬、2012年から2013年までの年度報酬としてボーナスを含めて567,500ドル支払う決定を下した事実は組合の怒りをさらに増加させただけだった。
 モスコウィッツはU.F.T.との緊張関係を和らげようとするタイプではない。彼女は共通の基盤を探し出すようにはできていない。そんなことをする理由は見当たらないと考えているように見える。彼女の学校に是非来て欲しいと欲する地区は常に存在する。サクセスアカデミーの入学願書は在籍可能数の5倍やってくる。州内統一試験でネットワークと場所を共有する学校の合格率は4%とか5%という低さだ。
 成績に関して言えば、モスコウィッツの数字は精査に耐えるものではないとU.F.T.とラヴィッチは主張する。サクセスアカデミーは(他のチャーターと同様に)人口統計上、通常の公立学校より有利なのだと彼らは言う。特別な必要性の下に少数の生徒に奉仕しているのだと、市の最も貧困な家庭から来た少数の生徒を教育し、成績の悪い者を追い出すために停学を使っていると非難する(サクセスアカデミーが断固として否定している非難だ)。こういったことはマルグルーやラヴィッチが強調する無数の要因の一つだ。しかしこのような相違点を計算に入れてもなお、サクセスアカデミーの成功を上手く説明するには程遠いだろう。
 何十人もの現在・過去のサクセスアカデミー教師や親にインタビューしたところでは、最も根強い批判は州統一試験に向けて学校が行う熱狂的な準備へ向けられている。以前4年生の教師をしていた人物は、ネットワークの従業員がトイザラスへミニバンで買い出しに行き教室の後ろに玩具の山を作ったことがあったと言う。「すごく大きな山だったんですよ、」彼女は言う。「私たちは賞品の山って呼んでました。」彼女は生徒たちに試験で良い点を取れば山から贈り物がもらえると言った。
 教師は又、生徒の試験結果を図表にして生徒の名前と共に教室の壁に張り出したりする。しかしアフリカ系アメリカ人で3人の娘をサクセスアカデミーの学校へ送ったナターシャ・シャノン(Natasha Shannon)のような親から私が聞いた話では、成績を張り出されるのは子供には辛いことではあるが重要なことでもあるという。シャノンは市立学校の卒業時に卒業生総代だったが、コミュニティ・カレッジ入って判ったのは、自分が受けた教育には不備があり補習授業を受ける必要があるということだけだった(ニューヨーク州教育省によれば、市の黒人高校生で4年で大学を卒業できるのは58%しか居らず、大学の準備ができているのはその中の13%くらいだという)。その経験は現在の彼女の考え方を形成している。「もちろん娘は試験に不安を持っています、」シャノンは娘の1人についてそう言う。試験結果が張り出された時「泣いたことだってあります。でも『試験の準備』のことを聞いたとき思ったのは、これが現実だっていうこと。皆SATのために勉強したり就職のために勉強したりする。娘の名前が下位グループの中に張り出された時、この機会を使って上に上がるためにどうするか娘と話しました。子供たちが貧困に落ちてゆくなんて耐えられない。私は彼女を慰めました。でも言ったんです、『私は1時間に14ドル42セント貰ってる。良い暮らしをするためには何をしたら良いと思う?』って。」
 モスコウィッツの方では、成績の張り出しはネットワークが強調するフィードバックの一環だと言う。生徒のためばかりでなく教師のためでもある。年間を通して、試験勉強中であろうと無かろうと、小テストの点数とか筆記課題とかはネットワーク本部で分析される。各教師の実績は表にされ、棒グラフは直ぐに全教科のメンバーに閲覧可能となる。担当クラスが遅れをとった教師はグラフのトップを飾る教師に助言を求める責任を負わされる。丁度、名前に赤や黄色のステッカーを貼られた生徒が、その課題で緑や青のステッカーを取った生徒の文章を真似るよう指導されるように。
 デブラシオとモスコウィッツの間の争いは、市長を目指すデブラシオの選挙運動を通して先鋭化した。「エヴァ・モスコウィッツにストップをかける時が近づいている、」デブラシオは2013年5月に市教員組合の群集を前に語った。マイクロフォンを通して話す彼の後ろには組合の旗がぶら下がっている。「彼女が許容され、認可され、支持されるのを、止めなければならない。」
 彼が正確に何を考えていたのかは、はっきりしない。しかし簡単に言えばモスコウィッツがブルームバーグ市政で享受していた恩恵を消し去ると、彼は誓った。サクセスアカデミーの拡張は「起きなかったはずだ」と彼はそのイベントで言った。「もし彼女が大金を持たず、権力や政治的恩典を背後に持たず、」そしてもしブルームバーグの市庁舎が「いつもいつも『イエス・マム』と彼女に言っていなければサクセスアカデミーは拡張できなかったはずだ。そして私は市長になったらそんな事は言わない。」
 予備選を劣勢で始めたデブラシオは、富裕で力を持つ者と貧困で権利を剥奪された者との分裂を無くすことで「二都物語」を終わらせると宣言して波に乗り、9月に民主党候補の座を勝ち取った。彼の本選勝利は必然的結果であり、モスコウィッツは自分が彼の射程に捕らえられていることを感じていた。一度として怯んだことなど無い彼女は、彼に警告を発した。投票日の1ヶ月前、彼女は午前中学校を休校にし、サクセスアカデミーの家族を集めてデモ行進をした。彼女は、デブラシオが市所有校舎の使用料を値上し、自分たちの数を制限するだろうと懸念するリーダーを持つ他のチャーターネットワークも結集した。モスコウィッツが率いる1,7000人の群集は「Let My Children Learn(私の子供に学ばせろ)」と書いたプラカードを持ってブルックリン橋を渡った。
 彼女は事実上こう言っていたのだ。これら貧困家族は11月に貴方に投票する者たちだが、もし貴方が庁舎で誤った行動をとれば、もはや貴方へ好意をよせないだろうと。デブラシオは警告に従わなかった。ブルームバーグは政権最後の日々に市立校と場所を共有する多数のチャーターに2014-15年度の認可を与えた。今年初め、市庁舎に入って数週間後、デブラシオはそのほとんどを追認すると表明した。しかしその内の3校は校舎使用を無効にした。全てがサクセスアカデミーの学校で、その中には不可解にも、数学で優秀な成績をおさめてスカーズデールとブラークリフ・マナーを破った5年生がいるハーレム校も含まれていた。今やその生徒たちと彼らの校友たちは、次の学年で学ぶ校舎が無い事態に追い込まれた。
 モスコウィッツには準備ができていた。サクセスアカデミーを始めて直ぐの頃から、彼女は自分のネットワークを支える政治力の必要性を認識しており、過去2年間、ウォルトン・ファミリー基金が資金提供するチャーター支持の支援団体ファミリーズ・フォー・エクセレント・スクールズと協力していた。ウォルトン・ファミリー基金はモスコウィッツのネットワークにも資金を提供している。支援団体は、U.F.T.が組合員を動員してやったのと同じように、一群のオルグを彼女に提供した。彼らは、政治家相手にロビー活動するようチャーター生徒の親を含むチームに金を払い、チャーター家族への政治的注目度を上げ、彼らをデモ行進に動員した。それに加え、デブラシオの市長就任が避けられなくなるや、ファミリーズ・フォー・エクセレント・スクールズはフォーカス・グループを組織し世論調査を実施した。その結果は啓発的だった。「私たちがそこから学んだのは、」組織のチーフ・エグゼクティブ、エレミア・キトリッジ(Jeremiah Kittredge)は私に話した、「データの影響は強く無かったということです。」テストの点数の良さは民衆の意見を喚起する役割としては2番目でしかなかった。支持団体は適切なメディアキャンペーンでデブラシオとの戦いの準備をした。
 チャーター活動には複数の前線がある。市長が3校の校舎共有を取り消した2月、チャーターの代表はアンドリュー・M・クオモ知事、およびその運動員と会っている。その直後にはサクセスアカデミーの法律家を含む別の代表団がクオモのチームと会談している。これらの議論の一つに参加し、もう一方の議論にも詳しいチャーター支持者はそう話す。チャーター運動へ資金を提供している者たちは、この数年間、クオモの主要な選挙にも協力していた。2010年クオモが州の司法長官で知事選を戦っていた時、マンハッタンのリージェンシー・ホテルの朝食で彼は、モスコウィッツのネットワークを支援するヘッジファンドのパートナー、ペトリを含む資金提供者数人と同席している。彼らは自分たちの教育的意図についてクオモに穏やかに話した。その時から始まって去年冬にかけて、クオモは公言こそしていないがチャーター・スクールを好もしく思うようになっていた。そして2月、チャーターの代表と密議する頃には物事は大きくシフトしていた。
 政治的中道にこだわる民主党員で、デブラシオのポピュリズムとは大きな距離があるクオモは、市長に不満を抱いていた。デブラシオは市の幼稚園入園前教育の資金捻出のために富裕なニューヨーク市民の税金を上げるよう知事に圧力をかけていた。知事は幼稚園入園前教育に全面的に賛成だが、増税を支持して大統領職への野望の妨げになることは望んでいない。たぶんクオモは、自分の主要な献金者を幸せにしておきたいとも思っていたことだろう。もしクオモがホワイトハウスをねらうなら、彼らに頼ることになるのは当然の帰結だ。
 モスコウィッツは私に、会合について何か知っているとは一切認めていないが、その場にいたチャーター支持者は、クオモの運動員は会合の場で、強力なメディアキャンペーンやオールバニーでのデモ行進などの示威行動を組織するようチャーター代表者たちに示唆したと言っている。チャーター代表者はそうすればクオモが民衆の訴えに答えると期待していた。支持者たちと運動員は可能な法案についても話し合っている。市長の攻撃からチャーター・スクールを守るためにクオモが州レベルでその法案を支持することになる。
 モスコウィッツとファミリーズ・フォー・エクセレント・スクールズは直ぐに活動を活発化させる。支援団体は理屈ではなく感情に訴える広告、自分たちの「夢と希望」を奪われた子供たちの話をテレビや新聞に大量投入した。広告が市内に溢れる3月初めのある日、モスコウィッツは再度、今度は終日学校を休校にした。大量に出されたemailの中で彼女は親たちに、ネットワークを救い出し卓越した教育を守るためにファミリー・フォー・スクールズが借りたバスに子供と乗り込みオールバニーへ行くよう指示した。それに参加できない、あるいはしたくない親は、何かしら代替的な配慮が子供に与えられるとは思わないでくれとemailには書かれていた。不参加の親は子供の行き先を自分で見つけなければならない。支援団体は他のチャーターネットワークの親も動員した。オルグは最大限コネを駆使し、直前の嵐で雪が降り積もり氷のような気温にも関らず、確実にバスが満員になるよう手配した。
 州議会議事堂前には10,000家族を越す群衆が詰め掛けた。彼らは「Save Our Schools」と書かれた黄色いTシャツを着て、「エヴァ!エヴァ!エヴァ!」と叫んだ。
 デモの組織者は、デブラシオが近くで自分の方の幼稚園入園前教育増税デモをしているその日にぶつけた。モスコウィッツの群集は市長のデモ行進を圧倒した。突然知事が議事堂の階段を降りてきて親たちとテレビカメラに向けて叫んだ。「あなた方は一人ではない!私たちはチャーター・スクールを助ける!」
 翌日、モスコウィッツはMSNBCの「モーニング・ジョー(Morning Joe)」に出演して言った。「私たちは、一方で自分を進歩的だと言いながら、もう一方でハーレムの貧しい子供たちの機会を、人生の希望を否定したがっている市長をニューヨークに持っているのです。」この感情を込めた訴えの後、彼女は5年生があげた成績の話をした。「こんな非道な話しはありません!」司会者のジョー・スカボロー(Joe Scarborough)はデブラシオの決定に対しそう叫んだ。「不道徳なことです。」
 知事は直ぐに議員たちと、もっと多くの自由なスペースをほとんどのチャーターに保障するべく交渉を始める。それでもなお、ファミリーズ・フォー・エクセレント・スクールズは広告活動の手を緩めなかった。「貴方は自分が傷つけている人々のことを考えていないんです、」涙を浮かべた母親がデブラシオにそう訴えている。ザ・タイム誌の記事によれば、最後にとうとう市長の事務所はサクセスアカデミー取締役会チェアマンのダニエル・ローブ(Daniel Loeb)を含むチャーター支持者や出資者へ電話をかけて、デブラシオはもう彼らの邪魔をしないと確約して休戦を呼びかけた。繰り返しインタビューを申し込んでも、市長、および市の教育総長カルメン・ファリーニャ(Carmen Fariña)、そして市長のシニア・アドバイザーは誰一人私と話そうとしなかった。まるで打ちのめされて声も出ないかのようだった。
 モスコウィッツはしかしながら、平穏など感じていないようだ。チャーターへの認可を管理する州評議会が、彼女が申し込んだ14校の新設を認可すれば、彼女は2016年までに46校15,000人の生徒を見ることになる。彼女の野望の中には、市の貧困地区を越えて広がることも入っている。ここ数年の間に彼女は、マンハッタンのアッパー・ウエスト・サイド、およびブルックリンのコブルヒルとベンソンハーストに、人種的に統合された教室を持つ学校を開いている。パークスロープやアッパー・イースト・サイドも次の段階のリストにあがっている。「私たちは卓越した質を保ちながら可能な限り早く拡大したいと望んでいます、」彼女は言った。しかし市議会教育委員会は州のチャーター評議会に対して、新しい認可を停止する要求をこの夏提出した。サクセスアカデミーを止めようとする4件の訴訟も進行中だ。モスコウィッツの見解では、彼女はまだ囚われの身であり、時として自分はほとんど無力だと信じているようだ。この8月の終わりに彼女は私に言った、「毎日目が覚めると祈るのよ、」自分の使命を果たすための支持と場所を賜りますようにと。
 その使命は最終的に市長に立候補することに繋がるかも知れないと彼女は言う。彼女は2017年の選挙を除外しておらず、それは疑問の余地無くデブラシオとの最終対決を意味している。近い将来、あるいは遠い未来に市長に当選した場合の公教育に対する彼女の計画を訊いた時、彼女は詳細に触れなかった。しかし彼女の話を聞けば、彼女の訴えは容易に想像できる。「私たちは教育危機に立ち向かわねばなりません。恐ろしいほど多くの学校が機能していない。教育には終わりの無い需要があるんです。」モスコウィッツは、既にその心に回答を持っている。

~~ここまで~~

翻訳が終わり次第、適時更新します。
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ゾノシン

Author:ゾノシン
英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

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