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あなた決断疲労ではありませんか?

社会心理学関連の記事をUpします。

記事を書いたのはジョン・ティアニー(John Tierney)さんです。元記事はここにあります。

決断にはエネルギーが必要だと言うお話です。

~~ここから~~

あなた決断疲労じゃ無いですか?

イスラエルの監獄に収監されている3人の囚人が最近保釈願いを出した。保釈願いは、裁判官、犯罪学者、ソーシャルワーカーで構成される委員会で審査される。3人の囚人はそれぞれの刑期の少なくとも3分の2を終了していた。しかし委員会が保釈を許可したのは唯1人だった。
はたして誰だったか推測してみて欲しい。

ケース1(午前8時50分に審査):アラブ系イスレエル人。詐欺罪で30ヶ月服役中。
ケース2(午後3時10分に審査):ユダヤ系イスラエル人。傷害罪で16ヶ月服役中。
ケース3(午後4時25分に審査):アラブ系イスラエル人。詐欺罪で30ヶ月服役中。

保釈委員会の決定にはあるパターンが存在する。しかしそのパターンは民族的背景や犯罪の種類や刑期とは関連が無い。唯一関連していたのはタイミングだった。1年がかりで研究者達が1100件の決定を分析して得た結論である。囚人の主張を聞き、他の委員の助言を参考にして判断を下す裁判官は、約3分の1のケースについて保釈を認めた。しかし保釈申し立てが通る可能性は1日の内で激しく変動する。早朝に申し立てを聞いてもらえた囚人が保釈を受ける可能性は70%あった一方、夕方に申し立てを聞かれた囚人が保釈を受ける可能性は10%を切っている。

従って午前8時50分に審査された囚人が最も可能性が高く、事実、彼が保釈を受けた。もう1人のアラブ系イスラエル人の囚人は同じ犯罪(詐欺罪)で同じ刑期であるのに、(日付は別だが)午後4時25分に審査された為に、保釈される確率は低い。事実、彼の保釈は拒否された。同様に午後3時10分に審査されたユダヤ系イスラエル人の囚人は、刑期が保釈された囚人よりも短いが、やはり保釈を拒否された。彼らは単に間違った時間に保釈を審査されたのだ。

審査員の行動には何の悪意も無く異常性すらも無い。これは今年初めにスタンフォード大学のジョナサン・レヴァブ(Jonathan Levav)とベンガリオン大学のシャイ・ダンジガー(Shai Danziger)によって報告されたものだ。審査員達の一定しない判断は職業上の障害に帰せられる。いわゆるジョージ・W・ブッシュが或る時言ったように「決断者」と言う職業の問題だ。次々と裁定を下す精神的な仕事は、個々人にどんな利益があろうとも、彼らを磨耗させる。このような種類の決断疲労は、ゲーム後半にクォーターバックに疑わしい決断を選択させ、夕方遅い時間にC.F.O.に危険な時間の浪費をさせる。それは全ての人の決断を規則正しく歪める。エグゼクティブであろうがノンエグゼクティブであろうが、富者であろうが貧者であろうが同じだ。しかし殆どの人がそれに気付いていない。そして研究者も何故それが起き、どうやって対処するのか、理解し始めたばかりだ。

決断疲労は、どうして普通の常識的人間が同僚や家族に怒ったり、服に散財したり、スーパーマーケットでジャンク・フードを買ったりするのか、あるいは、カーディーラーが勧めるさび止め加工を、どうして断れないのかを説明する。どんなに理論的で高い志を持つ人間でいようと頑張っても、人間は生物学的対価を払わずに決断を次々と下す事は出来ない。それは通常の物理的疲労とは異なる。貴方は疲労していると自覚できない。しかし貴方は精神力が低い状態になる。1日を通して多くの選択を行うと、次第に貴方の脳は1つ1つの決断が困難に成ってゆく。1つの逃げ道は無謀になる事だ。結果を考える事にエネルギーを使わず、衝動的に行動する。(いいとも、写真をツイートしちまえ!何が悪いってんだ?)他の逃げ道は究極的なエネルギー節約状態になる事、何もしない事だ。決断に悩まず、何も選択しない。決断を避けることは長い目で見ると寄り大きな問題を引き起こす。しかし当面の間は、精神的緊張を弱めてくれる。貴方は全ての変化、潜在的にリスキーな行動、例えば犯罪を犯すかも知れない囚人を保釈するような事に抵抗し始める。従って、保釈委員会の疲労した審査員は容易な道を選択し、囚人は刑期を続ける。

決断疲労は自我消耗(ego depletion)という現象に含まれる新しい発見だ。この言葉は社会心理学者のロイ・F・バウメイスター(Roy F. Baumeister)が、フロイド学派の仮説に敬意を表して名付けたものだ。フロイドは自分あるいは自我は、エネルギーの交換を含む精神活動に依存していると仮定した。しかし彼は詳細については曖昧で、幾つかの点については明確に間違っていた。(例えば彼は芸術家は性的エネルギーを作品に「昇華」させていると考えていてたが、それだと芸術家コロニーでは不倫は特別稀だという事になってしまう。)バウメイスターが前世紀の終わり頃、最初ケース・ウェスタン大学で、次にフロリダ州立大学で精神訓練(Mental Discipline)について一連の実験を通して研究を始めた時、フロイドの自我のエネルギーモデルは一般に無視されていた。

一連の実験は、自分をコントロールする為に使われる有限の精神エネルギーの存在を示唆している。人々が衝動を抑えた時、例えばM&Mとか焼きたてのチョコチップ・クッキーをがつがつ食べたいと言う衝動を抑えた時、それ以外の衝動に対して抵抗する力は弱まっている。お涙頂戴ものの映画を見ている間、冷静でいる事を強制させられた人は、その後、実験室内での自己規制が必要な仕事、例えば幾何学パズルとか握力を消耗する訓練とかを、より早く放棄する。意志の力というものは、俗説や比喩以上のものであるようだ。それは実際に疲弊する精神エネルギーの1形態なのだ。実験結果では、19世紀的見解である意志力は、筋肉と同じ様に使えば疲労する力、衝動を避ければ保存できる力であることが確認されている。自我消耗のプロセスの研究において研究者達は当初、自己制御を含む行動に注目していた。一般的に意志力と関連していると思われる自己規制、例えば一杯のアイスクリームを我慢するとか言う行動だ。研究者たちは型どおりの意思決定、例えばチョコレートにするかバニラにするかの選択といったものは気にしていなかった。そのような精神的プロセスは明確に異なったもので、あまり力を要しないと考えられていたのだ。直感的に見て、チョコレートとバニラの選択にはあまり意志力を必要としないように見える。

しかしある時、ポストドクター・フェローのジーン・トゥウェンジ(Jean Twenge)は、結婚式の準備の直後にバウメイスターの研究室の仕事を始めた。トゥウェンジが研究室の自我消耗実験の結果を調査していた時、彼女は、婚約者と贈り物の予約作業を終らせた夕方に自分が如何に消耗していたかを思い出した。皆は単純な白い陶器を好むだろうか、それとも何かパターンがあるものの方が良いだろうか?タオルは何本いる?シーツはどんなのが良い?正確に1平方インチ当たり糸は何本?

「最後には何にだって肯いていましたよ。」トゥウェンジは自分の新しい同僚達にその話をした。その症状は皆に馴染みのあるものなので、彼らにあるアイデアを与えた。近くの百貨店では閉店セールが行われていた。それで研究室の研究者達は、自分達の車のトランクを単純な製品で一杯にする為に出かけた。結婚式用ギフトほどでは無くとも、充分に学生の興味を引く程度の製品を求めに。そして学生達が研究室へと集められた。学生達は実験の最後に少なくとも1つは商品を貰えると言われる。しかし、彼らは最初、幾つかの選択をしなければならない。ペンとキャンドルでどちらの方が好きか。バニラの香りのキャンドルとアーモンドの香りのキャンドルではどちら?キャンドルとTシャツではどちら?黒のTシャツと赤のTシャツではどちら?別のコントロール・グループ、彼らのほうは非決定者(nondeciders)と呼ぶ事にするが、そちらでは同じ長さの時間を同様の商品について、何の選択もせずに考察をさせられた。彼らはそれぞれの商品について自分の意見を述べさせられ、過去6ヶ月間その商品をどれだけ頻繁に使ったかレポートさせられた。

その後で、全ての参加者は自己制御の古典的テストの一つをやらされる。冷たい氷水にどれだけ長く手を入れていられるかと言うテストだ。衝動的に手を引っ込めたくなるので、手を水に漬けておくには自己規制が必要になる。決定者達はずっと早くあきらめた。彼らが堪えたのは28秒。非決定者達の平均67秒の半分以下だ。これ等の選択は明らかに彼らの意志力を吸い取ったのだ。そしてこれは1回だけの結果では無い。これは学生を使った他の実験、例えば学生達に大学のカタログからコースを選択させる実験でも確認された。

自分達の理論を現実世界でテストする為に、研究者達は現代における偉大なる意思決定競技場へ向かった。郊外のショッピングモールだ。研究者達は買い物客にその日の店での経験をインタビューし、その後、簡単な算数の問題を幾つか解くよう求めた。研究者達は礼儀正しく、出来るだけ多くの問題を解くよう求めたが、何問で止めても良いと言った。そしてもちろん、店で最も多くの決断をしてきた買い物客が一番早く問題を解くのを止めた。疲れるまで買い物をしたら、意志力も同じ様に落ちていると言う事だ。

どのような決定でも、例えば、どんなパンツを買うか、あるいは戦争を始めるべきか、といったあらゆる決定は心理学者が言うところのルビコン・モデルと呼ばれるアクション・フェーズに落とし込まれる。それはローマ帝国のゴール地方とイタリアを分ける河にちなんで名付けられたものだ。シーザーが紀元前49年にゴール地方を平定した後、故郷へ変える途中その河に到達した時、ローマへ帰る将軍は軍団を引き連れて河を渡ってはならない事を知っていた。そうしなければ、それはローマに対する侵略と見なされる。河のゴール側に居た時、内戦を始めるリスクと利点について考察しながら、彼は「決断前フェーズ」に居る。そして彼は計算を止め、ルビコン河を渡る。「決断後フェーズ」に入るのだ。それをシーザーはより適切な言葉で表現している。「サイは投げられた」と。

この全体のプロセスはあらゆる人の意志力を消耗させる。しかし意思決定プロセスのどのフェーズが最も疲労をもたらすのか?それを見つける為に、以前バウメイスター研究所に居て、現在ミネソタ州立大学に居るカスリーン・ボース(Kathleen Vohs)はデル・コンピュータのセルフ・サービス・ウェブ・サイトを使った実験を行った。実験の1つのグループはコンピュータの選択可能な種々の特徴について、慎重に利点と欠点を調査する。スクリーンのタイプ、ハードドライブの大きさ、等々だ。しかし実際に最終的な決断は行わない。2番目のグループは予め決定された特徴のリストを渡される。そしてオプションの並びの中から正しいものをクリックする煩雑なステップ・バイ・ステップのプロセスを通して、実際にコンピュータの仕様を決め行く。その目的は、選択を埋め込む事によって「決断後フェーズ」で起きる全てをなぞる事にある。3番目のグループは、コンピュータにどんな特徴が望ましいか自分自身で決めなければならず、それを、選択するプロセスも通り抜けないといけない。彼らは、(最初のグループのように)単にオプションを考えるだけでも、(2番目のグループのように)他人の選択を注文するだけでも無い。彼らは、サイを投げなければならない。そしてこの仕事が最も疲労する仕事であった。自己制御力を測定した時、彼らは最も消耗していて、その程度は桁違いだった。

この実験によればルビコンを渡る事は、両岸でのどんな作業よりも疲れる仕事だった。ゴール側で座ってオプションを考える仕事や、渡った後ローマへ行進する仕事よりも精神的に疲労する仕事なのだ。その結果、シーザーほどの意志力を持たない人間は、その場に留まる傾向がある。疲労した審査員にとって、保釈を拒絶する方が容易な選択なのだ。それは現状を維持できるだけで無く、保釈された囚人が犯罪の限りを尽くすのを防げる。さらには多くの可能な選択肢を将来に残しておく事ができる。審査員は囚人を安全に監獄に閉じ込めておく選択肢を放棄する事無く、将来保釈する選択肢も維持できる。決断する事に対して感じる抵抗感は部分的に、選択肢を放棄しなければならない私達の恐れから来ている。「決断(decide)」と言う言葉は語源的に「殺人(homicide)」と同じ根を持っている。ラテン語で「切り倒す」又は「殺す」を意味する「caedere」と言う言葉から派生したのだ。そして決断による損失は、決断疲労に陥った場合、特別に大きく感じられる。

人間は精神的に消耗した状態になるとトレード・オフに対して及び腰になる。トレード・オフは特別に先進的で負担の重い形態の意思決定だ。野生動物の世界では、捕食者と獲物の間に長引く交渉は存在しない。妥協する事は複雑な人間のみの能力であり、それゆえに意志力が消耗すると最も早く低下する能力だ。そうなると人間は研究者が言うところの、精神的吝嗇家(cognitive miser)になる。自分のエネルギーを溜め込もうとするのだ。もしショッピング中であるなら、ただ1つの物差しで見ようとする。例えば価格だ。単に一番安いのを買おうとする。又は質だけを見るようになる。一番良いものを買うのだ(若し誰か他人が払ってくれるなら特別たやすい戦略だ)。決断疲労は貴方を売り手から見て脆弱な存在にする。売り手は販売にどれくらい時間をかければ良いか知っている。スタンフォード大学の教授、ジョナサン・レヴァブ(Jonathan Levav)は、テーラーメイド・スーツや、新車販売のケースを含めた実験でそれを示した。

これ等の実験のアイデアも、やはり偶然にも結婚式準備からもたらされた。結婚式準備は決断疲労において地獄の一週間と同じような儀式であるようだ。婚約者の提案に従ってレヴァブはテーラーへ出かけて、仕立てのスーツを作った。それは生地から始まって、裏地のタイプ、ボタンのスタイル、襟の形、カフス、その他の連続した選択だった。

「3冊目の布地見本を見ている間に、自分で自分を殺したくなった。」レヴァブはそう振り返る。「もう1つ1つ選んでゆく気にならなかった。しばらくしたらテーラーにこう言い始めるんだ。『君のお勧めはどれだい?』それしか言えなくなったよ。」

レヴァブはそれ以来、仕立てのスーツを買わなくなった(2000ドルの値段もその決断を容易にした)。しかし彼はその経験を1組の実験に使った。その実験は当時ドイツのクリスチャン・アルブレヒト大学に居たマーク・ヘイトマン(Mark Heitmann)と、スイスのセント・ガレン大学に居たアンドレアス・ヘルマン(Andreas Herrmann)、およびコロンビア大学のシーナ・イェンガー(Sheena Iyengar)と共同で実施したものだ。被験者の1人でスイスのM.B.A.の学生は仕立てのスーツを選び、他の被験者は、顧客が新型セダンのオプションを選択できるドイツのカーディーラーで実験を行った。車を購入した人は実際に自分の金を払う顧客だった。彼らは例えば4種類のギアシフト・ノブ、13種類のハンドル、25種類のエンジンとギアボックスの組み合わせ、56種類の内装色から選択する。

最初に車の特徴を選び始めたとき、顧客達は慎重に選択肢を評価していた。しかし決断疲労がやって来ると共に、どんなものでもデフォルトのオプションで決めてしまうようになる。最も困難な選択、例えば56色の中から正確にグレイやブラウンの陰影を選ぶとか言う選択に、手順の始めのほうで出くわした人ほど早く疲労した。そういった人はデフォルト・オプションを選択する道へと最も抵抗無く進んでいく。車購入者の選択の順番を操作する事で、異なるオプション選択へ顧客を導くことができるのを研究者達は発見した。その差額は1台当り1,500ユーロにも登った(当時の価値で約2,000ドルだ)。顧客が派手なハンドルとか、よりパワフルなエンジンとかを選ぶかどうかは、その選択肢が何時提供されたかと、顧客の意志力がどのくらい残っているかにかかっている。

同じ様な結果は、カスタム・メード・スーツの実験でも得られた。一度決断疲労に陥ったら、誰でも勧められた選択肢を選ぶ傾向がある。もし早いうちに困難な選択、最も多くの選択肢があるようなもの、例えば100種類の布からスーツに使う布を選ぶと言うような選択を迫られたら、人々はより早く疲労し、ショッピングの楽しみも少ししか感じられないと報告されている。

ショッピングは貧しい人をより一層疲労させる。貧しい人は継続的にトレード・オフを迫られているのだ。殆どのアメリカ人は石鹸を買う事が出来るかどうかで何回も悩む事は無い。しかしそれはインドの田舎では消耗する選択なのだ。プリンストン大学の経済学者、ディーン・スピアズ(Dean Spears)はインド北西部のラジャスタン(Rajasthan)にある20ヵ村の人々にブランド物の石鹸2本を20セント以下の値段で買えるチャンスを提供した。それは定価からの大幅な値引きだが、それでも10ヵ村の最も貧しい村の人々には厳しい値段だった。彼らが石鹸を買おうが買うまいが、その決断をする行動は意志力を弱めてしまう。続いて行われた実験、どれくらい長く手を握っていられるかの実験で、それは確認された。もう少し豊かな村では、人々の意志力には重大な影響は及ばなかった。何故なら彼らにはより多くの金があり、石鹸のメリットとその他の物、例えば食べ物とか薬とかのメリットとを秤にかける努力が、それほど必要でなかったからだ。

スピアズと仲間の研究者達は、この種の決断疲労が人々を貧困から抜け出せなくさせている主要な、そして今までは無視されてきた要因であると主張している。何故なら彼らの財政状態は、かくも多くのトレード・オフを強制しており、彼らはそれによって、学校とか労働とかその他の活動、おそらくは彼らを中流階級へと導いてくれる活動に割く意志力を少なくしか保てないからだ。この要因が正確にどれくらい重要であるかを量るのは困難だ。しかし意志力が貧しい人々にとって特別な問題であるのは疑いの余地が無い。低い自己制御力が、少ない収入やその他の多くの問題、例えば学校での悪い成績とか、離婚、犯罪、アルコール中毒や不健康、そういった多くの問題の原因である事を、幾つもの研究が示している。自己制御力の欠陥は、例えばフード・スタンプでジャンク・フードを買う生活保護の母親といったイメージで象徴される「自ら招き寄せる貧困」を想起させる。しかしスピアズは少ない予算で一日中困難な決断をさせられる人々に対して同情すべきだと説く。ある研究で、豊かな人間と貧しい人間が一緒に買い物をしている時、貧しい人ほどショッピング中に飲食をする傾向がある事を彼は発見している。これは彼らの弱い性格を確証するものに見えるかも知れない。なんと言っても、シナボンのような貧困層の肥満の原因となる直ぐ食べられるスナックを買うのでは無く、家での食事で栄養状態を改善する為にお金を節約するべきなのだから。しかしもし、スーパーマーケットでの一つ一つの買い物の経験が貧しい人にとってより多くの精神的トレード・オフを要求するもので、豊かな人よりも強く決断疲労をもたらすのであれば、キャッシュレジスターに着いた時にはマーズバーやスキットルズに抵抗するほどの意志力を持っていないかも知れない。こう言うのを衝動買いと呼ぶのは理由無き事では無い。

そして売り場での全ての決断を終えた買い物客が疲れて到着するキャッシュレジスター付近に、甘いスナック菓子がこれ見よがしに置いてあるのは、これだけが理由なのでは無い。意志力が弱くなって、より衝動に従い易くなっているだけでなく、キャンディーやソーダなど特別に糖分を供給するものに、買い物客は脆弱になっているのだ。スーパーマーケットがはるかな昔にその事に気がついていた間、研究者達は最近になってやっとその理由を発見した。

その発見は、バウメイスター研究所の失敗した実験がもたらした偶然の産物だった。研究者達はいわゆるマルディグラ(Mardi Gras)理論をテストしようとしていた。それは最初に自分を喜びに浸す事で意志力を強められると言う主張だ。丁度マルディグラの祝祭を祝う人々がレントの苦役の前の肥沃な火曜日に浮かれ騒ぐように。フロリダ州立大学の研究室のシェフは、被験者の一団向けに、肥沃な火曜日の朝食として、コッテリとした豪華なミルクセーキをふるまった。被験者達は意志力を要求する2つの仕事の合間に休んでいるところだった。確かに美味しいミルクセーキは被験者の意志力を強めたように見えた。被験者は2番目の実験で予測よりも良い結果を残したのだ。ここまでは良い。しかし実験はコントロールされた別の一団を含んでいて、その人たちは低脂肪の味気ないドロドロの乳製品を食べさせられた。その食事は彼らに何の喜びも与えなかったが、それでもテスト結果は、自己制御力に同様の改善が見られた。マルディグラ理論は間違っているように見える。悲惨なことに、ニューオーリンズの通りを浮かれ騒ぐ言い訳を取り上げてしまっただけでなく、この結果は研究者達を大いに恥じ入らせた。研究を主導した大学院生のマシュー・ガイリオット(Matthew Gailliot)はバウマイスターに失敗について話している間、下を向いて自分の靴を見つめていた。バウマイスターは楽観的になろうとした。研究は失敗と言うほどでも無い。つまるところ、何かは起きているのだから。味気ないドロドロな食物でも役に立っている。しかし、どうやってだ?それが喜びで無いとしたらカロリーなのか?最初の考えは少しばかり大まかなものに見えた。何十年というもの精神的作業のパフォーマンスについて、乳製品の消費が結果に影響しているなどとは心理学者は考えた事も無かった。彼らは得てして人間の精神をコンピュータのようなものと考える。それが情報を処理する方法に注目するのだ。コンピュータのチップや回路に相当する人間の能力を調べることに熱中する余り、彼らは機械の中の、有り触れているがとても本質的な部分を無視して来た。パワーサプライだ。脳は、体の他の部分と同様、グルコースからエネルギーを得ている。全ての食物から作り出される単純な糖分だ。原因と結果を確定する為に、バウメイスター研究所の研究者達は、一連の実験での脳への燃料補給に、砂糖入りレモンードやダイエット甘味料入りレモネードなど、さまざまなものを使ってみた。砂糖入りレモネードはグルコースの急増をもたらす。その影響は研究所で即座に観測された。砂糖の入ってない色々なレモネードは同じ様な味だがグルコースの急増はもたらさない。砂糖は意志力の回復を繰り返しもたらすが、人口甘味料は何の影響も与えなかった。グルコースは、少なくとも自我消耗を少なくし、場合によっては完全に逆転させた。回復された意志力は被験者の自己制御力を改善し、その決断の質も改善した。被験者は選択をする時、無関係なバイアスに抵抗し、財政的な決断を求められた時も、即座に得られる報酬では無く、より良い長期的戦略を選択している。自我消耗効果は、犬に対する実験でさえ示されている。ケンタッキー州立大学のホーリー・ミラー(Holly Miller)とネイサン・デウォール(Nathan Dewall)が行った2つの実験だ。お座りの命令に10分間従った後、犬達は自己制御のテストに悪い結果を残した。例えば他の犬の縄張りに挑戦すると言うような危険な決断をしやすくなる傾向が見られた。しかしグルコースの供給は犬達の意志力を回復させている。

これ等一連の発見にも関わらず、脳研究者達はグルコースとの関連性について幾つかの留保を設けている。批判者は、脳の全体的エネルギー消費に関する研究は皆、被験者が何をしているかに頓着していないと指摘する。それは意志力に影響するエネルギー消耗の考え方と容易には整合しない。そういった批判者の1人にトッド・ヘザートン(Todd Heatherton)がいる。彼は当初バウメイスターと一緒に仕事をしていた研究者で、やがてダートマス大学へ移った。そこで彼はいわゆる社会神経科学(social neuroscience)のパイオニアとなった。脳のプロセスと社会的行動との関係を研究する学問だ。彼も自我消耗を信じている。しかし彼は、この神経プロセスが単なるグルコースのレベルによってどのようにして引き起こされるかを解明できていないと言う。そのプロセスを観察する為、およびそれがグルコースによって逆転できるかどうかを見る為、彼と同僚達は45人のダイエット中の女性を集め、彼女達が食物の写真に反応する時の脳画像を記録した。次に女性達はコメディービデオを見せられ、笑いを抑止するよう言われる。残酷な方法だが精神エネルギーを消耗させ、自我消耗をもたらす一般的方法だ。その後、彼女達は再び食物の写真を見せられる。この新たなラウンドでの脳スキャンは自我消耗の効果を明らかにした。側坐核(nucleus accumbens)、脳の報酬中枢が活発化していたのだ。それに対して、通常は衝動の抑制を助ける扁桃体(Amygdala)が比較的不活発になっている事も観測された。衝動の抑制が弱まっている間に、より強い訴えかけを食物はしていたのだ。ダイエット中の人間にとって良い組み合わせでは無い。しかし自我消耗状態の人間が急激にグルコースを取得したらどうなるだろうか?彼らの脳スキャンは何を明らかにするだろうか?

その実験結果は1月に発表された。世界最大の社会心理学者の団体、人格社会心理学会(Society for Personality and Social Psychology)で、ヘザートンの会長就任演説の間に発表された。サン・アントニオでの年次総会における会長演説の中でヘザートンは、グルコースの投与は、消耗が与えた脳に対する変更を完全に逆転できると報告した。彼自身認めているように、全く驚くべき発見だった。ヘザートンの実験結果は、グルコースの意志力に対する重要な役割を確証する幾つもの発見の内の1つと言うだけでは無い、グルコースが脳の全体的なエネルギー消費を大きく変える事無く、どのようにして効果を及ぼしているのかと言うパズルを解く助けになったのだ。自我消耗は明らかに脳の一部を活性化し一部を不活発にする。人間の脳はグルコースレベルが低い時も休む事無く働く。脳は一部の働きを弱めたら、別の部分の働きを強めるのだ。脳は素早い報酬に対してより強く反応するように成り、長期的展望に対しては少なくしか注意を払わなくなる。

グルコースに関するこの発見は、何故ダイエットが自己抑制のテストとして特別に困難なものであるのかを説明してくれる。同時に、他のものに対しては驚くほど強い意志力を持つ人間でも、体重を減らす事が何故それほど困難であるのかも説明してくれる。多くの人は高潔な意欲でもって1日を始める。朝食ではクロワッサンを我慢し昼食のデザートも我慢する。しかしその抵抗は意志力をさらに弱める。一日が深まり意志力が弱まるにつれ、それを補給する必要に迫られる。しかしそのエネルギーを補給するためには体にグルコースを与えなければならない。彼らは栄養補給の堂々巡りに捕らわれるのだ。

1. 食べない為には意志力が必要だ。
2. 意志力を得るには食べる必要がある。

体がグルコースを使い切ってしまうと、それを素早く補給する道を探し始め、砂糖が欲しくなるのだ。研究室で自己制御を必要とする仕事を終えた後、被験者は、塩辛く脂っこいポテトチップスのようなスナック類よりも甘いキャンディーをより強く求める傾向がある。単に自己制御が必要になると言う予測だけでも、人々の甘い物への欲求は強められる。同じ様な効果が、何故多くの女性が月経の直前にチョコレートとか甘い物を欲しがるのか説明してくれる。砂糖が一杯入ったスナックやドリンクは自己制御力を素早く改善してくれるのだ。(甘い物が、実験で使うのに便利である理由もそこにある。)しかしそれは一時的な解決でしか無い。問題は、タンパク質とかの、より栄養価の高い食物に比べて、一日を通してグルコースを安定的に供給するのに、砂糖は適していないと言う事にある。

イスラエルの保釈委員会の研究においても、グルコースの与える利点は間違えようが無い。午前中、通常10時30分より前に、保釈委員会は休憩を取る。審査員はサンドウィッチや果物を提供される。休憩前に審査された囚人は約20%しか保釈されるチャンスが無いが、休憩直後だと約65%のチャンスがある。そしてその確率は時間が経つに連れ下がってゆく。囚人達は実際昼食前に審査される事を望まない。その時間帯では保釈を得るチャンスは10%しか無いのだ。昼食後、そのチャンスは60%に跳ね上がる。しかしそれもつかの間だ。午後3時10分に審査され、保釈を拒絶された傷害罪のユダヤ系イスラエル人を覚えているだろうか?彼は昼食後6番目に審査されると言う不運に見舞われた。しかし他のユダヤ系イスラエル人、同じ罪で同じ刑期の囚人は昼食直後の午後1時27分に審査されると言う幸運を得た。彼は保釈が与えられた。彼にとってそれは裁判システムが正しく働いているという適切な例に思えたことだろう。しかしむしろ、審査員のグルコースレベルの方により大きく依存していたのかも知れない。

イスラエルの保釈委員会の改善法を考えるのは簡単かも知れない。例えば審査員のシフトを半日にするとか、むしろ午前中だけにするとか、休憩と食事の時間を頻繁にするとか。しかし社会の他の場所で決断疲労とどう取り組むかはそれほど明確では無い。例え私達全員が午前中だけ働く事が出来たとしても、意志力が一日を通して消耗してゆく事は避けられない。バウメイスターと彼の同僚が中央ドイツのヴュルツブルク(Würzburg)のフィールドで実験した時、その現象は確認された。心理学者は予めプログラムされたブラックベリーを200人以上の人に与え、1週間通常の生活を送ってもらった。ブラックベリーはバラバラの間隔で鳴り始め、その時点で被験者が何らかの欲求を感じているか、あるいは最近感じたかを報告するように成っていた。この骨の折れる研究は、その当時ヴュルツブルグ大学に居たウィルヘルム・ホフマン(Wilhelm Hofmann)が指導して行い、朝から晩まで10,000以上のレポートを収集した。

その結果、欲求を感じる事は普通の事であり特別な事では無いと判明した。半分の被験者は電話が鳴った時、何らかの欲求を感じていた。スナックをつまみたいとか、休みたいとか、上司に本当の気持ちを伝えたいとか。4分の1は過去30分の間に欲求を感じていたと報告した。これ等多くの欲求は、被験者の男女が抑えようとしていた欲求だ。人々が意志力を消費すればするほど、次にやって来る欲求に屈する傾向は高くなる。何らかの、「本当はやりたいがやるべきでは無い」と言う感情を呼び起こす新たな欲求に直面した時、もしその前の欲求を既に抑えた後だと、人はより欲求に屈しやすく成る。特に欲求をレポートした直後にまた欲求を感じた場合、容易に屈する。

実験結果が示唆する所では、人間は1日に3時間から4時間、欲求を抑えて過ごしている。別の言葉で言えば、もし貴方が4人から5人の人間に、一日の内で適当な時間に質問をしたとすると、その内少なくとも1人は欲求を抑える為に意志力を使っていると言う事だ。電話実験で最も一般的だった欲求は食べたいと言う欲求と寝たいと言う欲求だった。次に続くのが遊び、例えば仕事中メモを取る代わりに、パズルやゲームをして遊びたいと言う欲求だ。性欲は、この最も抑止されていた欲求リストの中で、その次だった。フェイス・ブックをチェックしたいとかの、他の人との関わりあいに関する欲求は性欲の少し下になった。衝動を抑える為に、人々は色々な戦術を使っていると報告している。最も人気のあった方法は、何か気を紛らすものを見つけたり、何か新しい事を始めると言うものだ。しかし時として、直接その欲求を抑えたり、単純に困難な道を突き進む場合もあった。それが成功したかどうかは様々だ。眠気を抑えるとか、性欲や消費欲を抑える時は成功する場合が多い。しかしテレビやウェブを見たいとか、仕事する代わりにリラックスしたいとか言う欲求に対しては、失敗する事が多いようだ。

ブラックベリーや社会心理学者が居なかった時代に、私達の祖先がどのくらい自己制御を行っていたか知る術は無い。しかし、先祖の多くは自我消耗になる事がもっと少なかったと思われる。決断の機会が少なかった時代には、決断疲労も少ないはずだ。今日、私達は決断疲労に圧倒されている。何故なら選択肢が余りにも多いからだ。貴方の体は時間通りに働こうとする。しかし心はどんな時でも逃げる事が出来る。典型的コンピュータ・ユーザーは1日に3ダース以上のウェブサイトを閲覧する。そして一連の決定によって疲労を蓄積する。それが仕事であろうと、TMZ(アメリカのゴシップサイト)をチェックするのであろうと、YouTueを見るのであろうとアマゾンで買い物するのであろうと変わらない。例え10分間のオンライン・ショッピングでも、残り1年分の予算を使い切ってしまうのに充分だ。

こういった衝動や決断の蓄積効果は、直感的には明らかで無い。実際のところ、決断がどのくらい疲れるものかを、心から実感できる人間はいない。大きな決断でも小さな決断でも、それは蓄積される。朝食に何を食べるか、バケーションに何処へ行くか、誰を雇うか、どのくらい支払うか、これらは全て意志力を消費する。そして意志力が低下していても、目に見える症状は無い。それはマラソン中に息を切らしたり壁にぶつかったりするのとは違う。自我消耗は感じられるものでは無く、あらゆるものをより深刻に体験する傾向として現れる。脳の抑制力が弱められると、欲求不満は通常より強く感じられる。食べたり飲んだり消費したり、何か馬鹿な事を言ったりしたいと言う欲求は普通より強く感じられるのだ(そしてアルコールは自己制御力をさらに弱める)。実験中の犬のように、自我消耗の人間は、不必要な縄張り争いを始め易く成る。決断をする時、彼らは非論理的な省略を行い、短期の収益や、コストを遅らせることを好むようになる。消耗した保釈審査員のように、より安全で容易な選択肢に傾きがちだ。例えその選択肢が誰かを傷つけたとしても。

「よい決断は個人の属性では無い。実際のところ、それは何時だって存在しているのだ。」バウメイスターは言う。「それは揺れ動く状態なのだ。」彼の研究によれば、自己制御に優れた人は、意志力を大切に使うように自分の生活を構成している人間だ。彼らは、終わりの無い会議を次々と予定したりしない。食べ放題のバイキングのような衝動は避けようとする。そして選択をするという精神的努力を消去する習慣を身に着けている。毎朝エクササイズをするかどうか決める代わりに、定期的なワークアウトの約束を友人と交わす。1日中意志力が強力であると当てにするのでは無く、緊急時や重要な決断をする時の為に意志力を貯めておくのだ。

「最も賢い人間といえども、休憩を取らずグルコースが低い状態では良い選択をする事は出来ない。」バウメイスターは主張する。それこそが、本当に賢い人間が午後4時に会社の改革を始めない理由だ。彼らはカクテルを交わす時間帯には大きな約束をしない。そしてもし1日の遅くに決断をしなければならない時、彼らは空腹の状態では決断しない。「最も良いデシジョンメーカーは」バウメイスターは言う「自分を信頼できる時間帯を知っている人間さ。」

~~ここまで~~

次回更新は11月25日ごろになると思います。
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英語の勉強の為に、ニュースサイトの記事を読んでいるうちに、面白さにつられて翻訳してみようと言う無謀な事を始めました。大変なので更新は一週間に一回位になると思います。どこまで続けられるか解かりませんが。

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